世界樹の管理人

浅間遊歩

文字の大きさ
62 / 77
第4章 新しい管理人

内と外

しおりを挟む

 柵は世界樹のある区域を囲っている。透かして見ると、遠くの方に太い幹らしき物が見えた。
 ただし手前の地面には、たくさんの植物が勝手気ままに生えていて伸び放題。奥にある世界樹を覆い隠している。

 この柵の中で仕事の面接を受ける…のかな?

 馬車はしばらく柵に沿って走り、やがて門の前に出た。
 デレファンは手綱を操り、馬車をそちらへ寄せる。

「止まれ!」

 門の横にある詰所つめしょから衛兵が二人出てきた。

「ここから先は立ち入り禁止だ」

 馬車を門の前に止め、ルーベンさんは馬車を降りる。

「お疲れ様です。中の人に頼まれて、お届けに参りました」
「ふむ。荷は何だ?」
「いえ、頼まれたのはこちらの…さ、ミリアナ。あの通行許可証を」
「え? あ、はい」

 ベルトポーチから薄緑色のカードを取り出し、右下をつまんで衛兵に見せる。

「コレは…っ」

 衛兵の一人が近寄り、カードをしげしげとながめた。かと思うと、

「目的地:ユグドール、有効期限:一ヶ月。ただし、ウモグル~マホテア一往復限り、目的:仕事の面接……」

 カードの記載内容を訳して読み始めた。

「すごい! エルフ語が読めるんですね?」
「ハハハ…、まぁ、の守衛だからねぇ。どれ、もう少し見せて?」
「はい」

 見やすい様にカードを傾ける。

「名前はミリアナ? ウモグルのミリアナ・グレウス・ユウレンド?」
「はい。そうです」
「身元引受人:シルサナス・クレヴァンシアス・ラル・ト・ユグドール・ナ・グラン・ルー…」
「あっ…!」

 私は緑の羊園の院長室で会った背の高い男の人を思い出した。

「そうです、そのクレヴァンシアスさんがこのカードを作ってくれたんです! プラチナブロンドの背の高いエルフのおじさん」
「アッハッハッハ。エルフのおじさん、か」
「氏も形無しだな」

 守衛達は顔を見合わせて苦笑い。
 しまった。ちょっと失礼な言い方だったかしら?

「じゃあ、ミリアナちゃん。ちょっとそのまま持ってて?」
「はい」

 後から来た方の若い守衛が、私の親指の上に人差し指を重ねる。じわっと暖かいものが指を通って流れて行く。するとカードは若葉色に輝き始めた。
 うん、これは承認の色。

「よし!」

 確認のために魔力を通した若い守衛は、指を離してにこやかな笑顔になった。

「確かに。じゃあ、こちらへどうぞ。荷物はありますか?」
「え? あの…」

 私の荷物は色あせたバックパック一つだけ。マグリーが馬車の中から心配そうに渡してくれる。

「荷物…あります。あの……?」
「一応、出入りの際には持ち物検査があります。詰所で簡単に中を改めさせてもらうだけですから」

 守衛はミリアナを門扉フェンスの方へ誘導する。

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 あわてて追いかけるルーベン。

「中まで送らせてください。私も一緒に行きます」
「許可がないものを通すわけにはいかない。公式の…あるいは住人の許可が必要だ」
「クレヴァンシアス氏はご在宅で? この子とマホテアで落ち合う約束のはずです。一秒でも早くと言うので急いで参りましたが…」
「いや、まだ戻られていない」
「エッ!?」

 驚いて声を上げたのはマグリーだ。

「約束が違うじゃないか! だったら…むぐぐっ…」

 マグリーの口を押さえてデレファンが前に出る。

「だったらロドルを呼んでくれ。ロドル・マーシガー。友達だ。前にも何度か遊びに来たことがある」
「呼び出しは応じかねます。事前の予約か同伴でないと…」
「けどっ…」
「あなたの事は覚えております。ええ、デレファンさん」

 若い方の衛兵が割って入る。

「ですが…マーシガー氏も外出中です。もしあなたが訪ねて来たらクエスト中で留守だと伝えて欲しいと…」
「くそっ! こんな時にっ…!」

 デレファンは胸の前で手のひらに拳を打ち付けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

悪役令嬢は死んで生き返ってついでに中身も入れ替えました

蒼黒せい
恋愛
侯爵令嬢ミリアはその性格の悪さと家の権威散らし、散財から学園内では大層嫌われていた。しかし、突如不治の病にかかった彼女は5年という長い年月苦しみ続け、そして治療の甲斐もなく亡くなってしまう。しかし、直後に彼女は息を吹き返す。病を克服して。 だが、その中身は全くの別人であった。かつて『日本人』として生きていた女性は、異世界という新たな世界で二度目の生を謳歌する… ※同名アカウントでなろう・カクヨムにも投稿しています

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

処理中です...