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第2章 聖域の蔦苺
魔法結晶と保存箱
しおりを挟む「よし、いったん集まれ!」
デレファンの号令に、マグリーと私は薬草の入ったカゴを持って集まった。
デレファンは、肩から下げる幅広のベルトが付いた大きな箱を抱えている。
それぞれが採った薬草を布の袋に移す。赤いヒモがついた袋が私、マグリーが黄色、デレファンのが紺色だ。それを袋ごと箱にしまう。
「それって、保存箱?」
薬草をしまっている箱を見てルルーシェが聞く。
箱は二重構造になっていて、内部を衝撃や温度変化から守るようになっている。さらに内箱のフタには魔法結晶がセットされていて、魔法の品であることが見て取れる。
「そう。中に保存した物の鮮度を保つヤツ。冷気型だから永遠にとはいかないけど、かなり長持ちするよ」
「大きいわね。私のは、ほら」
ルルーシェがバックパックから取り出した小箱を見せる。片手で脇に抱えられる位の大きさで、革製だ。やはり二重構造になっていて、内蓋の上に魔法結晶がセットされている。
魔法結晶は、魔力を含んだ魔晶石を加工する際に出る削りクズを、魔力を使って練り直して整形した物だ。使い捨てだが、練りこまれている一種類の魔法を手軽に使用できる。
冷気を継続して放出する魔法結晶をセットした箱は保存箱と呼ばれ、主に食料品の保存に重宝されている。攻撃魔法を練りこんだ魔法結晶は、冒険者が戦闘に使用することが多い。王侯貴族や金持ちの家では明かりの魔法を練りこんだ魔法結晶を、火事の心配のない照明として使っているとも聞く。
「俺のは商人が仕入れに使うヤツさ。さすがにコレを持って歩いて旅はできない。馬車に載せるから運べる大きさだ。俺は本業が商人だから、魔獣退治や時間のかかるクエストを受けられない。親父の聖域護衛と素材採取でポイントを稼ぐしかないからね。ものすごく高かったけど思い切って買ったんだ。レアな薬草は鮮度で買取値段とポイントが変わるだろ?」
「なるほど! 私は自分で使う分を持つので精一杯」
ルルーシェは保存箱をうらやましそうに見ながら肩をすくめる。
「今日の分はマホテアまで運んでやろうか? まだ入る」
「遺跡調査が残ってるから、マホテアに戻るのは五日後くらいよ?」
「俺たちは明日、ホルスト郷に寄ってからまた大森林を抜けてマホテアに向かう。着くのは明後日だ。マホテアにあるルーベン商会の場所、知ってる? 預けとくから、遺跡調査が終わったら取りに行くといいよ。あそこの倉庫にも大型の保存箱があるから入れといてもらうさ。品質保持機能付きの本格的なヤツだから、ほとんど劣化しないハズだ」
「いいの!? じゃあ、お願いしようかな。生活費が稼げる」
「その代わり、って言うか、来月以降もこの場所で採取していいか?」
「どーぞどーぞ。商談成立ね?」
デレファンとルルーシェは固い握手を交わした。
さらに10分ほど採取を続けた後、ふと気づいたデレファンが聞く。
「そういえば、ここの遺跡調査はもういいのか?」
「あ、いっけない!」
私達の倍のスピードで薬草を摘んでいたルルーシェさんはペロリと舌を出す。どうやら忘れていたらしい。預ける分の薬草を取り分けてデレファンに渡し、保存箱に入れてもらう。
「つい熱中しちゃった…。じゃ、ちょっと見てくるわね。遅くなるようだったら先に戻ってていいわよ? 道、分かる?」
「細い山道だけど一本道だったからな。でももうしばらくは採取してるよ。この見事なミンテも少し摘んでいきたい。ここのは香りがいい」
「母さん、ミンテ茶が好きだしね。太陽花とブレンドしよう」
デレファンとマグリーは、マホテアに居る養母へのお土産も集め始めた。
実はルーベンさんにはもう一人息子がいる。デレファンの上に長男がいて、やはり養子だ。今は、体の弱い養母と一緒にマホテアにあるルーベン商会の支店を切り盛りしている。
「遺跡の調査って、あの扉から中に入るんですか?」
私は近くにある扉のついた建物を指差す。
「中には入らないのよ。ここの遺跡…聖堂は壊れてないから、扉には封印が施されているの。その封印に異常がないか確認して、それから丘を上がった所にある石碑の周辺もチェックするの。困ったことに時々、中に財宝が眠ってると勘違いして荒らそうとするのがいるのよね」
そう言いながら彫刻のある扉に近づいて触れ、魔力を流して確認する。
「うん、異常なし。次は石碑ね」
扉がついた建物の横に回ると、後ろへ行くほど低くなっていた。横から見るとなだらかな三角形になっている。その分、周囲の地面は盛り上がり、建物の後ろに小高い丘を形成していた。
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