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第4章 新しい管理人
今日の午後に
しおりを挟むだいぶ歩いた気がするのに、まだ世界樹にたどりつかない。
門と世界樹の間には、思ったよりも距離がありそう。
ふう、と風が吹き、周りの木々が揺れる。
〈 キタ… 〉
〈 キタ… 〉
〈 …ミドリ ノ ムスメ 〉
〈 キタヨ… 〉
〈 イマ…? 〉
〈 イマ…!! 〉
かすかに、どこかで声がする。
外の公園の声かな? それとも中?
中央特別区の敷地内は、木や草が生い茂ってるだけでなく地面が起伏していて先も横も見通しにくい。
(そういえば守衛さん、「中の人」がいるって言ってた。このどこかに人が住んでるのよね?)
辺りを見回す。今のところ、家は見当たらない。
すると今度は、かなり近い場所からハッキリとした会話が聞こえてきた。
「本当に来るのか?」
ガラガラ声だ。大人の男の人。
「来るよ。今日の午後だってさ」
今度は若い女性の声。
「もう午後だぞ?」
「でもアイツがわざわざ連絡を寄越したんだから…。アイツ、ウソは言わないっしょ」
「嘘だとは言っとらん」
「もうちょっと待ってみようよ……あン?」
藪を抜けた所に、少し開けた場所があった。
柔らかそうな雑草が隙間なく生えている。緑色のふかふか絨毯が敷いてある広場みたい。
広場の中央には街灯が立っている。夜になれば明かりがつくのだろう。そしてその向こうには、上りの階段があった。一番上の段に誰か座っている。
そこで会話をしていた二人組がこちらに気付いた。
「子供…?」
「なんじゃ、うるさい奴か?」
「いや……人間の子供だ」
珍しいモノを見たかのように、二人して私のことをマジマジと見る。
小柄な女性の方は、日に焼けてオレンジ色に見える髪を肩より短く切っている。ちょっとビックリしたけど、ツンツンと跳ねる髪型が可愛らしい顔に意外と似合っている。顔も腕も日に焼けているので、胸のふくらみが目立っていなければ男の子と勘違いするところだ。色あせて擦り切れたズボンをはいて足を組んでいる。
隣に座っている男性は……、驚いた。もしかしたら話に聞く岩小人族じゃないだろうか?
背は小柄な女性よりさらに低いが、全身に筋肉が付いたガッシリとした体つき、長いヒゲ、物騒な事に大きな斧を抱えている。
二人が腰掛けている階段は、かなり幅の広い大きな階段。それを取り巻くように太い木の根がうねってる。両脇には壁……じゃない。木だ。木の幹だ。
幾重にも分かれた枝が複雑に絡み合って、一本の太い幹の様になっている。歩いて一周するだけで数分はかかりそう。高さは…見上げても見当がつかない。マホテアに入る前から見えるだけあって恐ろしいほど大きい。
「こんにちわ。初めまして! …あの、これが世界樹ですか?」
少し離れた場所から声を張り上げて挨拶する。
近づいて良いのか分からない。
目を丸くした女性が軽い足取りで階段を降りてきた。
「お嬢ちゃん、どこから来たの?」
「私、ウモグル村の…」
自己紹介をしようとしたら、
「あっと、そうじゃなくてぇ…」
と、さえぎられた。
「どっから入って来たの?」
「門から…」
おずおずと、後ろを指差す。
「えーー? 開いてた?」
「あ、はい」
正確には、「開いてた」じゃなくて「開けてくれた」だけど。
「クソッ! 仕事をサボりおって。番犬どもめ!」
ドワーフのおじさんも文句を言いながら降りてきた。斧も一緒だ。
「ごめんねぇ。今、見学は、やってないんだ」
女性は本当に申し訳なさそうに優しく言う。
「管理人が居なくてね。手続きができないの。だからまた今度…」
「いや、ジーナ。新しい管理人が来るなら、そいつに手続きをさせればよかろう」
ドワーフが喚く。私に怒ってるんじゃなさそうだけど、ちょっと怖い。
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