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第4章 新しい管理人
マホテアまであと少し
しおりを挟む「おや? あのウィロー家の若者と話が付いたのでは?」
「アレ、違ったんだよ。あいつがトラブルって呼んでたのは、学者先生の護衛の事だったんだ」
デレファンはガシガシと頭をかきむしり、うめいた。
「チクショウ、すっかり忘れてた! …仕方ない。午後にはマホテアに到着するから、それからギルドに報告しよう」
デレファンのセリフにハッとする。
「もうそんな近くまで来たの?」
「ああ。フレイムホースだから早いぜ」
「それに新鮮な薬草を積んでるから急ぐんだよ」
マグリーが理由を説明してくれる。
ホルスト郷で仕入れる薬草や魔術素材は質が良く、とても良い値で取引される。けど、傷んでしまえばやはり値段は下がる。
品質保持効果のある封印型保存箱で運べば急ぐ必要はないが、そうするとその運送コストは恐ろしく高いものとなってしまう。保存箱に使われる魔法結晶って使い捨てなんだって。
冷気魔法を練りこんだ魔法結晶ならばそれほど高くはないけど、品質劣化軽減や品質保持用の魔法結晶は、物によっては宝石より高いらしい。
「その魔法を使える魔術師が少ないんですよ。空間ごと封印するわけですからね」
「へー。ジャムを瓶詰めにする時に、お湯で煮てからフタをするのとは違うのね」
「あははは。今度、本人に聞いてみましょう」
ルーベン商会にも品質保持機能付き倉庫がある。そこで使われている魔法結晶は、ルーベンさんの知り合いのノームの魔術師から仕入れているそうだ。
ノームの隠れ里は、道を知っていればマホテアからそれほど遠くない。でも広大な「大森林」の中をあてもなく探しても見つからないだろう。途中にあるいくつかの道は、決まった手順で通らないと通れないのだという。
「あの、動く岩みたいな仕掛けがいくつもあるらしい」
「魔法の仕掛けもあるんじゃないかな? そんな話を聞いた気がする」
「ふわぁ、すごいね!」
産地が近ければ冷気型の保存箱で運んでも品質はそれほど劣化しない。
そのためホルスト郷で薬草を仕入れられるルーベンさんはかなり儲かるらしい。
北回り行商ルートでのメイン商品は、金額で言えばホルスト郷で仕入れる薬草類だ。これをマホテアに持ち帰って自分の店で売る。南回りは、平凡だけど海の塩。その8の字のルートを毎月回るのがルーベンさん達の仕事となる。
しかしその他の村を回る細々とした商いも、ルーベンさんは心の底から楽しんでいるという。その土地ならではの珍しい商品は、マホテアでもホルスト郷でも喜ばれるらしい。
ガラガラガラガラ……
いつの間にか、馬車の車輪の音が変わっていた。周りも明るい。
幌から顔を出して外を見ると、もう、森の中ではなかった。
「街道へ出たよ。マホテアまであと少しだ」
外を確認したのに気づいたデレファンが教えてくれる。道は石畳になっていた。
「ミリアナ、お腹は空いてない? 今日の昼は馬車の中で軽く食べる予定なんだ。夜には母さん達がご馳走を用意してると思うよ」
渡されたのは、大きな葉っぱに包まれたパン。ヤギのチーズと木苺のジャムがはさんである。ホルスト郷のお店で買った物らしい。
「もぐもぐ……おいしい~」
「ふふふ、うまいですな」
ホルスト郷で水筒に詰め直した水も、休憩所の裏の泉の水と同じくらい美味しい。
「食べ終わったから交代するよ、兄さん」
マグリーが御者台へと移動する。手綱を渡したデレファンが後ろの幌に入ってくる。入れ替わりに、私も御者台へ出た。街道沿いの風景が見たかったから。
「あ、なんか回ってる」
「風車。小麦粉を挽いてるんじゃないかな? ウモグル村だと水車だけど、この辺りだと風で羽を回すんだ」
「動物がいっぱいいる」
「農場かな? マホテアでは牛のミルクがたくさん飲めるよ」
「あれ? また、森だよ」
私が前方を指差すと、マグリーは今度は吹き出した。
「違うよ、ミリアナ、アレは……」
マグリーは街道の先に見えてきた大きな茂みを見ながら言う。
「アレは、世界樹。マホテアの世界樹だよ」
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