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第1章 初めての旅
買い物に行こう
しおりを挟む「で、何を買うんだ?」
手に持った串焼きの肉を齧りながらマグリーが聞く。
私はモグモグしていた肉を飲み込んでから、
「そーねぇ、色々考えたんだけど…」
新しい靴……は高そうだから、穴の空いてない靴下、メモを取るノートと鉛筆、爪や髪を切る小さなナイフ、おくれ毛を留めるヘアピンに、キレイなリボン、繕い物をする針と糸のセット……
買いたい物はたくさんあるが、今すぐ絶対に必要か?と言うと、そうとも言い切れない。
で、
「ブラシ? 髪の毛をとかすブラシ」
緑の羊園には2本しかブラシがない。しかも片方は壊れかけ。それを朝、みんなで順番に使っていた。だから自分用に持って来られなかったの。
「馬車にあるヤツ使っていいよ。てか使ってたじゃん?」
「でも、面接があるなら、いつでも髪を直せるように持ってた方がよくない? 小さなクシでもいい」
「なるほど。女は面倒だな」
「私、少しクセっ毛だから、すぐボサボサになっちゃうんだよ」
三つ編みの先の跳ねてる毛先を触りながら言う。
「マグリーは何か買うの?」
「俺は端切れ」
「端切れ? 布!?」
「うん、俺の小遣い稼ぎ。布屋で良さそうな端切れを捨て値で買って、他の村で縫い物の得意な婆さんに売るんだ。婆さんはその布で小袋を作って俺に売る。俺はその小袋をまた他所へ持って行って売る」
「すごい! ちゃんと商人してるじゃない!」
聞けば、ルーベンさんは息子たちに小遣いは渡さず、その代わり仕事の合間に「自分の商売」をするように勧めているのだという。分からないことは教えてくれたり、両手で抱えられる量の荷物なら馬車にタダで乗せてくれるらしい。
「布、いいな。私も亜麻布を少し欲しい」
「どんな?」
「小さなハンカチはあるんだけど、大きな布はみんなが使うから園に置いてきたの。でも顔を洗った時なんかに、さ。歌う小鳩亭では、お湯と一緒に出してくれたでしょ? やっぱり大きいのがあると楽だなーって」
「あった方がいいな、うん」
最初に行くのは布屋に決まった。
ついでに前から気になってた物も挙げてみる。
「あとね、値段によるけどカップ。金属の。マグリーたちが持ってるような。アレ、いいよね」
金属製の小ぶりなカップは必需品じゃないけど、みんなが使ってるのを見たら欲しくなったのだ。使い勝手も良さそうなんだよ。
「へへ、あれは錬金術師が開発した最新の金属で作られたアイテムなんだぜ」
マグリーが何故か得意げに言う。
「ええっ? そうなの!?」
「うん。鉄や銅と違って軽いし錆びないし、鈍い銀色だけど磨けば光る。金属だから火や衝撃にも強い。少しだけど魔法耐性もある。月の女神の名前を取ってアルテナっていう金属だ」
「じゃあ……もしかして、高い?」
「うん、少し…じゃなくてかなり高い」
そんな高級品だったなんて。あんな風に普段使いしてるから、量産品かと思ってた。
「アレはほんとイイよ。旅をするなら絶対必需品。キャンプの時にはスープを飲む食器にもなるし、火の側に置いておけば保温できるし」
「うう~、買えないのにドンドン欲しくなるぅ~」
「だろ? 俺が時々、顔を出してる魔技工房で作ってるんだ」
なるほど。だからこんなに熱が入った説明ができるのか。
最高級品になると、魔晶石と組み合わせて、温かいまま飲み物を保存できるカップやポットまであるらしい。もちろん王侯貴族クラスの持ち物だ。
どんなに欲しくても買えないならしょうがない。
「でも、素材が違っても似た物があるかもしれないし、道具屋を見て歩こうよ」
「うん!」
結局、まず布を買ってから、所持金と相談して残りを買う事にした。
で、マグリーの案内で商店街に移動したんだけど…。
商店街を歩くのは本当に大変だった。
まず、人が多くて歩きにくい。
道幅は広いのに、ちょっと油断するとすぐに他人にぶつかってしまう。
それよりも大変なのが両脇に並ぶ色とりどりの店。
もうね、どの店もとっても魅力的なのだ!
一軒一軒じっくりと見ていきたくなってしまい、我慢するのがものすごくツライ。
「この通りを渡ったら向こう側の……、お、おい、どうした? どっか痛いのか?」
「ふいぃ~~、何でもない」
我慢しすぎて涙が出てきてしまった。
それをマグリーに見つかってしまい、ものすごく心配された。
あんまり心配するから本当のことを言ったら、今度は大笑いされた。
ちょっと! 笑いすぎ!
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