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第3章 まもり草の黒い花
苦しみの原因
しおりを挟むそれを見たコラドモラドは、その場で崩れ落ちる様にひざまずいた。
「お、お嬢さん! ララウクラウ様! どうか、おらの息子も助けてくだせえ!」
土で汚れるのも構わずに土下座してララウを拝む。
「息子ぁ、明日をも知れぬ容体で…、今にも息が止まるんでないかと家中が苦しんどります。どうか……どうかっ…」
「もちろんよ、コラドモラド。顔を上げて。私にできることなら何でも」
〈 …ワタシ モ… 〉
〈 …ワタシ モ タスケテ… 〉
「でも、実際に息子さんを診てみないと、瘴創なのかは分からないわ」
「いんや、間違いねえ。さっきの症状は丸っきり同じよ。医者に診てもらった時ぁ、ショウキだのショウソウだのって話は出てこなんだが」
「医者が持っている判定機では、呪い状態は判別できても瘴創までは分からないの。反応がハッキリしないのよ。もっと精巧な魔道具か、聖職者が診るのでないと」
〈 …クルシイ… 〉
〈 …タスケテ… 〉
〈 …ワタシ モ……! 〉
また、声が聞こえた。
ミリアナは辺りを見回す。
ふと、黒い花をつけたリアン草が目に入った。
「…あなたなの?」
返事はない。ただ、かすかな風に花びらを揺らすだけ。
「医者では専門外ということですかね」
「ええ、そうね」
「毒や病気を疑ってたから分からなかったのか…」
「畑のまん真ん中で、そったら小難しい中毒になるとは思わんで」
コラドモラドは息子の治療法への期待と不安で麦わら帽子を潰れるほど握りしめている。
「あ、あの…!」
私は思い切って大声を出した。
「この黒い花にも、浄化魔法をかけてあげてもらえませんか?」
「ええ!?」
ララウが驚いている。
「花に?」
「なして? その花ぁ、息子のカタキよ」
コラドモラドさんは目を三角にして怒っている。
「だって……苦しそうなんだもん。もしかしたらこの花も、病気じゃなくて瘴気のせいで色が変わっちゃったのかもしれないでしょ?」
「そんなこたぁ………う~む……」
ない、と言い切れないコラドモラドは困った顔で黙り込む。
「わかったわ。試してみましょう」
ララウは注意深く黒い花に近づき、手をかざして唱えた。
「浄化」
ララウの手から光があふれ、花びらに触れる。
チリチリと、何かが燃える様なかすかな音。
光が消えると、そこには、真っ白に輝くリアン草の花があった…
「これは…」
「ね? リアン草も治ったでしょ?」
ララウはビックリしてたけど、私には不思議じゃなかった。
だってリアン草も苦しがってたから。
「原因は…瘴気なのか?」
「もしかしたら…地脈の奥の方が瘴気に侵されてるのかも。それをリアン草が吸い上げて…あんな色に?」
「つまり原因不明の病気じゃなくて、リアン草に蓄えられた濃い瘴気が原因の瘴創かもしれない…と?」
マグリー、ララウ、ルーベンの3人が一斉にコラドモラドを見る。
「息子は……治るだか?」
コラドモラドが震える声で聞く。
「だいぶ症状が悪化している様ですから、私の能力では足りないかも知れません。神殿へ行って、神官様に浄化をお願いしましょう」
「神殿もさっきの場所…六角館にあるんだよね?」
「ホルスト魔法薬草商会の向かい側よ」
「薬草は後で構いません。急ぎましょう!」
ルーベンさんは私達を急かせて荷馬車に乗り込んだ。畑まで乗ってきた荷馬車だ。
「父さん、俺が運転するよ」
「いえ、しっかりとつかまっていてください」
場所を代わる時間も惜しいと、そのまま発車する。
ガタガタと音を立てて、荷馬車が農道をひた走る…
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