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第2章 聖域の蔦苺
遺跡の見学
しおりを挟む「聖堂って、ずいぶん小さな建物なんですね」
「うふふ。聖堂は地下にあるのよ。扉を開けると、通路が下の方へと続いてるの」
と、ルルーシェは建物の側面を斜め下へと指で示した。
「この、土が盛り上がってる下が聖堂?」
「そう。ここは人工の丘ね。その上に石碑群があるの。見に来る? まだ実は付いてないだろうけど蔦苺がたくさんあるわよ」
「いいんですか? 私も登って」
「荒らさなければ大丈夫」
「よし、見に行こう!」
いつのまにかデレファン達も後ろに来ており、みんなで石碑群を見学する事になった。4人で一列になって丘に登る。
丘はそれほど大きいものではなく、すぐに登り切った。頂上にはたくさんの石碑が円形に配置されている。
「初めて見たな」
「いい眺め」
「………」
「…ルルーシェさん?」
「え? あ、うん」
ルルーシェさんは浮かない顔だ。
「何だか…おかしいわ。入口の扉には異常がなかったのに、周辺の魔力の流れがおかしいみたい。かすかに異変を感じる」
「え?」
「みんな、ここに居て。ちょっと見てくる」
ルルーシェは一人で石碑群に近づく。
「俺も行く。お前達はここで待ってろ」
デレファンが腰のベルトに挿した鞘から短剣を抜いて構えながら後を追う。
短剣といっても果物の皮を剥くような小さな物ではなく、鉈の様に幅広で厚みのあるガッシリとした刃物だ。ちょっとした木の枝くらいなら簡単に切り払えるだろう。
「大げさよ」
振り返ったルルーシェに、デレファンは小声で、
「でも、何かおかしいんだろ? 石碑はそれほど大きくないが、身をかがめれば後ろに隠れられる大きさだ」
「風の精霊に周囲を見てきてもらうわ」
「あ、ああ、そうか」
肩をすくめて短剣をしまうデレファン。
ルルーシェが口の中で何やらつぶやくと、風が吹きだした。
風は石碑群の周辺を巻くように通り過ぎ、しばらくして収まる。
「辺りに他の人は居ない。でも、やっぱり手伝ってもらうことになりそう。石碑を調べたいの」
「具体的には?」
「石碑を一つ一つ丁寧に見て、新しい傷がないか確認してちょうだい。特に文字や図形らしきものを発見したらすぐに教えて。私はこっちから回るわ」
「よし、じゃあ俺は反対側からだ」
デレファンとルルーシェさんが二手に分かれて石碑を調べ始めた。私とマグリーは丘の端の方でボンヤリ立っている。
「時間がかかりそうだな。立ってるのもなんだから座ろうぜ」
「うん」
平らな所まで移動し、地面に座った。
「何もないといいね。ここでは蔦苺が採れるって言ってたよ」
「ああ、あれさ」
マグリーが目の前の石碑を指差す。
「緑のツタが絡まってるだろ? あれに花が咲いて赤い実がなる。木苺に似た実だ。それよりは少し色が濃いかな」
「へー。高く売れるの?」
「うん。独特の風味があって美味くはないが毒消しだからな。人の命を助ける薬になる大事な素材だ。生のまま絞った液を飲んでも効果があるんだけど、一年中なってる実じゃないし、薬に加工した方が効果が高まって保存が効くんだ。来月か、再来月か、実がなってたら絶対に集めなきゃ」
マグリーは目を輝かせている。
「来月かぁ。私は仕事が決まって働いてるか、緑の羊園に帰ってるかのどっちかだ」
「蔦苺は、実も綺麗だけど花も可愛いよ」
「残念。見たかったなぁ」
見回すと、いくつもの石碑にツタが絡まっている。
どんな花が咲くのだろう?
やっぱり木苺に似た小さな白い花なんだろうか?
想像しながら見ていたら、蔦苺の葉が揺れた。
特徴のある形をした緑色の葉っぱの陰に、白い小さな花が見えるような気がする…
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