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第3章 まもり草の黒い花
黄金楓の家の大族長様
しおりを挟む馬車の車輪の前後に石を置いて固定してからフレイムホースを外し、馬丁に預ける。
採れたての美味しい人参がもらえるとあって、尻尾が機嫌良く揺れている。
「まずは大族長に挨拶だ」
ルーベンさんにうながされ、馬車を降りて建物に向かう。
「荷物はそのままでいいの?」
と、小声で聞くと、
「大族長の客人の持ち物を盗むような者はここには居ない」
だそうだ。
建物の正面に回ると巨大な扉が目に入った。両開きの木製のドアは、表面に綺麗な幾何学模様が描かれている。
近づくと、それはペンキやニスで描かれたモノではなかった。
白や黄色や濃い茶色、それにピンクや薄緑まで、全て天然の木材の色。種類の違う木材を丁寧に加工し、組み合わせて模様にしているのだ。
よく見ようとさらに近づくと、扉が自然に開く。
「あっ!」
魔法の扉かと思ってビックリしたら、扉の後ろに開閉係のノームが居た。
「遠来の友よ、どうぞお通りください」
「あ、ありがとうございます」
振り向くとマグリーとデレファンがニヤニヤしている。
「もう! 教えてくれればいいのに」
「何事も体験、体験。ははは…」
「しっ、静かに! ここから先は大声禁止だぞ」
「………~~~~っ!!!」
ルーベンさんを先頭に一列になって奥へと進む。
建物の中は3階建てのようだったが、中央は吹き抜けになっていた。周囲の壁に沿って小部屋やカウンターが並んでいる。
「大族長の特別室」は、厳密に言えば部屋ではなかった。フロアの中央に赤い布で作られた幕屋があり、そこに置かれた椅子に、貫禄のあるノームが座っている。
「黄金楓の家のグラウフラウ様、豊かなるノームの里の大族長様、再びお会いできて光栄に存じます…」
独特の言い回しでルーベンさんが挨拶を始める。使っているのは人間族の共通語だけど、これがノーム式の挨拶なのかな?
大族長からも、もったいぶった格調高い言い回しでお返事を頂き、私達はノームの里に滞在を許可される。
赤い幕が閉じられ、会見が終了する。と、
「どっこらしょ、っと。やあ、ルーベン。よく来たな」
幕屋の後ろから大族長が体を揺すりながら出てきて、もう一度、軽い調子で挨拶をした。どうもさっきのは形式的なものだったらしい。
「子供が増えたな。うちのララウクラウがうらやましくなったか? はっは! 娘は可愛いぞ~」
娘自慢をする大族長は、どこからどう見ても普通の親馬鹿なお父さんだ。
「いえいえ、こちらのミリアナは…、知人から預かってマホテアまで送って行く途中なのです」
「そうであったか。…んん?」
ルーベンさんに背中を押され、前へ進み出た私を見て大族長は目をパチクリさせた。
「いやはや、これは…」
何だろう? さっきの門番と同じく、何か言いたげな表情になる。
だが、すぐに思い直したように屈託のない笑顔に戻って言葉を続けた。
「…ララウクラウと同じ年頃であるな。そうさの、里の案内には娘を付けよう。これ、ララウクラウ!」
「はい。お父様」
ヒモで赤い幕を開け閉めしていた少女が早足でやって来た。確かに見た目はミリアナと同じ位の年齢に見える。麦わら色の髪に青空のような水色の目。どことなく大族長に似ている。
「今月はお前が皆を案内してやりなさい。確か神殿で人間族の共通語を学んでおったろ?」
「はい。お父様」
大族長は、次に私達の方を向き、
「うむ。ミリアナとやら。良ければ女子同士、娘の話し相手になってくれぬか? コレは外の話が好きでの」
「はい。喜んで!」
「よろしくお願いします、皆様。ララウと呼んでくださって構いません」
ララウクラウはうれしそうに一歩前に出て、上手な共通語で挨拶をした。
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