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第2章 聖域の蔦苺
闇を切り裂く光
しおりを挟む「今のうちに…!」
「うん!」
開け放たれた扉の向こうに暗い通路が見える。
あの先は外へと続いているはず。デレファンとルルーシェさんがいる、明るい場所へ…!
ブチブチブチッ
扉に向かって走り出すと、後ろからツタを引きちぎる音が聞こえた。
続いて背中に激しい衝撃。
…ドガッ!
体が宙を舞い、床に打ち付けられる。さらにバウンドして壁際まで転がった。
全身が痛い。胸も強く打ったらしく痛みで息ができない。
「う…うう…」
短く息を吸いながら目を開けると、土蟲がのたうち回っているのが見えた。
「ミリアナ!」
どこからかマグリーの声と足音。よかった。マグリーは無事みたい。
「マ……リ…、うっ、ゲホッ…」
返事をしようとしたけど、うまく声が出ない。
土蟲は体を思い切り曲げてくねらせ、蔦苺の拘束から逃れようとツタを引きちぎっている。蔦苺は思ったよりも繁殖していたようだ。長いツタが全身に巻きついている。口の中にツタを引き込んだまま暴れたので、余計に絡まったのだろう。その暴れる胴体に弾き飛ばされたらしい。
土蟲はゴロゴロと転がり、ルルーシェさんが落としてくれた光の球を踏み潰した。
「あっ!」
マグリーが叫んだ。
光が消え、部屋の中が暗くなる。その直後、
「伏せろ!」
マグリーとは別の声が聞こえた。
空中を光が走る。
飛んできた光は奥の壁に刺さった。
矢だ。矢羽には光の球が付いている。
新しい光に照らされ、土蟲の姿が浮かび上がる。頭部の丸い突起に、次の矢が突き刺さるのが見えた。
ギュイイイィィ…ッ
あの引ったくりを追い払ったのと同じ矢。…ルルーシェさんだ!
「立つな! 壁際に行け!」
叫びながらデレファンが部屋に飛び込んできた。短剣を構え、土蟲に飛びかかる。
短剣が土蟲の脇腹を裂き、体液が吹き出す。
グギィッ!
振り向いた時にはもう、そこにデレファンは居なかった。
ウギィィッ!!
反対側の脇腹からも吹き出す体液。
一撃一撃はそれほどダメージがなさそうだが、手数が多く、攻撃しては位置を変えるデレファン。
土蟲はそんな敵にイラついているようだ。鎌首を持たげて脅している。
トスッ!
頭を上げて丸見えになったノド元にもう一本、矢が突き立つ。
射手は正面の通路の奥。
突き当たりにある扉が開けられ、外光が差し込んでいる。
弓を構えたシルエットが矢筒から新しい矢を抜き出してつがえる。
「お前の相手はこっちだ!」
大声で威嚇するデレファンが魔獣の腹を刺す。
刺した後はすぐに飛び退く。ヒット&ランでダメージを重ねている。
そちらへ向き直った土蟲が、息を吸い込むように丸くノドを開けた。
ベチャッ!
ほんの数秒前までデレファンが居た場所に濡れた舌のようなものをたたきつける。
粘液で獲物を捕らえるはずが床に吸い付き、一瞬、動きが止まった。
「おらぁ!!」
掛け声と共に土蟲の背中を駆け上がるデレファン。何重にも巻きついている蔦苺を足掛かりに一気に登る。途中で足を滑らせたのでヒヤリとしたが、蔦苺をつかんで姿勢を取り戻した。
「とどめぇッ!」
振り上げた短剣を脳天に突き刺す。
土蟲には頭蓋骨というものはないらしい。
刃がズブリと根元まで埋まった。短剣とはいえ、刃渡りはかなりある。
そのまま体重をかけて1mほど引き下ろす。
グフウゥ……
空気が抜けるようなかすかな音を出しながら痙攣し、体液を撒き散らしながら土蟲は倒れた。
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