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第4章 新しい管理人
精霊王の勅使
しおりを挟む「おっそ~~い!」
腰に手を当て仁王立ちしたジーナさんが私の代わりにカンカンに怒っている。
「大変だったんだからね? どこで何してたのさ!」
「すまない、ジーナ。アルガスト王国の国王陛下から急な呼び出しを受け、王都まで出向いていたのだ。だが、どうやら誤解があったらしい」
クレヴァンシアスは不快そうにレグアーデ卿を見やる。
にらまれたレグアーデ卿は青ざめ、あわてて目をそらした。
「な、な、聞いただろ? この子が管理人室に入れたってさ!」
ジーナがミリアナの肩に手をかけ、クレヴァンシアスの前に押し出す。
でもミリアナは、ションボリとうなだれている。
「……サインをした契約書は、光になって消えてしまったの…」
「大丈夫。もうすぐ届くと言ったろう? ほら……来たようだ」
目線を上げたクレヴァンシアスにつられてミリアナも空を見上げる。
ピューーーイィィィ……
何かを知らせる笛のような甲高い音が響く。
ピューーーイィィィ……
雲の合間でキラキラと輝いていた光の粒がまとまり、大きな鳥の姿になった。
長い飾り羽をたなびかせ、円を描くように滑空しながらゆっくりと降りてくる。
パサリ。
光をまとった大きな鳥は、クレヴァンシアスが差し出した腕に舞い降りた。
朱色のクチバシにくわえた円筒をクレヴァンシアスに渡すと、肩へと移動する。
羽は白や黄色だが、飾り羽がチラチラと光るため、金色の鳥のよう。
クレヴァンシアスは、円筒から封蝋のある巻紙を取り出して広げ、読み上げた。
「公示。精霊王国のエレンウィル王は、【大いなる根に支えられし地】(現地名:アルガスト王国・マホテア)にある世界樹の管理人の代替わりを承認する。本日、ただいまより、ミリアナ・グレウス・ユウレンドを人間領の世界樹の管理人とする」
読み終わったクレヴァンシアスは周囲を見渡し、
「精霊王国大使、シルサナス・クレヴァンシアス・ラル・ト・ユグドール・ナ・グラン・ルー」
と付け加えた。
数秒の静寂の後、辺りがざわめく。
「すごい! 金の鳥だよ!」
「精霊王の勅使だ」
「じゃあ本当に?」
「新しい管理人、万歳!」
緊張から解き放たれた人々は笑顔になり、思い思いの感想を口にする。
「な、な、な……」
レグアーデ卿はただ一人ワナワナと震え出し、うめき声を上げた。
だがクレヴァンシアスは意に介さず、ミリアナへと近づく。
「さあ、これが約束した新しい身分証明書だ」
「うわぁ、綺麗!」
クレヴァンシアスが差し出したのは、薄緑色のカード。マホテアに来るためにもらった通行許可証とよく似ている。世界樹のシルエットの地模様がついた綺麗なカードだ。
ルルーシェさんに教わった通りに、右下の枠内に親指を乗せるようにしてカードの角をつまんで持つと、クレヴァンシアスさんは一瞬驚き、それから笑みを浮かべて自分の人差し指をその上に重ねた。
指からは淡い光が流れ出し、私の親指を通り抜けてカードに染み込んで行く。
「この特別区【世界樹】は、人間領にありながらエルフ王国の管轄下でね。その昔、この地に世界樹を植えたのはエルフなのだ。そのため、身分証の発行はエルフの王国となる。必要ならば、これを元に人間の街で使う証明書を発行してもらうといい」
今まで大事にしていた通行許可証と交換に、世界樹の管理人としての身分証明書をもらう。
受け取る手が震える。
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