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第4章 新しい管理人
待ち人、来たれり
しおりを挟む「だとすると、クレヴァンシアスが見つけた管理人候補とは、この子か?」
「「「「「 え? 」」」」」
私だけでなく、その場にいた全員が驚く。
「どうやら次にテストを受けるのは嬢ちゃんのようだな」
「ちょっと、ラグナル! 何言ってんの! この子はまだ子供じゃんか!」
「ジーナ。お前さんがココに来た時にゃ、これより小さかったと思うが? そして、一人で世界樹に入った」
「それは…そうだけど…」
納得しかけたジーナは、ハッとして、
「そうじゃなくて! 管理人候補ってのは…」
「クレヴァンシアスが、今日の午後に来ると連絡を寄越したのだろう? そしてこの嬢ちゃんが今日の午後、アイツの紹介でやって来た。違うか?」
「そうだけど……」
ジーナにはもう反論の言葉が見つからなかった。
「これはいい。ハッ!」
レグアーデ卿が顔を歪めて笑う。
「ぜひとも見本を見せて頂こう。世界樹の征服の仕方を!」
ラグナルはミリアナに向かい合い、真剣な目で語りかけた。
「嬢ちゃん。世界樹に認められるには、一人きりで中に入らねばならぬ」
「中で何をすれば良いんですか?」
「わからん」
首を振る。
「だが、自分を偽らぬこった。やるべき事は自ずと分かる」
そう言いながら私の肩を優しく叩いた。そのまま、階段の下まで一緒に歩く。
「さ、お行き」
「はい…」
前の人たちの事を考えると恐ろしいが、少なくとも私より小さな女の子が、たった一人で世界樹に入って無事に出て来たのだ。
面接、あるいは試練がどんな結果に終わるか分からないが、とりあえず入ってみよう。そのためにマホテアまで来たんだから。
ゆっくりと階段を登る。
枝が絡み合って出来ている大きな扉の前まで来た時、
「…あっ!」
思わず小さく叫んでしまった。
遠くからは分からなかったが、扉の枝が何本か折られていた。
何か硬い物でこじったのだろう。周りの皮も削れている。
「ひどい……」
階下を振り返ると、レグアーデ卿と目が合った。私の視線の意味に気づいたらしい。冷たくニヤリと笑っている…
彼が命じてやらせたんだ。絶対、そうに違いない。
でも証拠がない。
あの人なら、私がやったと言い立てるだろう。
(このまま開けていいのかな…?)
壊れているのが分かっていて開けたら、私も世界樹に嫌われてしまうだろうか?
でも、ここで引き返したら、やはり失格だろう。
「ファーティエン様……どうか、お守りください…」
目をつむって胸の上で手のひらを重ね、豊穣と慈愛の地母神・ファーティエン様に祈る。それから意を決して扉に手を伸ばす。
指先が扉に触れたその時…、
〈〈〈 マチビト キタレリ!! 〉〉〉
声が響いた。
重く、軽やかに。
力強く、かすかに。
天の上から、地の底から、世界を渡る風の中から。
男か女かも分からぬ年老いた声。いくつもの声が重なっているのかもしれない。
そして、
〈 キタレリ… 〉
小さな子供の声がそれに続く。
「え……?」
思わずギョッとして辺りを見回したが、それきりだった。
(何だったんだろう?)
悪いものではなさそう。少しも怖くはなかった。今は前に進もう…
指に力を込めると、扉は軽く開いた。
「うわぁ…」
世界樹の中は、絡み合う幹と枝で出来ていた。
「枝が…ビッシリ詰まってる?」
と思ったが、よく見ると、人が通れるような隙間がある。
「あ、ココ、通れる。板が渡してあるし…」
足元の太い枝に板を渡して固定し、歩きやすい通路にしてある。
板は隙間に合った形状に切り込みが入れられ、ロープで固定されている。釘は使われていないみたい。
この通路を作った人はきっと、世界樹を大切にしていたのだろう。
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