世界樹の管理人

浅間遊歩

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第4章 新しい管理人

自由な時間

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 六角館前でのルーベン商店は、時間通りに開店した。
 買い物にやって来たノームたちで行列ができている。

「いらっしゃいませ。新商品はこちらです。ありがとうございます。海の塩ですか? 大袋で? ありがとうございます。すいません、黄色は売り切れで…、あ、はい、青ならあります」

 商品は次々と売れてゆく。目が回る忙しさだ。
 やがてほとんどの商品が売れ、ルーベン商店は無事閉店した。

「お疲れ様」

 後片付けをしているとララウがやってきた。手にはグラスを乗せたお盆を持っている。

「レモンと蜂蜜を入れた冷たいミンテ茶よ」
「うわぁ、おいしそう!」
「すみませんね」
「おう、ありがとう」
「いただきまーす!」

 お客さん相手にしゃべりっぱなしだったから、とっても助かる。グラスを受け取ってベンチに腰掛ける。

「ゴクゴク……おいしーい!」

 さすが聖域に近い場所のミンテは香りがいい。
 というか、ノームの隠れ里そのものが聖域みたいなものだけど。
 自分の分のミンテ茶も運んできたララウは、グラスを片手に私の隣に腰掛けた。

「ララウは…神殿の仕事の方はもういいの?」
「うん、私は見習いだから。さっきまでは黒い花による瘴創しょうそうと、その浄化について説明していたの。黒い花を触って具合が悪くなった人は他にもいるんだって。これから神殿の人たちが手分けして治療にあたるそうよ」
「コラドモラドさんの息子も助かるのね?」
「きっと治るわ」
「良かった」

 商店の片付けが終わった後は、思いがけず自由時間になった。

「私はホルスト郷にある工房を回って細工物の買い付けをしてきます」

 と、ルーベンさん。マグリーは、

「俺は父さんとは別の工房を見学させてもらう予定」

 と言う。
 デレファンを見ると、

「ここは安全だから、のんびりさせてもらうよ」
「さっき、ドラゴンの寝床亭の主人マスターがキクロ島の珍しい酒を仕入れていったよ」
「よし、一杯目はそれにするかな」

 マグリーの情報にニヤリと笑う。どうやらお酒を飲みに行くようだ。

「私…」

 みんなに注目されて言葉に詰まる。

「私、何にも考えてなかったわ。この後も、何かお手伝いがあるんだと思ってた」

 ミリアナは、急に何の制約もなくなった事に少し戸惑った。孤児院では、いつも何かしら「やるべき事」があったから。

「里では自由にしていいわ、ミリアナ。夕御飯までに帰って来れば」
「自由……」

 ララウは軽く言うけど、どうしよう…思いつかない。
 困っている私を見てマグリーが、

「ミリアナ、何かやりたい事ある?」
「う~ん…」
「じゃあ、ララウ。何かおススメは?」
「そうねぇ…」

 ララウは少し考えてから、パッと明るい顔になり、

「飾り小庭はどう? つい先週、コンテストが終わったばかりなの」
「飾り小庭?」
「両手を広げた幅の敷地を植物や小物で飾るのよ。みんな工夫を凝らして…とても綺麗よ」
「もしかして、大通りの両側にあったアレ?」
「そう。ここから左右に伸びる通りにもあるから、見て歩くといいわ」
「素敵! 絶対そうする!」

 ホルスト郷に入ってきた時に見た、花や草木を小さくまとめた可愛らしい花壇を思い出して、ミリアナはとてもワクワクした。


「あら、今度は青がテーマなのね」

 青い小花をベースに、背丈のある青い花を配し、白い斑入ふいりの葉をアクセントにした飾り小庭には、青っぽい石まで添えてあった。
 無造作に置かれた空の植木鉢も片付け忘れではなく、雰囲気を出すためにわざと残してあるのだろう。青い縁取り模様のある植木鉢だ。

 ミリアナは通り沿いに並んでいる飾り小庭を、ひとつひとつ、ゆっくりと楽しんでいた。
 石垣で段差をつけた土台にこれでもか!と大輪の花を寄せ植えした花壇もあれば、花は最小限にして変わった色と形の葉っぱを生かした花壇もある。
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