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第3章 まもり草の黒い花
祈りと神聖魔法
しおりを挟む「この…っ、コイツのせいでっ!!」
震える手で黒い花を指差し、声を荒げるノーム。
「あの、コラドモラドさん?」
「うおおおお……、うわあああぁぁっ……」
ミリアナはどうして良いかわからず、泣き崩れる男の肩にそっと手を置く。
「どうしたっ!?」
「大丈夫ですか?」
マグリーとルーベンさん、それにララウも駆けつけて来る。
「どうされまし……あっ!」
3人とも私達の前にある異変に気づいたようだ。
「黒い…リアン草?」
ララウも驚いている。
「何だこれ?」
マグリーが黒い花に手を伸ばすと、
「触っちゃなんね!!」
コラドモラドがすごい剣幕でそれを止めた。
「コイツですだ、お嬢さん。この黒い花が、おらの畑と息子を……っ、ううっ…」
「じゃあ、リアン草が全滅した病気って…」
「この、黒い花が次々と咲いて…そんで腐ってくだ。おらが息子は黒い花を抜き続けて…しまいには起き上がれなくなっちまっただ。熱が出て苦しそうにして、時々、泡を吹くだ。お医者様もサジを投げたでよ」
「そんな…」
ララウはリアン草が全滅した詳細までは知らなかったらしい。
「前の畑は丸ごと焼いただ。病気が広がったらもう、そうするしかね。新しく別の場所を耕して、種をまいて、育成魔法まで使って…1からやり直したっちゅうに……ああ、この畑ももうお終いだで」
鼻をグスリと鳴らしながらコラドモラドは立ち上がり、ふと気づいてマグリーに声をかける。
「ははあ、坊ちゃん。花に触りなすったな? おら、忠告が遅れて悪かったで」
そう言ってマグリーの手を取った。マグリーの手のひらは、黒っぽく爛れていた。
「ほらこの色。あの花びらの色が移ったで。洗っても落ちねえかもしんねえよ。息子もこんな手をしてるで」
「いや、違うんだ、コラドモラドさん。これ…、昨日の怪我なんだ」
「え? あの時の?」
土蟲から隠れて逃げ込んだ小部屋で黒い短剣を引き抜いた時、マグリーは手を傷めていた。刃で切ったか、トゲでも刺したのかと思ってたけど…
「ひどいわね。痛そう」
「…少しな。でもすぐに治るよ」
「ちょっと見せて」
マグリーの手のひらを見ていると、ララウが真剣な顔でのぞき込んだ。
「…大変! 瘴創じゃない!」
「しょうそう?」
「濃い瘴気に触れた時にできる傷。火傷みたいなものね。これは……軽いものなら放っておいても治るけど、ここまで重症だと治らないのよ。放置したらかえって悪化するわ」
「本当?」
「ええ。私、今、神殿で神聖魔法を習ってるの。まだ呪いを解くことはできないけど、瘴創なら直せると思う」
「是非、お願いできますか!?」
勢いよく頼み込んだのはルーベンさんだ。
「もちろん」
ララウはまず、自分の胸の上で手のひらを重ねて目をつむり、祈り始めた。
「豊穣と慈愛の地母神・ファーティエン様、あなたの子羊を癒す力をお貸しください」
あ、今、ふわっと光った。気のせいかな…?
「さ、手を出して」
「こう?」
マグリーはララウに言われるがまま、手のひらを上に向けて腕をのばす。
ララウは自分の手のひらをマグリーの手の爛れに向けてかざした。
「浄化」
ララウの手から光があふれ、マグリーの手のひらに触れると、黒っぽくくすんだ色味が抜けた。
「治癒」
ララウが続けて呪文を唱える。するとマグリーの手のひらの傷はすっかりなくなった。
「すげえ! もう全然、痛くない!」
マグリーは手をヒラヒラと動かして、みんなに見せる。
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