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第3章 まもり草の黒い花
それぞれの用件
しおりを挟む「これからのご予定は? まず薬草をお買い求めになりますか?」
大族長が執務室に戻って行くとすぐに、ララウが聞いた。案内役に抜擢されたので張り切っているようだ。
「そうですねぇ。いつも通りに、午前中は薬草等の購入と商店の準備、店は午後から開きます。その後は各工房を回って細工物などの買い付けを」
「では、こちらのカウンターで申請を…」
ララウは近くにあるカウンターへと皆を誘導する。
ホルスト魔法薬草商会。
ホルスト郷で手に入る薬草や魔法的素材の販売を一括で管理している。
商会の事務所も取引カウンターも六角館の中にあった。里を訪れた訪問者は大族長に挨拶をした後、すぐに薬草類を購入できるというわけ。
確かにこれは便利よね。わざわざ大森林を抜けてまでホルスト郷を訪れるような人の目的はほとんど、ここの名産品である薬草類か細工物だと聞いたし。
商会のカウンターの背後には大きな黒板が掲げてある。そこには定番の薬草類のリストがあり、本日の値段が大きく書かれている。購入者はここで欲しい商品の申請を行い、係員が保存庫から出してきて決済するというシステムみたい。
その隣には、細工物を売る店もあった。
店の奥には陳列棚があって、木工細工や魔法の道具が置いてある。ため息が出るほど繊細な細工の装飾品や置物、各種魔法を練りこんである魔法結晶、大きさの違う保存箱や便利な道具など、細工師と錬金術師の作った物を売る店のようだ。
さらにその隣には、またカウンターがあった。頑丈そうなカウンターには係員らしいノームが待機している。
ノームにしては背が高い若い男性で、チラチラとこちらを見ている。
「あれ? あのマーク……」
男性がいるカウンターの前面には、翼の形の看板が出ていた。見たことがあるシンボルマークだ。
あれは確か……
「ああ、アレは冒険者ギルドのマークだよ」
私の独り言に気づいたデレファンが答える。
そうだ、デレファンのギルド員身分証の金属片に刻印されてたやつだ。
「父さん、俺、もう抜けて大丈夫だよな? 冒険者ギルドの方に行ってくる」
「そうだな。じゃ、昼にいつもの食堂で」
「わかった」
そう言ってデレファンが冒険者ギルドの方へ歩き出すと、
「あ、あっ、あ~~~~っ!!!」
冒険者ギルドの受付の男性が、素っ頓狂な声を出してデレファンを指差した。
カウンターから走り出てデレファンの前までやって来る。
「あのっ、冒険者……冒険者の方ですよね? マホテアの……」
「うん。マホテア所属のデレファン・ルーベン」
デレファンは胸元から金属製の小さな認識票を取り出して男性に見せる。
「お待ちしておりましたぁっっっ!!」
男性は泣き出さんばかりに喜んでデレファンの手をつかみ、握りしめた。
「わたくし、ホルストの冒険者ギルド職員、土手柳の家のトリムクリムと申します。何でも…トラブルがあったとか?」
「え? …あ! ああ、そうなんだよ!」
デレファンはハッとして男に向き合う。
確かに、聖域内の遺跡に魔獣である土蟲が出たなんて、トラブル以外の何物でもない。
ルルーシェさんの伝言は、ちゃんと聞いてもらえていたみたい。
「でも、ここで詳しい話はちょっと…」
周囲を見回すデレファン。建物の中には何人ものノームがいる。聖域に囲まれた隠れ里でひっそりと暮らしているノーム達は、目と鼻の先に魔獣が出たと聞いたらどうするだろう?
下手をしたらパニックが起きるかもしれない。
職員の男は、
「もちろんです! さ、さ、こちらに…奥にギルド専用の相談室がありますのでっ!」
と、強引にデレファンの腕を引っ張って行ってしまった。
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