世界樹の管理人

浅間遊歩

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第4章 新しい管理人

飾り小庭

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 ホルスト郷では年に4回、季節ごとに飾り小庭のコンテストが行われるのだそうだ。
 どれもみな素晴らしく、見ていて飽きない。数メートルごとにある飾り小庭の前で立ち止まっては色々な角度から眺めて楽しむ。

 と、突然、後ろから声をかけられた。

「おや、久しぶりだな、お嬢さん。今日は一人かい?」
「えっ!?」

 振り向くと、小柄なお爺さんが一人立っていた。いかにもノームという風貌だ。ややタレ目の温和な顔に、耳の先も少したれている。

(お嬢さん? ララウと間違えたのかな?)

 でもミリアナを正面から見てもノームは動じない。どうやら挨拶の返事を待っているようだ。

「あ、あの…?」

 どう対応しようか思案していると、ノームは急に何かを思い出したらしく、

「……あ! ごめんごめん。人違いだ。歳を取ると物忘れが多くなってイカン」

 そう言いながら、少し寂しそうに去って行った。

(人違い、か…。よく似てたのね、きっと)

 しばらく会っていない友達を久しぶりに見かけたら、自分もあんな風に声をかけるに違いない。
 そういえば、門番も大族長様も、私を見て少し驚いてたっけ。

 気がつくと、次の飾り小庭は少し離れた場所にあった。間に脇道があったからだ。道は小高い丘に続いており、その向こうからは水音がする。近くに川が流れているのだろう。

(少しのどがかわいちゃった。川の水を一口もらおう)

 ミリアナはその道を曲がり、水音がする方へと向かった。
 
 しばらく歩いて低い丘を越えると急に視界が開け、手入れの行き届いた美しい庭が現れた。

「うわぁ……」

 色鮮やかな花々が満開だ。
 よほど愛情を込めて世話をしているのだろう。一重ひとえ八重やえ二色混じりバイカラー、何種類もの薔薇の花が咲きこぼれている。
 周りの草木も形良く刈り込まれ、みずみずしい若葉が風に揺れている。

「素敵! 何て綺麗なの!?」

 ミリアナは思わず声を上げた。

「ほめていただいてうれしいわ」
「えっ!?」

 突然の声に驚き、振り向く。

 すぐ側に生えていた薔薇の茂みの向こうには庭用のテーブルと椅子が置いてあり、ノームのお婆さんが座っていた。しわしわの、小さくて可愛いお婆さん。
 テーブルの上にはお茶のセット。
 そして、その後ろにある「丘」には、玄関の扉と窓が付いていたのだった!

「あの…ごめんなさい、私……勝手によその御宅の庭に入っちゃったみたい……」

 というより人の家を踏んで越えてきちゃった!?
 恐縮する私にお婆さんは優しい声で、

「あらあら。いいのよ。庭はお客様を迎える場所ですもの。どうぞ、ごゆっくり」

 そう言うと、慣れた手つきでミリアナのためにお茶の準備を始めた。

「さあ、こちらに来てお茶を召し上がれ」

(ノームにお茶に誘われたら断るな、ってデレファンが言ってたっけ…。それにノドがかわいてるし、時間はあるし…)

「ありがとうございます。いただきます」

 丁寧にお礼を言い、ミリアナはお婆さんの向かいの席に座る。

「薔薇の花びらに砕いた薔薇の実、太陽花とトントン草も加えましょうか。それから山葡萄やまぶどうも少々…」

 お婆さんは乾燥したハーブを小さなさじでサラサラとティーポットに入れて行く。

「これはね、全部、うちの庭で採れたものなのよ」
「素敵! 薔薇の花のお茶なんて、お姫様みたい!」
「あらあら、うふふ…」

 お湯はどうするのかと見ていたら、近くの石柱の上にお湯の入ったポットが置いてあった。湯気が出ている。お婆さんがポットを持ち上げると、その下に魔法陣の彫刻が見えた。

「あ! これ、魔道具なんですね?」
「そうよ。だいたいみんな、庭にひとつはあるわ。お茶するのに便利でしょう?」

 うわぁ、いいなぁ。

 お湯を注ぐと薔薇の香りが辺りに立ち込めた。
 生の薔薇の香りとはまた違う、奥行きのある優雅な香り。太陽花のリンゴのような香りやトントン草のレモン風の香りもブレンドされている。
 ゆっくりと、お湯に香りと風味が移るのを待つ。

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