今さら戻れと言われても....

きららののん

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真実が暴かれたあの日を境に、アステリア王国の崩壊は目に見える速さで加速していった。

王都に戻ったジュリアン殿下とセアラを待っていたのは、怒りに震える民衆の怒号だった。

「偽物の聖女を差し出せ!」

「エリシア様を返せ! 国を滅ぼす気か!」

王宮を取り囲む数千の民。その声は昼夜を問わず響き渡り、ついには国王自らが決断を下すに至った。

「ジュリアン、そしてセアラ。……お前たちの罪は、もはや余の力でも抑えきれん」

玉座の間で、国王は深く、重いため息をついた。

「父上! お待ちください! 私はただ、セアラの嘘に……」

「黙れ、ジュリアン。一国の王子でありながら、真実を見極める目も持たず、私欲のために有能な婚約者を捨てた。その報いを受けるがいい」

国王は冷徹に宣言した。

「ジュリアン・ド・アステリア。お前を王位継承権から剥奪し、辺境の修道院への永久謹慎を命ずる」

「な……そんな! 父上!」

ジュリアンは床に膝をつき、絶望に顔を歪めた。

そして、その横で震えていたセアラにも、さらに過酷な沙汰が下る。

「セアラ。貴様は聖女の名を汚し、民を欺いた。その罪により、爵位を剥奪し、平民へと落とす。二度と王都の土を踏むことは許さぬ」

「嫌……嫌ですわ! 私はお姫様として、皆にかしずかれて生きるはずだったのに!」

セアラが叫ぶが、衛兵たちは容赦なく彼女の腕を掴み、引きずり出していく。

彼女がかつてエリシアにしたように、今度は彼女自身がすべてを奪われ、放り出される番だった。

一方、その知らせはヴォルガード領にも届いていた。

「……ようやく、正義がなされたようですね」

私はカシアンと共に、美しく整えられた城の庭園を歩いていた。

かつては雪に閉ざされていたこの場所も、今や私の魔力と領民たちの努力によって、色とりどりの花が咲き誇る楽園へと変わりつつある。

「ああ。王国は今、隣国との外交問題や食糧不足で手一杯だそうだ。……自業自得だな」

カシアンは手にした報告書を閉じると、私の肩を優しく抱き寄せた。

「エリシア、もう王国のことを案じる必要はない。奴らは自らの無能さゆえに没落し、貴様を失った損失を一生後悔し続けるだろう」

「……ええ。私はもう、あの方たちのために祈ることはありませんわ」

私は澄み渡った青空を見上げた。

王都を覆っていた魔霧は、今や王国中へと広がり、その光景はかつてのヴォルガードよりも悲惨だという。

けれど、私の光が届くのは、私を愛し、私が愛するこの場所だけだ。

「見てください、カシアン。あんなに大きな蝶が飛んでいますわ」

「ああ、綺麗だな。……だが、俺の隣にいる女性の方が、ずっと美しい」

カシアンが耳元で甘く囁き、私は少しだけ顔を赤らめた。

「もう、そんなことばかりおっしゃって」

「本心だ。エリシア、俺はこの平和を、お前と共に一生守り抜くと誓う」

私たちは、遠くで崩れゆく王国の影を背に、輝かしい未来へと一歩を踏み出した。

復讐ではなく、自らの幸福を選ぶこと。

それが、私を裏切った者たちへの最大の「報い」になるのだと、私は今、確信していた。
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