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第4章 新しい管理人
扉の向こうへ
しおりを挟む(あの扉が世界樹の入口なのかな…?)
緊張で静まり返る大人達とは違い、ミリアナは間近で見る世界樹に心を奪われていた。
(世界樹に扉が付いてるなんて知らなかった。世界樹って、中に入れるのか。ただの大きい木だと思ってたよ)
試練というのは、扉の開け方を見つけるところから始まっているらしい。
(と、思わせておいて、実は扉は偽物で、他の場所から入るんだったりして!?)
あまり目立たない動きで辺りを見回す。
けれども世界樹は大きすぎて、目に入るのは絡み合う幹ばかり。重なり合って影になっている部分に秘密の入口があるのかも知れない…。
上を向くと、ものすごく高い場所で横に伸びる枝がある。そして、大量の葉っぱも。
(……あれ?)
遠くからでは気づかなかったが、世界樹の葉は所々、黄色くなっている。
(枯葉…かなぁ? まだ夏の初めなのに。そういえば、何となく弱ってるみたい…)
巨大な世界樹は堂々とした威厳と風格があったが、枯れかけているように元気がない。年老いて倒れる寸前の王様のようだ。
「馬鹿者ッ!」
突然の怒号に、ミリアナはビクリと体を震わせ、声のした方を見る。
滑稽なまでに着飾ったレグアーデ卿が、戻ってきた若い男を打ちすえたところだった。
「手掛かりひとつ、見つけられないだと? この能なしが!」
「も、申し訳ありません!」
地面に這いつくばって頭を下げる若い男。その頭や脇腹を、尖ったブーツでガツガツと蹴り続ける。
「少しは頭を働かせなさい! 鍵が開かないなら、ドアの方を壊せば良いだけでしょうが!」
「何だと!?」
レグアーデ卿の言葉に、ドワーフが目を剥いた。
担いでいた大きな斧の斧頭を、ドスン!と音を立てて地面に突き立てる。
「御神木を傷付けようってのか? そんならワシも、ちょっくら考えんとならん」
低い静かな声とドワーフの視線に、レグアーデ卿は青ざめた。
「本気でヤルってんなら、仲間を呼ぶよ?」
ジーナも怖い目でにらみつける。
「言葉のアヤに決まっておろう。次は…クルキエ!」
「は!」
冷や汗をかくレグアーデ卿に呼び出され、姿勢の悪い痩せた男が前に出た。
レグアーデ卿は何やら目配せをしてから命じる。
「行け!」
「はっ!」
男はニヤリと笑って世界樹に向かう。
階段を登り、取っ手の位置すら定かでない扉と向かい合い、そのまま数分……
ズキン!
「痛ッ!」
鋭い痛みに、ミリアナは飛び上がった。
「どうしたの?」
「うう……足が…。虫にでも刺されたみたい」
しゃがみこんで足首をさする。
ジーナは眉を寄せ、
「あー。ここ数年、手入れしてないから雑草が伸び放題で、虫がだいぶ増えてンのよねー。大丈夫?」
「はい。もう痛くないです」
と、立ち上がった時、
「開きましたッ!」
階段の上から大声が降ってきた。
「ええっ!?」
「何だと?」
ジーナとドワーフが驚愕の声を上げ、レグアーデ卿は満足そうに拍手をする。
「上出来です。さ、お行きなさい」
「は!」
姿勢の悪い男は、身長の二倍はあろうかという大きな扉を開け、その向こうに姿を消した。
「そんな…」
ジーナは信じられないという顔。
だがドワーフは静かに目を閉じる。
「御神木の御心は誰にも分からぬ」
「でも…ラグナル…ッ…」
「ここに住むのは何も、輝かしい経歴の持ち主ばかりではない」
「それは…そうだけど……」
「待つのだ。何が起こるか。どのような結果になるか。いずれ分かる」
「うん……」
どうやら世界樹の中で、何かテストが行われるらしい。
ドワーフのラグナルとジーナは、じっと世界樹を見上げている。
10分後。
キィ…と、扉が開いた。
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