世界樹の管理人

浅間遊歩

文字の大きさ
68 / 77
第4章 新しい管理人

待ち人、来たれり

しおりを挟む

「だとすると、クレヴァンシアスが見つけた管理人候補とは、この子か?」

「「「「「 え? 」」」」」

 私だけでなく、その場にいた全員が驚く。

「どうやら次にテストを受けるのは嬢ちゃんのようだな」
「ちょっと、ラグナル! 何言ってんの! この子はまだ子供じゃんか!」
「ジーナ。お前さんがココに来た時にゃ、これより小さかったと思うが? そして、一人で世界樹に入った」
「それは…そうだけど…」

 納得しかけたジーナは、ハッとして、

「そうじゃなくて! 管理人候補ってのは…」
「クレヴァンシアスが、今日の午後に来ると連絡を寄越したのだろう? そしてこの嬢ちゃんが今日の午後、アイツの紹介でやって来た。違うか?」
「そうだけど……」

 ジーナにはもう反論の言葉が見つからなかった。

「これはいい。ハッ!」

 レグアーデ卿が顔をゆがめて笑う。

「ぜひとも見本を見せて頂こう。世界樹の征服の仕方を!」

 ラグナルはミリアナに向かい合い、真剣な目で語りかけた。

「嬢ちゃん。世界樹に認められるには、一人きりで中に入らねばならぬ」
「中で何をすれば良いんですか?」
「わからん」

 首を振る。

「だが、自分をいつわらぬこった。やるべき事はおのずと分かる」

 そう言いながら私の肩を優しく叩いた。そのまま、階段の下まで一緒に歩く。

「さ、お行き」
「はい…」

 前の人たちの事を考えると恐ろしいが、少なくとも私より小さな女の子ジーナが、たった一人で世界樹に入って無事に出て来たのだ。
 面接、あるいは試練テストがどんな結果に終わるか分からないが、とりあえず入ってみよう。そのためにマホテアまで来たんだから。

 ゆっくりと階段を登る。

 枝が絡み合って出来ている大きな扉の前まで来た時、

「…あっ!」

 思わず小さく叫んでしまった。
 遠くからは分からなかったが、扉の枝が何本か折られていた。
 何か硬い物でこじったのだろう。周りの皮も削れている。

「ひどい……」

 階下を振り返ると、レグアーデ卿と目が合った。私の視線の意味に気づいたらしい。冷たくニヤリと笑っている…
 彼が命じてやらせたんだ。絶対、そうに違いない。
 でも証拠がない。
 あの人なら、私がやったと言い立てるだろう。

(このまま開けていいのかな…?)

 壊れているのが分かっていて開けたら、私も世界樹に嫌われてしまうだろうか?
 でも、ここで引き返したら、やはり失格だろう。

「ファーティエン様……どうか、お守りください…」

 目をつむって胸の上で手のひらを重ね、豊穣と慈愛の地母神・ファーティエン様に祈る。それから意を決して扉に手を伸ばす。

 指先が扉に触れたその時…、


   〈〈〈 マチビト キタレリ!! 〉〉〉


 声が響いた。

 重く、軽やかに。
 力強く、かすかに。
 天の上から、地の底から、世界を渡る風の中から。
 男か女かも分からぬ年老いた声。いくつもの声が重なっているのかもしれない。
 そして、


   〈 キタレリ… 〉


 小さな子供の声がそれに続く。

「え……?」

 思わずギョッとして辺りを見回したが、それきりだった。

(何だったんだろう?)

 悪いものではなさそう。少しも怖くはなかった。今は前に進もう…
 指に力を込めると、扉は軽く開いた。

「うわぁ…」

 世界樹の中は、絡み合う幹と枝で出来ていた。

「枝が…ビッシリ詰まってる?」

 と思ったが、よく見ると、人が通れるような隙間がある。

「あ、ココ、通れる。板が渡してあるし…」

 足元の太い枝に板を渡して固定し、歩きやすい通路にしてある。
 板は隙間に合った形状に切り込みが入れられ、ロープで固定されている。釘は使われていないみたい。
 この通路を作った人はきっと、世界樹を大切にしていたのだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

金の羊亭へようこそ! 〝元〟聖女様の宿屋経営物語

紗々置 遼嘉
ファンタジー
アルシャインは真面目な聖女だった。 しかし、神聖力が枯渇して〝偽聖女〟と罵られて国を追い出された。 郊外に館を貰ったアルシャインは、護衛騎士を付けられた。  そして、そこが酒場兼宿屋だと分かると、復活させようと決意した。 そこには戦争孤児もいて、アルシャインはその子達を養うと決める。 アルシャインの食事処兼、宿屋経営の夢がどんどん形になっていく。 そして、孤児達の成長と日常、たまに恋愛がある物語である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...