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第4章 新しい管理人
内と外
しおりを挟む柵は世界樹のある区域を囲っている。透かして見ると、遠くの方に太い幹らしき物が見えた。
ただし手前の地面には、たくさんの植物が勝手気ままに生えていて伸び放題。奥にある世界樹を覆い隠している。
この柵の中で仕事の面接を受ける…のかな?
馬車はしばらく柵に沿って走り、やがて門の前に出た。
デレファンは手綱を操り、馬車をそちらへ寄せる。
「止まれ!」
門の横にある詰所から衛兵が二人出てきた。
「ここから先は立ち入り禁止だ」
馬車を門の前に止め、ルーベンさんは馬車を降りる。
「お疲れ様です。中の人に頼まれて、お届けに参りました」
「ふむ。荷は何だ?」
「いえ、頼まれたのはこちらの…さ、ミリアナ。あの通行許可証を」
「え? あ、はい」
ベルトポーチから薄緑色のカードを取り出し、右下をつまんで衛兵に見せる。
「コレは…っ」
衛兵の一人が近寄り、カードをしげしげとながめた。かと思うと、
「目的地:ユグドール、有効期限:一ヶ月。ただし、ウモグル~マホテア一往復限り、目的:仕事の面接……」
カードの記載内容を訳して読み始めた。
「すごい! エルフ語が読めるんですね?」
「ハハハ…、まぁ、ここの守衛だからねぇ。どれ、もう少し見せて?」
「はい」
見やすい様にカードを傾ける。
「名前はミリアナ? ウモグルのミリアナ・グレウス・ユウレンド?」
「はい。そうです」
「身元引受人:シルサナス・クレヴァンシアス・ラル・ト・ユグドール・ナ・グラン・ルー…」
「あっ…!」
私は緑の羊園の院長室で会った背の高い男の人を思い出した。
「そうです、そのクレヴァンシアスさんがこのカードを作ってくれたんです! プラチナブロンドの背の高いエルフのおじさん」
「アッハッハッハ。エルフのおじさん、か」
「氏も形無しだな」
守衛達は顔を見合わせて苦笑い。
しまった。ちょっと失礼な言い方だったかしら?
「じゃあ、ミリアナちゃん。ちょっとそのまま持ってて?」
「はい」
後から来た方の若い守衛が、私の親指の上に人差し指を重ねる。じわっと暖かいものが指を通って流れて行く。するとカードは若葉色に輝き始めた。
うん、これは承認の色。
「よし!」
確認のために魔力を通した若い守衛は、指を離してにこやかな笑顔になった。
「確かに。じゃあ、こちらへどうぞ。荷物はありますか?」
「え? あの…」
私の荷物は色あせたバックパック一つだけ。マグリーが馬車の中から心配そうに渡してくれる。
「荷物…あります。あの……?」
「一応、出入りの際には持ち物検査があります。詰所で簡単に中を改めさせてもらうだけですから」
守衛はミリアナを門扉の方へ誘導する。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
あわてて追いかけるルーベン。
「中まで送らせてください。私も一緒に行きます」
「許可がないものを通すわけにはいかない。公式の…あるいは住人の許可が必要だ」
「クレヴァンシアス氏はご在宅で? この子とマホテアで落ち合う約束のはずです。一秒でも早くと言うので急いで参りましたが…」
「いや、まだ戻られていない」
「エッ!?」
驚いて声を上げたのはマグリーだ。
「約束が違うじゃないか! だったら…むぐぐっ…」
マグリーの口を押さえてデレファンが前に出る。
「だったらロドルを呼んでくれ。ロドル・マーシガー。友達だ。前にも何度か遊びに来たことがある」
「呼び出しは応じかねます。事前の予約か同伴でないと…」
「けどっ…」
「あなたの事は覚えております。ええ、デレファンさん」
若い方の衛兵が割って入る。
「ですが…マーシガー氏も外出中です。もしあなたが訪ねて来たらクエスト中で留守だと伝えて欲しいと…」
「くそっ! こんな時にっ…!」
デレファンは胸の前で手のひらに拳を打ち付けた。
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