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第4章 新しい管理人
世界樹へ続く道
しおりを挟む「ねえ、父さん。出直す訳にはいかないの? そのエルフの人が帰って来るのをうちで待とうよ。ミリアナも一緒に」
マグリーの問いかけに険しい顔で首を振るルーベン。
「マホテアに着いたら決して寄り道はせず、可能な限り早く中央特別区の中に入れて欲しいと、重々頼まれたのだ。契約書も交わした」
「でも…」
「私は商人だ。誠実な商人でありたいと願っている。契約を違える事はできん。交換の神にも見放されよう」
交換を司るクッセナッシ神は、商業や契約の神でもある。正当な対価との交換というのが基本。その加護を願うならば、一度結んだ契約は命をかけても守るべし。
古い時代には、クッセナッシには生贄を捧げて願い事をした。今でも、契約を違えると足りない対価の分として自分の命を支払う羽目になると言われている。本当はとても怖い神様なのだ。
ルーベンは決然と顔を上げた。
「それでは、ミリアナをよろしくお願いします。今では私の娘同然の子なのです」
「場所が場所だからな。心配は理解する。実は…本日午後の来訪者は予定にあった。クレヴァンシアス氏より事前に連絡があったのだ。たぶん『中』にも連絡が行っていると思う」
「さ、ミリアナちゃん。ちょっとだけ荷物を見せてもらうよ?」
詰所の中でバックパックの中身を調べた後、門扉の端にある小さな柵扉から特別区の中に入った。
振り返ると、鉄柵の外からルーベンさんとデレファンとマグリー、それに守衛さん達も心配そうにこちらを見ている。
守衛さんが奥まで送ってくれるのだと思ってたが、どうやら違うらしい。
「そのまま道なりに行けば入り口に着く」
最初に出て来た体格の良い守衛が指で示す。
……道? 入り口?
「もしも困った事があったらここまで戻っておいで。でも、今はまず、目的地に向かいなさい。たぶん中の人が誰かいるから」
若い守衛も柵の外から声を掛ける。
(世界樹……)
ミリアナは手に持った薄緑色のカードを見つめる。
(目的地:世界樹……)
さっき守衛が読み上げた内容。どの行がその記述に当たるのか、エルフ語で書かれているためミリアナには分からない。でも、
(もしかしたら、目的地の「世界樹」って、地名じゃないの?)
足元を見ると、雑草や土に埋もれかけたレンガがあった。規則正しく並んで敷地の奥へと続いている。
(これが、道?)
レンガの道に沿って人が踏み荒らした跡もある。確かに頻繁に人が通っているらしい。
見上げると、生い茂る木々の向こうに巨大な樹のシルエット。
(あれが、世界樹…)
私は世界樹のシルエットがある薄緑のカードをベルトポーチにしまい、もう一度外を振り返って明るく言った。
「じゃあ、行ってきます」
見送る人々に手を振り、歩き出す。足元に注意しながら道を進む。
人が通れる程度の幅はあるが、左右から木の枝が張り出しているし、レンガはデコボコ。隙間から雑草も生えていた。
(せめてもう少し手入れをすればいいのに…)
来訪者のために玄関周りをいつも綺麗にしていた緑の羊園を思い出す。
(ちゃんと手入れをすれば、ここはきっと、とても素敵な場所になるのに)
ミリアナは心の底からそう思い、残念でならなかった。
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