世界樹の管理人

浅間遊歩

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第4章 新しい管理人

試練

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「これから来るんですか?」
「そう。新しい管理人が来るのを待ってるトコなの」
「フン。ワシは斧の手入れをしとるだけだ」
「素直じゃないんだから、もーっ」

 ジーナは腰に手を当て口をとがらせる。
 すると、

「ほほう。出迎えとは。ご苦労、ご苦労」

 後ろから声がした。
 振り返ると、何人もの男達がレンガの道を歩いてくる。
 中央には背の高い神経質そうな人。
 男の人なのに、レースのフリルがたっぷりとついたブラウスを着ている。縁取りのある長い上着はとても高そうだ。ベストの胸ポケットからは懐中時計の金の鎖が出ている。指には大きな宝石が付いた指輪がいくつも。指より指輪の方が多い。
 いや~な感じの冷たい目でこちらをにらんでいる。

「何の御用でしょうか? レグアーデ卿」
「ハッ。少しは礼儀をわきまえた口をきくようになったじゃないか。あの薄汚い浮浪児が」

 ねっちょりとした視線と声。ジーナは嫌そうな顔で一歩下がる。

はヨソもんは立ち入り禁止よ。お前さんも知っとろうが。え?」

 代わりに斧をかついだドワーフが前に出た。

「ところが、わたくしも関係者なのですよ。今日からココの管理を任されましてねぇ。ほら、この通り」

 と、手に持った書類を広げて掲げる。

「国王陛下のサインもあるでしょう?」

 クックック、と男は笑う。

「何だと!?」
「よりによってお前がッ?」

 ドワーフとジーナが気色ばむ。

「おや、陛下の判断に何か文句でも?」
「……くっ………」
「む………」

 顔を強張こわば強張らせ、青ざめる二人。でも、私は首をかしげた。

「世界樹の試練テストを受ける許可を与える、って書いてありますけど……。これ、管理人に関係あるんですか?」

 思わず、見たまんまを声に出して読んでしまった。

「はあ!?」
「嬢ちゃん、字が読めるのか?」
「一応……」
「騙したなッ!! クソ野郎ッ」

 ジーナの勢いに、着飾った男は狼狽うろたえる。

「テ、テストに受かれば管理人になるのだから同じ事でしょうが」

 レグアーデ侯爵ガストン・ウォーゲルゲは書類を適当に丸め、隣にいた部下に放り投げた。

「さ、お退きなさい」

 取り巻きを引き連れて近づいてくる。
 ジーナさんは私をかばうようにしながら道を空ける。だが、ドワーフは、斧を構えて世界樹の前に仁王立ちし、男をにらみつけた。

「…フッ」

 男は汚いモノを見るような目でアゴをしゃくり、道を空けるようにとうながす。
 ドワーフは男を見上げたまま憎々しげに顔をゆがめ、「ううう…」とうなりながらも一歩、横に動いた。

「アッハッハッハ……」

 勝ち誇ったように笑いながらドワーフの横を通り過ぎ、レグアーデ卿が世界樹に近づく。

「さあ、トビアス。最初はお前だ。世界樹に入れ」
「…ハッ!」

 名前を呼ばれた若い男が前に出てくる。

「おい。お前がテストを受けるんじゃねーのか?」

 ジーナが問いかける。

「ええ、受けますとも。ですが悪いウワサも聞きますし、念には念を、ですよ。何人か、候補者を用意してましてねぇ」

 それから肩越しに世界樹を親指で示す。

「行け」
「ハッ!」

 若い男は階段を登り始めた。
 階段は世界樹の根の間を通りながら、幹のくぼみへと続いている。
 そこには扉があった。
 枝が幾重にも絡み合って扉になっている。
 生きた枝なのか、枝を加工した物なのか。美しい細工物の様な扉。

「鍵がかかっています!」

 扉を調べた若い男が叫ぶ。
 それを聞き、レグアーデ卿はドワーフに命じる。

「開けろ」
「断る」

 即答。

「貴様……」
「さすればテストは即時失格となるだろうが……良いのか?」
「それは…本意ではない」

 皆が見守る中、若い男は扉を開けようと調べ続けた。
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