世界樹の管理人

浅間遊歩

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第4章 新しい管理人

ただいま

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「なぁ、もういいだろ? 通してくれよ」
「ならぬ!」
「自分の部屋に戻るだけだ。ちょっと荷物を置いて、メシを食いに行きたいんだよ」

 世界樹の前では、まだ押し問答が続いていた。
 日が傾きかけ、戻ってきた住人がさらに3人増えた。
 両手持ちの剣を背中にかついだ大柄な男と姿勢の良い青年、それに小さな女の子に見えるホッパーの女性。
 だがレグアーデ卿とその配下の者たちが通せんぼをして、誰も階段に近づけさせない。

「中へ入って、あの小生意気な子供を手助けするつもりであろう? ふん。そうはさせぬわ」
「試練の邪魔も手助けもせぬ」
「そもそも世界樹の試練は他人が手助けできるもんじゃねーぞ?」
「すぐに出てくるからさァ」
「ならぬならぬ! コレを見よ! 我輩はまだ試練を受けておらぬ」

 レグアーデ卿は国王陛下の許可書を盾に、あくまで譲らない。
 対峙たいじしていた金髪の大男が少しキレ気味に怒鳴る。

「じゃあ、さっさと行け!」
「ま、前がつかえておるのじゃ。我輩は次の…」

 ゴニョゴニョ…と語尾が消える。それをあわてて取りつくろい、

「フン。おおかた、あの小娘も試練に失敗して、どこぞで泣いておるのであろう。あるいは我輩の試練を邪魔せんと時間稼ぎを…」
「だから見てきてやるって」
「ならーん!!」

 ひときわ高い声でレグアーデ卿が叫んだその時、

 カチリ

 軽い音がして、世界樹の正面の扉が開いた。みんなの視線が集まる。

 扉の向こうには、ややクセのある赤毛をお下げにした少女…
 ミリアナだ。注目を浴びて困惑している。
 階段を降りながら、

「ええと、あの……ただいま。遅くなりました」

 まるで頼まれたお使いから戻ってきたような調子で言う。急いで駆け寄るジーナ。

「大丈夫かい? 何ともない?」
「はい。サインをしてきましたけど、あれで良かったんでしょうか?」

 ミリアナの発言に、ジーナは首をひねる。

「サイン?」
「机の上に契約書が置いてあって……」
「机の上!?」
「あ、はい。あの、階段を上って行った先にある管理人室の……」

 ミリアナが全てを言い終わる前に、ジーナはクルリと後ろを向き、世界樹の前でたむろする人々に声高く宣言した。

「聞いたか? みんな! この子が世界樹と契約したぞ!」

「「「おおおおおーーー!!!」」」

 一瞬の後、湧き上がる歓声。が、

「認めん! 認めんぞ!」

 レグアーデ卿が叫ぶ。

「契約書とな? して、それはどこに?」
「え?」

 契約書はサインをしたら光になって消えてしまった。何も残ってない。
 どう説明すればいいんだろう…
 私が返答に詰まったのを見て、レグアーデ卿がニヤニヤと笑う。

「ほれ。そのような作り話でみなだまそうなどと…、子供の浅知恵よの。さ、はよう、ね」

 しっし、と追い払うように手を振る。

「ウソなんか、ついてません!」

 くやしくて涙がにじんでくる。
 でも、泣くもんか!

「いくら何でも疑いすぎだろ?」
「フン! 証拠もないのに信じろと言う方が厚かましいわ」

 怒るジーナさんを薄笑いを浮かべつつ見おろすレグアーデ卿。どうあっても認めないつもりらしい。
 その時、

「証拠なら、もうすぐ届く」

 りんとした声が響く。
 そちらに目をやると、レンガの道を急いでやって来る人影が目に入った。旅人が着るみたいな体全体を覆う大きなコートとつば広の帽子。プラチナブロンドの長い髪に、とがった耳…

「クレヴァンシアスさん!」
世界樹ユグドールにようこそ、ミリアナ。無事に着いて良かった」

 やっぱりクレヴァンシアスさんだ。
 緑の羊園で会った、説明が下手なエルフのおじさん。
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