18 / 77
第1章 初めての旅
買い物に行こう
しおりを挟む「で、何を買うんだ?」
手に持った串焼きの肉を齧りながらマグリーが聞く。
私はモグモグしていた肉を飲み込んでから、
「そーねぇ、色々考えたんだけど…」
新しい靴……は高そうだから、穴の空いてない靴下、メモを取るノートと鉛筆、爪や髪を切る小さなナイフ、おくれ毛を留めるヘアピンに、キレイなリボン、繕い物をする針と糸のセット……
買いたい物はたくさんあるが、今すぐ絶対に必要か?と言うと、そうとも言い切れない。
で、
「ブラシ? 髪の毛をとかすブラシ」
緑の羊園には2本しかブラシがない。しかも片方は壊れかけ。それを朝、みんなで順番に使っていた。だから自分用に持って来られなかったの。
「馬車にあるヤツ使っていいよ。てか使ってたじゃん?」
「でも、面接があるなら、いつでも髪を直せるように持ってた方がよくない? 小さなクシでもいい」
「なるほど。女は面倒だな」
「私、少しクセっ毛だから、すぐボサボサになっちゃうんだよ」
三つ編みの先の跳ねてる毛先を触りながら言う。
「マグリーは何か買うの?」
「俺は端切れ」
「端切れ? 布!?」
「うん、俺の小遣い稼ぎ。布屋で良さそうな端切れを捨て値で買って、他の村で縫い物の得意な婆さんに売るんだ。婆さんはその布で小袋を作って俺に売る。俺はその小袋をまた他所へ持って行って売る」
「すごい! ちゃんと商人してるじゃない!」
聞けば、ルーベンさんは息子たちに小遣いは渡さず、その代わり仕事の合間に「自分の商売」をするように勧めているのだという。分からないことは教えてくれたり、両手で抱えられる量の荷物なら馬車にタダで乗せてくれるらしい。
「布、いいな。私も亜麻布を少し欲しい」
「どんな?」
「小さなハンカチはあるんだけど、大きな布はみんなが使うから園に置いてきたの。でも顔を洗った時なんかに、さ。歌う小鳩亭では、お湯と一緒に出してくれたでしょ? やっぱり大きいのがあると楽だなーって」
「あった方がいいな、うん」
最初に行くのは布屋に決まった。
ついでに前から気になってた物も挙げてみる。
「あとね、値段によるけどカップ。金属の。マグリーたちが持ってるような。アレ、いいよね」
金属製の小ぶりなカップは必需品じゃないけど、みんなが使ってるのを見たら欲しくなったのだ。使い勝手も良さそうなんだよ。
「へへ、あれは錬金術師が開発した最新の金属で作られたアイテムなんだぜ」
マグリーが何故か得意げに言う。
「ええっ? そうなの!?」
「うん。鉄や銅と違って軽いし錆びないし、鈍い銀色だけど磨けば光る。金属だから火や衝撃にも強い。少しだけど魔法耐性もある。月の女神の名前を取ってアルテナっていう金属だ」
「じゃあ……もしかして、高い?」
「うん、少し…じゃなくてかなり高い」
そんな高級品だったなんて。あんな風に普段使いしてるから、量産品かと思ってた。
「アレはほんとイイよ。旅をするなら絶対必需品。キャンプの時にはスープを飲む食器にもなるし、火の側に置いておけば保温できるし」
「うう~、買えないのにドンドン欲しくなるぅ~」
「だろ? 俺が時々、顔を出してる魔技工房で作ってるんだ」
なるほど。だからこんなに熱が入った説明ができるのか。
最高級品になると、魔晶石と組み合わせて、温かいまま飲み物を保存できるカップやポットまであるらしい。もちろん王侯貴族クラスの持ち物だ。
どんなに欲しくても買えないならしょうがない。
「でも、素材が違っても似た物があるかもしれないし、道具屋を見て歩こうよ」
「うん!」
結局、まず布を買ってから、所持金と相談して残りを買う事にした。
で、マグリーの案内で商店街に移動したんだけど…。
商店街を歩くのは本当に大変だった。
まず、人が多くて歩きにくい。
道幅は広いのに、ちょっと油断するとすぐに他人にぶつかってしまう。
それよりも大変なのが両脇に並ぶ色とりどりの店。
もうね、どの店もとっても魅力的なのだ!
一軒一軒じっくりと見ていきたくなってしまい、我慢するのがものすごくツライ。
「この通りを渡ったら向こう側の……、お、おい、どうした? どっか痛いのか?」
「ふいぃ~~、何でもない」
我慢しすぎて涙が出てきてしまった。
それをマグリーに見つかってしまい、ものすごく心配された。
あんまり心配するから本当のことを言ったら、今度は大笑いされた。
ちょっと! 笑いすぎ!
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
悪役令嬢は死んで生き返ってついでに中身も入れ替えました
蒼黒せい
恋愛
侯爵令嬢ミリアはその性格の悪さと家の権威散らし、散財から学園内では大層嫌われていた。しかし、突如不治の病にかかった彼女は5年という長い年月苦しみ続け、そして治療の甲斐もなく亡くなってしまう。しかし、直後に彼女は息を吹き返す。病を克服して。
だが、その中身は全くの別人であった。かつて『日本人』として生きていた女性は、異世界という新たな世界で二度目の生を謳歌する… ※同名アカウントでなろう・カクヨムにも投稿しています
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる