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第4章 新しい管理人
世界樹の住人
しおりを挟む「ミリアナ。君は世界樹の住人になった。エルフのしきたりで言えば、ミリアナ・グレウス・ユウレンド・ラ・ト・ユグドール・ナ・グラン・ルーを名乗ることが許される」
え? 何?
意味不明。そして長い……
「ラ・ト……?」
よほど変な顔をしてしまったのだろう。クレヴァンシアスさんは、少し笑いながら説明をつづけた。
「ラ・ト・ユグドールとは、【世界樹の樹上に住む者】という意味だ。世界樹と意思疎通のできる巫女、世界樹の主人と言い換えてもいい。私達のように世界樹の下に住む者は、ラル・ト・ユグドールの称号が与えられる」
「かたっ苦しいんだよ、クレヴァンシアスはさぁ!」
横からジーナが割って入る。
「世界樹の住人。それでいいじゃん。ミリアナ、ここに居るのは世界樹に住む仲間たちさ。これからよろしくネ!」
「樹上? 世界樹に? この区域に家があるんじゃなくて?」
「なんだよう、ミリアナは何も知らないんだな。おいら達、世界樹に住んでるんだよ。おいら、案内してやるよ」
草小人族のティピがミリアナの周りをピョンピョンと跳ね回る。
「おい、クレヴァンシアス。紹介してくれ。何が何だかサッパリだ」
ライオンのたてがみの様な金茶の髪をかきあげつつ、バルディアスが近づく。
「前の管理人が行方不明になって、もうすぐ3年。ここは精霊王国の管轄とはいえ、その周りのマホテアはアルガスト王国国王ルヴァン二世の直轄領だ」
「ああ、冒険王のお陰で俺たちも助かってる。冒険者の待遇と福祉は万全だ」
「それだけ危険な地域だという事なのだが…。とにかく、そのために色々と不都合が生じた」
「主に納税関係だろ? 役人ら、クエストの達成料を差し押さえできねぇか、ギルドにまで相談に来てたぜ。滞納してるのは俺じゃないってぇの」
横でディゴリーが大げさに肩をすくめた。
バルディアスも心当たりがあるのかニヤリと笑い、
「見える部分で大きいのはそれだな。しかし本命は世界樹そのものだろう。管理人が消えたことで、世界樹を手に入れようとする勢力がうごめいている」
放心して座り込むレグアーデ卿にチラリ目をやる。
「ああ。だが、エルフとして言わせてもらえれば、世界樹の管理人は、ただの事務員ではない。世界樹と意思疎通のできる素質が必要だ」
「それで探しに行ってたのか。彼女が…?」
「そうだ」
一同の目がミリアナに注がれる。
「そ…素質だとっ?」
衝撃から立ち直ったらしいレグアーデ卿がヨロヨロと近づいてくる。
「その様な小娘に、どんな素質があると…」
と、詰め寄りかけたその時、
「すいませーん。郵便でーす!」
空気を読まずに飛び込んでくる明るい声。
大きな肩掛けカバンを下げた制服姿の若者がレンガの道を走ってやって来る。
「すいませーん、通りまーす!」
若者は世界樹の前にたたずむ人の群れをかいくぐり、階段の脇にあるポストに何通かの封書をドサリと放り込むと、元来た道をそそくさと戻っていった。
「ううむ」
それを見たラグナルが顔をしかめてうなる。
「管理人の仕事は納税代行と世界樹の世話だけではないぞ。例えば…この郵便受け。管理人にしか開けられぬ物だから、三年分の郵便物が溜まっているはずだ」
「ええっ、三年分!?」
「役所や王宮からの連絡に税務署からの督促状。個人宛の私信もあるだろうし、数百通は入っとるだろう」
郵便受けはやや大きめだが、とてもそんなに多くの郵便が入っているようには見えない。
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