世界樹の管理人

浅間遊歩

文字の大きさ
34 / 77
第2章 聖域の蔦苺

闇を切り裂く光

しおりを挟む

「今のうちに…!」
「うん!」

 開け放たれた扉の向こうに暗い通路が見える。
 あの先は外へと続いているはず。デレファンとルルーシェさんがいる、明るい場所へ…!

 ブチブチブチッ

 扉に向かって走り出すと、後ろからツタを引きちぎる音が聞こえた。
 続いて背中に激しい衝撃。

 …ドガッ!

 体が宙を舞い、床に打ち付けられる。さらにバウンドして壁際まで転がった。
 全身が痛い。胸も強く打ったらしく痛みで息ができない。

「う…うう…」

 短く息を吸いながら目を開けると、土蟲ワームがのたうち回っているのが見えた。

「ミリアナ!」

 どこからかマグリーの声と足音。よかった。マグリーは無事みたい。

「マ……リ…、うっ、ゲホッ…」

 返事をしようとしたけど、うまく声が出ない。

 土蟲ワームは体を思い切り曲げてくねらせ、蔦苺ツタイチゴの拘束から逃れようとツタを引きちぎっている。蔦苺ツタイチゴは思ったよりも繁殖していたようだ。長いツタが全身に巻きついている。口の中にツタを引き込んだまま暴れたので、余計に絡まったのだろう。その暴れる胴体に弾き飛ばされたらしい。

 土蟲ワームはゴロゴロと転がり、ルルーシェさんが落としてくれた光の球を踏み潰した。

「あっ!」

 マグリーが叫んだ。
 光が消え、部屋の中が暗くなる。その直後、

「伏せろ!」

 マグリーとは別の声が聞こえた。

 空中を光が走る。
 飛んできた光は奥の壁に刺さった。
 矢だ。矢羽には光の球が付いている。

 新しい光に照らされ、土蟲ワームの姿が浮かび上がる。頭部の丸い突起に、次の矢が突き刺さるのが見えた。

 ギュイイイィィ…ッ

 あの引ったくりを追い払ったのと同じ矢。…ルルーシェさんだ!

「立つな! 壁際に行け!」

 叫びながらデレファンが部屋に飛び込んできた。短剣を構え、土蟲ワームに飛びかかる。
 短剣が土蟲ワームの脇腹を裂き、体液が吹き出す。

 グギィッ!

 振り向いた時にはもう、そこにデレファンは居なかった。

 ウギィィッ!!

 反対側の脇腹からも吹き出す体液。
 一撃一撃はそれほどダメージがなさそうだが、手数が多く、攻撃しては位置を変えるデレファン。
 土蟲ワームはそんな敵にイラついているようだ。鎌首を持たげて脅している。

 トスッ!

 頭を上げて丸見えになったノド元にもう一本、矢が突き立つ。
 射手は正面の通路の奥。
 突き当たりにある扉が開けられ、外光が差し込んでいる。
 弓を構えたシルエットが矢筒から新しい矢を抜き出してつがえる。

「お前の相手はこっちだ!」

 大声で威嚇いかくするデレファンが魔獣の腹を刺す。
 刺した後はすぐに飛び退く。ヒット&ランでダメージを重ねている。
 そちらへ向き直った土蟲ワームが、息を吸い込むように丸くノドを開けた。

 ベチャッ!

 ほんの数秒前までデレファンが居た場所に濡れた舌のようなものをたたきつける。
 粘液で獲物を捕らえるはずが床に吸い付き、一瞬、動きが止まった。

「おらぁ!!」

 掛け声と共に土蟲ワームの背中を駆け上がるデレファン。何重にも巻きついている蔦苺ツタイチゴを足掛かりに一気に登る。途中で足を滑らせたのでヒヤリとしたが、蔦苺ツタイチゴをつかんで姿勢を取り戻した。

「とどめぇッ!」

 振り上げた短剣を脳天に突き刺す。
 土蟲ワームには頭蓋骨というものはないらしい。
 刃がズブリと根元まで埋まった。短剣とはいえ、刃渡りはかなりある。
 そのまま体重をかけて1mほど引き下ろす。

 グフウゥ……

 空気が抜けるようなかすかな音を出しながら痙攣し、体液を撒き散らしながら土蟲ワームは倒れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

金の羊亭へようこそ! 〝元〟聖女様の宿屋経営物語

紗々置 遼嘉
ファンタジー
アルシャインは真面目な聖女だった。 しかし、神聖力が枯渇して〝偽聖女〟と罵られて国を追い出された。 郊外に館を貰ったアルシャインは、護衛騎士を付けられた。  そして、そこが酒場兼宿屋だと分かると、復活させようと決意した。 そこには戦争孤児もいて、アルシャインはその子達を養うと決める。 アルシャインの食事処兼、宿屋経営の夢がどんどん形になっていく。 そして、孤児達の成長と日常、たまに恋愛がある物語である。

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん
ファンタジー
 戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。  3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。  家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。  そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。  こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。  身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。

処理中です...