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王都の大聖堂は、数え切れないほどの祝福の声と、色とりどりの花びらで埋め尽くされていた。
その中央、バージンロードを、クロバとトトリが、ゆっくりと歩んでいく。
純白のウェディングドレスに身を包んだトトリは、まさしく天使そのものだった。
そして、その隣を歩くクロバの表情は、今まで誰も見たことのないほど、穏やかで、幸せに満ちていた。
玉座から、国王陛下が、満足げにその光景を見守っている。
客席には、涙ぐむトワイライト男爵夫妻、誇らしげなセバスチャンや公爵家の使用人たち、そして、少し照れくさそうに笑う、あの地下牢の看守の姿まであった。
やがて、二人は祭壇の前に立ち、互いに向き合う。
神父が、誓いの言葉を問いかける。
クロバは、トトリの瞳を真っ直ぐに見つめ、凛とした声で誓った。
「健やかなる時も、病める時も……いや、どんな時が訪れようとも、私が、私の生涯の全てを懸けて、必ず君を守り抜くことを、ここに誓う」
次に、トトリが、満面の笑みで誓う。
「はい!わたくしも、クロバ様が、毎日、お腹の底から笑って過ごせるように、世界で一番の笑顔を、毎日プレゼントすることを、誓います!」
その彼女らしい誓いの言葉に、大聖堂は、温かい笑いに包まれた。
そして、誓いの口づけ。
二人が唇を重ねた瞬間、祝福の鐘が、高らかに鳴り響いた。
*
それから、数年の月日が流れた。
クローリー公爵家の、陽光あふれる庭。
そこには、しゃがみこんで、何やら地面を熱心に見つめる、三人の姿があった。
「お父様、見てください!アリさんたちが、お引越しをなさっていますわ!」
クロバの腕の中から、亜麻色の髪をした小さな女の子が、歓声を上げる。
その隣で、トトリが、優しく微笑んでいる。
「そうか。大変だな。気をつけていくんだぞ」
クロバは、すっかり父親の顔になって、アリの行列に、真剣に話しかけていた。
その光景は、何年か前と、少しも変わらない。
しかし、そこには、確かな家族の愛と、何物にも代えがたい、温かい幸せが満ちていた。
氷の心を持つと畏れられた公平者は、太陽のような妻と出会い、そして、この世界で一番優しい笑顔を手に入れた。
彼らの物語は、これからも、穏やかで、幸せな日々の中、続いていく。
-完-
その中央、バージンロードを、クロバとトトリが、ゆっくりと歩んでいく。
純白のウェディングドレスに身を包んだトトリは、まさしく天使そのものだった。
そして、その隣を歩くクロバの表情は、今まで誰も見たことのないほど、穏やかで、幸せに満ちていた。
玉座から、国王陛下が、満足げにその光景を見守っている。
客席には、涙ぐむトワイライト男爵夫妻、誇らしげなセバスチャンや公爵家の使用人たち、そして、少し照れくさそうに笑う、あの地下牢の看守の姿まであった。
やがて、二人は祭壇の前に立ち、互いに向き合う。
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次に、トトリが、満面の笑みで誓う。
「はい!わたくしも、クロバ様が、毎日、お腹の底から笑って過ごせるように、世界で一番の笑顔を、毎日プレゼントすることを、誓います!」
その彼女らしい誓いの言葉に、大聖堂は、温かい笑いに包まれた。
そして、誓いの口づけ。
二人が唇を重ねた瞬間、祝福の鐘が、高らかに鳴り響いた。
*
それから、数年の月日が流れた。
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クロバの腕の中から、亜麻色の髪をした小さな女の子が、歓声を上げる。
その隣で、トトリが、優しく微笑んでいる。
「そうか。大変だな。気をつけていくんだぞ」
クロバは、すっかり父親の顔になって、アリの行列に、真剣に話しかけていた。
その光景は、何年か前と、少しも変わらない。
しかし、そこには、確かな家族の愛と、何物にも代えがたい、温かい幸せが満ちていた。
氷の心を持つと畏れられた公平者は、太陽のような妻と出会い、そして、この世界で一番優しい笑顔を手に入れた。
彼らの物語は、これからも、穏やかで、幸せな日々の中、続いていく。
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