67 / 77
第4章 新しい管理人
挑戦者たち
しおりを挟む「はぁ…はぁ……は、はははは……」
出て来たのは、あの姿勢の悪い痩せた男だった。
「やった…やったぞ……とうとうやった…!」
男は目を血走らせて叫んだ。ヨロヨロと階段を降りてくる。
「よくやった! クルキエ!」
レグアーデ卿が走り寄る。
「首尾は? いかに?」
問いかける声が期待で震えている。だが、
「ああ、もう夜が明けたのですね。やったぞ! 俺は登り切った!」
「…クルキエ…?」
「途中で何度、登るのをやめようと思ったか…。何時間もひたすら足を動かし…夜の闇にも負けず…世界樹を、制したのだ。登り切った! この俺が! 何人たりともたどり着いたことのない高みに!」
「な、何を言うておるのだ、クルキエ。しっかりせい!」
「ああ、レグアーデ卿、なぜココに…? 卿も登ってこられたのですか? さあ、二人で世界を見下ろしましょう…」
「………ッ!」
男は、一晩かけて世界樹を登り切ったと信じているようだった。少し混乱しているらしい。
レグアーデ卿は男を蹴り飛ばし、離れた。
「次! ブロウワード!」
「は…はい!」
呼ばれて前に出たのは、非常に体格の良い大男だった。
「行け」
「…しかし、レグアーデ卿……」
「行け!!!」
「は、はいっ!」
大男は弾かれたように飛び出し、その勢いのまま階段を駆け上がった。そして苦もなく扉を開け、世界樹の中に入る。
「む?」
「えええ?」
ラグナルとジーナが驚く。
「どーなってんの?」
どうやらあの扉を開けるのですら、本来は難しいみたい。
ジーナの声に、レグアーデ卿がジロリとこちらをにらむ。
そして10分、いやそれ以上が過ぎた。
バタン!
突然、扉が開いた。
出て来たのは、さっきの大男。
二、三歩歩いてから両手を広げ、満面の笑みを浮かべる。
「ああ……」
「ブロウワード!」
レグアーデ卿は、今度は近づかずに遠くから声をかける。
「ブロウワード! どうであった? ブロウワード!?」
「あ、ああ、あああ~~~………」
大男の声が次第に大きくなる。
「あぁ~っはぁ、はっ、ひっ、ひゃあはははは……」
「…………」
「ヒッ、ウヒッ、はあっ、ハッ、はっ、は、ヒアッ、ははは…アはハハ……」
笑い続ける男の目は虚ろで、焦点が合ってなかった。
「ふうむ。合格には見えんのう」
ラグナルが首を振りつつ感想を述べる。
「次は誰だ?」
グルリと見回すドワーフの視線を避けようと、みんな目をそらす。
「お前さんか?」
「くっ…」
レグアーデ卿が悔しそうに息を漏らす。だが、返事ができない。
一体、中で何があったんだろう。
「世界樹の中には何があるの?」
私は小さな声でジーナさんに聞いた。彼女は私を守るように立ってくれていたので、内緒話のように聞いたつもりだった。
けれども静まり返っていたので、その質問はみんなに聞こえてしまったらしい。
一斉にみんなが私を見た。
「ええっ?」
ジーナが驚く。
「な、何だと? この子は住人の子ではないのか?」
八つ当たりできる対象を見つけたレグアーデ卿は、ジーナに甲高い声で怒鳴り始める。
「自分らは部外者を入れておきながら、余を批判したのか? 世界樹を私せんとは思い上がりもはなはだしい!」
「待ってくれ、この子は見学の…」
「あ、違うんです、私、コレ…!」
急いで薄緑色のカードを取り出し、ジーナさんに見せる。
「ここには面接を受けに来たんです。さっきはすぐに説明できなくてごめんなさい!」
カードがよく見えるように、ぐいと手を伸ばす。
「面…接?」
「はい」
「こ、このカード…」
「通行許可証です。私の。世界樹が…」
世界樹が目的地なんです、と言おうとしたが、その前にジーナさんがガッとカードをつかんだ。
「見ろよ、ラグナル! クレヴァンシアスだ! アイツのサインがある!」
「ほう?」
ラグナルは片眉を上げた。
「間違いない! 他の部分は読めないけど、このサインには見覚えがある。子供の頃、アイツの手紙を何度も配達したからサァ。間違いないよ!」
ジーナがしがみついたカードを、ラグナルも横からのぞき込む。
それからこちらを向き、うなるように聞いた。
「おい。用件は、何だと言った?」
「面接です。仕事の面接を受けに来ました」
「ふむ…」
長い髭をつかみ、口をへの字にしたドワーフが、興味深そうに私を見る。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
金の羊亭へようこそ! 〝元〟聖女様の宿屋経営物語
紗々置 遼嘉
ファンタジー
アルシャインは真面目な聖女だった。
しかし、神聖力が枯渇して〝偽聖女〟と罵られて国を追い出された。
郊外に館を貰ったアルシャインは、護衛騎士を付けられた。
そして、そこが酒場兼宿屋だと分かると、復活させようと決意した。
そこには戦争孤児もいて、アルシャインはその子達を養うと決める。
アルシャインの食事処兼、宿屋経営の夢がどんどん形になっていく。
そして、孤児達の成長と日常、たまに恋愛がある物語である。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる