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第2章 聖域の蔦苺
揺れる蔦苺
しおりを挟む「ねえ、あの石碑に絡まってる蔦苺…、もしかして花咲いてない? ほら、あそこ」
ミリアナの指差す先を透かして見るマグリーは、目をすがめつつ、
「どれ? ……うん、花っぽいな。もう咲いてるのか。一つくらい、実もなってないかな?」
「石碑のチェックが終わって、近づいていいって言われたら探しに行こうよ」
「だな。お、あの石の陰に咲いてるの、クラン・クランじゃね? 赤い花粉に薬効があるんだ」
「早く終わらないかなー」
年長組が真剣に石碑をチェックをしている横で、年少組はすでに緊張感が薄れ、のんきに新しい場所での薬草採取を楽しみにワクワクしている。
デレファンが一度、渋い顔でこちらをチラリと見た。
が、何も言わずに調査を続けている。
ふと、何かが手に触れたように感じて横を見る。特徴のある葉がついた長いツルが地面から生えていた。それが風に揺れて触ったようだ。
「ね、コレって蔦苺?」
「どれ? ああ、ホントだ。こんな所まで生えてきてる。繁殖してんなー。向こうのヤツと地中で繋がってるんだぜ。根っこやツタで」
「そうなの?」
「そうやって増えるんだ。種を植えても生えるんだろうけど」
「私達を見に来たのかな? ふふ、かわいー」
そう言って葉っぱをフワフワとなでたその時、
〈 …タスケテ! 〉
「え?」
かすかな声が聞こえた。キョロキョロと声の主を探す。
「どうした?」
「今、何か…」
〈 …タスケテ!!! 〉
「あっ!」
地面が揺れた。
ズズズズ……
地鳴りと共に地面が崩れる。
あわてて立ち上がるが、足を滑らせて倒れた。振動でできた穴に足が沈む。
「イヤッ!」
「つかまれ! ミリアナ……うわっ!」
「きゃああッ」
手を伸ばしてマグリーの服や腕を必死につかんだが、地鳴りは続き、穴は大きくなってゆく。
「マグリー! ミリアナ!」
気づいたデレファンが走りよった時には、すでに丘の一角は崩落していた。2人は穴の中だ。
「そんな…聖堂が崩れた?」
「おーい、マグリー! 無事か? 返事をしろーっ! …うわっと」
穴の縁がパラパラとくずれた。
のぞき込んでいたデレファンがあわてて穴から離れる。
穴は垂直でなく、やや斜めに続いているようだ。中は真っ暗で奥は見えず、深さもわからない。
「兄さーん…」
マグリーの声だ。だいぶ下から聞こえる。
「なんか固い地面まで落ちたー」
今度はミリアナの声。
「ミリアナも一緒? よかった。聖堂の空間まで抜けたのかしら?」
「マグリー、怪我はないか? 動けるか?」
デレファンの問いかけに返事はない。
「おい、マグリー…」
あせって大声を出したその時、
「おええエエェ…」
えずくような声がした。
「くっせーッ!!!」
「はあ?」
「なんかココ、クサいよ。変なニオイがする…」
「臭い? 聖堂が?」
ルルーシェは不思議そうだ。
「おい、本当にココは墓とかじゃないんだろうな」
「ええ。古い時代の聖堂のハズよ。儀式魔法を行うような。有害なガスでも溜まってるのかしら?」
「おい!」
「…倉庫でネズミが死んでだ時みだいなニオイがする。真っ暗で見えだいけど」
鼻をつまんで叫んでいるようだ。
マグリーの言葉に合点がいったようにルルーシェはうなずいた。
「野生動物でも入り込んだのかもしれないわ。聖堂の床や天井は補強されてるけど、土壁がむき出しの場所もあるのよ。ネズミやモグラなら土を掘って地下の聖堂に侵入できるかも。もしも動物がそのままそこで死んだなら、不浄となって辺りの気を乱す原因になりうるわ」
「そうなのか?」
「聖域にある遺跡って、元々は辺りを浄化するために作られたものらしいの。考古学や魔術の研究者なら、もっと詳しく知ってるでしょうけど…」
ルルーシェは眉を寄せる。
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