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第4章 新しい管理人
管理人室
しおりを挟む踏み板をたどって歩いて行くと、玄関ホールのような空間に出た。その向こうには、またもや上りの階段がある。
ホールの左右には別の通路のような隙間があったが、前の挑戦者たちは階段を登っていったらしい。階段には新しい足跡が付いていた。
「入口の扉の前に足拭きマットを置くべきね。泥の掃除って大変だもの」
緑の羊園の玄関を思い出し、ミリアナはつぶやいた。
階段は上に向かって密集した幹と枝の間に消えている。
階段に近い枝を手すり代わりに階段を登る。段は、板の部分と、木の枝の集まりで出来た部分がある。足を滑らせないように…
「よいしょ、よいしょ…」
一段一段、気をつけて登る。
「よいしょ、よい………あ!」
夢中になりすぎて、つい、小さな子供の様に声を出しながら登っていたよ。
恥ずかしい…
気がついてからは無言で登る。
階段は上へ上へと伸びていたが、一直線ではなかった。時々、せまい踊り場があり、階段の方向が変わる。
「良かった。足を踏み外して下まで一直線に真っ逆さま…じゃ、怖いもん」
でもどれくらい登って来たのか、下が見えないからよく分からない。
枝越しに外の光が漏れてくるので足元は見えるけど、角を曲がると密集した枝が邪魔で踊り場より下は見えないんだよ。
何度目かの踊り場を曲がって次の階段を見上げた時、
「あ!」
階段の先に扉を見つけた。木の扉だ。近づくと、扉には表札が付いていた。
小さな文字で何か書いてある。薄暗いから見えにくいなぁ。
背伸びして目を近づけて読んでみる…
「……管理人室?」
コンコン。
ノックをしたが返事はない。
恐る恐る、ドアノブに手をかける。
キィ……
「…失礼します」
部屋に入ったけど、誰もいない。
中は、院長先生の部屋に少し似ていた。
どーんと大きな机と椅子がある。机の上には書類やインク壺、羽根ペンや吸取り紙などが置かれている。仕事をする書き物机らしい。
「誰か…いませんか?」
返事はない。
部屋の壁際に置いてあるソファとは別に、大きな机の手前に、向かい合うように小さな椅子が置かれている。背もたれのない小さな丸椅子が。
「ここで面接を受けるのかな?」
そうとしか思えない配置である。ミリアナは、お行儀良く丸椅子に腰掛けた。
辺りはシーンと静まり返っている。
部屋の片隅には奥の部屋へと続いているらしい扉もあるが、誰か出て来そうな気配は全くない。
「…呼び鈴か何か、ないのかな? ………ん?」
今、窓の外で何か動いた。
横の壁には大きな窓があって、世界樹の枝や葉が茂っているのが見える。
「猫でもいるのかな? こんな高い木の上だから、リスかな? 鳥かな?」
好奇心に負けて、ミリアナは窓に近づく。
そこは窓というより枠だった。
管理人室は、中から見ると普通の部屋だけど、要するに世界樹の枝の間に設置された木の箱のようなもの。その壁の一部に四角い穴が開いている。
(ふふっ、地上だったら泥棒が入り放題だねぇ…)
でも、ここは高い木の上。しかも、葉っぱが茂ってる高さまで来ているので、下からも見えにくい。
てっきり野生生物だろうと気軽に見回したミリアナは、
「………~~ッ!!」
あやうく悲鳴を上げるところだった。窓の外にいたのは、赤ん坊をようやく卒業したばかり位の可愛らしい幼児だった。
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