​『王太子とついで私も悪いですって?!』

きららののん

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砂塵を巻き上げて走る馬車の窓から、リュシアン様とクロエ様は、信じがたい光景を目にしていたはずですわ。

かつては死の象徴であった「メテオ」の荒野。そこには今、王都をも凌ぐほど活気に満ちた、整然たる新市街が広がっているのですから。

「……あ、ありえない。ここは、呪われた地ではなかったのか」

リュシアン様の呻き声が、迎えの馬車の中に虚しく響くのを、私は塔の上から幻視しておりました。


「お見えになりましたわ、マクシミリアン様。私たちの『お友達』が、砂埃にまみれて」

私は、最高級の「メテオ・ティア」印の茶を啜り、独白(モノローグ)を紡ぐ。

私の内なる文豪が、この滑稽な再会を「凋落した正義の巡礼」と名付け、痛快に笑い転げている。

「ふ。泥を啜りに来た客人に、最高の銀食器を用意してやれ。彼らがその重さに耐えきれず、手首を折るほどの贅沢をな」


城の広間は、銀の燭台に灯された炎で、幻想的なまでの輝きを放っていた。

そこへ、ボロ布のようなドレスを纏ったクロエ様が、震えながら足を踏み入れる。

「マクシミリアン様……エレオノーラ様……。どうして、こんな……」

「あら、クロエ様。お顔に少しばかり、王都の『正義の灰』がついておりますわよ? ティア、彼女に鏡を差し上げて」

ティアが恭しく差し出したのは、一点の曇りもないケソミ産の銀鏡。そこに映るのは、かつての輝きを失い、嫉妬と飢えに歪んだ「偽りの聖女」の姿。

「ひっ……! 嫌、見たくないわ!」

「おや。自分の真実から目を背けるのは、聖女の特権でしたかしら? ついでに、その醜い心根も映ればよろしいのに」


「貴様ら! 兄上もエレオノーラ嬢も、領民を搾取してこのような富を築いたのか! 恥を知れ!」

リュシアン様が激昂し、マクシミリアン様に詰め寄る。

しかし、マクシミリアン様は微動だにせず、ただ冷徹な視線で弟を見下ろした。

「恥、か。リュシアン、貴様は自分の空腹を他人のせいにする無能を、恥だと思ったことはないのか?」

「何だと……!」

「私が奪ったのは、彼らの絶望だ。代わりに与えたのは、自ら稼ぎ、自ら食らうという『尊厳』だ。貴様のように、祈りという名の麻薬を配り歩く独善とは訳が違う」

マクシミリアン様の言葉は、研ぎ澄まされた処刑人の斧のように、リュシアン様の矜持を叩き切った。


「……お聞きになって、リュシアン様。ここはもう、あなたの知っている世界ではありませんの」

私は、二人の間に割って入り、優雅にカーテシーをした。

「ここでは、私たちの『悪』が法であり、私たちの『毒』が薬なのですわ。追放してくださって、本当に感謝しております。おかげで私、ようやく自分にぴったりの役どころを見つけられましたもの」

「エレオノーラ……お前、狂っているのか……」

「ええ、狂っておりますわ。この、あまりに美しい地獄にね」

私は扇を閉じ、冷たく微笑んだ。

恥の多い生涯の、これが最も残酷な「おもてなし」。

王都の光を失った二人には、この銀の輝きは、あまりに眩しすぎたようでございます。
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