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第一章
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次の日から午前中は魔法の基礎を教わり、午後は訓練教官としてあそこで訓練する者達を相手に一対多の乱取り稽古みたいな事をした。
俺と美咲の戯れが予想以上に好評だったようだ。
当初はその申し出に困ったものだが、ガンジュールさんや、ヤイガニーさんに「軽くあしらう程度で構わない」と言われたので受けることにした。
一日目、二日目は本当に軽くあしらって終わったのだが、三日目、四日目は一人一人の動きを見極め良い動きになるようにアドバイスをするようになった。付け焼き刃の内はどうにもならないから、今度の戦いで命を散らさないよう願う。
それから、兵士、騎士、冒険者と俺の武器が新しくなった。直剣の刃の部分を丸くして鉄棒にした物で、美咲曰く硬鞭(こうべん)と言う、地球の中国で古い時代に使われていた武器なのだそうだ。現代地球に置ける警棒だそうだ。
「骨折を狙う武器か?」
「頭に打ち込んでみなさいよ。打ち所悪かったら普通に死ぬわよ?」
「でこピン一つ全力で打つだけで大岩が粉砕されるんだから、全力で打ち込めば大抵の生き物は死ぬと思うが?」
「そこはほら、自衛隊用語の『適当』に力を込めてね?」
「まあ、これなら竹刀に近い使い方ができるし俺にとってはありがたいかな」
因みに、この武器を提案したのはエリュシアさんだった。一応、相手の軍の下っ端は割と普通の信徒らしい。・・・・・・上が腐るのはどこも同じだ。
で、できれば普通にしている信徒には生き残って欲しいそうで、美咲に知識を借りながら武器を選定したらしい。
「剣筋とか気にせず殴れるから、人相手にはちょうど良い」
と兵士や騎士は喜んだが、冒険者は、
「これになれたら剣が使えなくなっちまう」
と大変不評だった。
やはり対人兵器。標的が変われば評価も変わる。
さて、魔法の事だが俺と美咲は全属性に対応できるらしい。とは言っても、人一人で扱える属性は最大で四つ。男の場合は、火、金、風(または雷)の基本属性と、光。女の場合は木、土、水の基本属性と闇。男が土の魔法を使うときは一定量の魔力を全属性から出して、風属性を抜いていくのだそうだ。そうすると、土属性として行使できるらしい。
女が火属性を使うときは、木と土属性を放出するだけで良いらしい。どちらも似たような原理だが、感覚が全く違うらしい。
エリュシアさんが言うには、魔法を作るときに六茫星と光と色の三原色を参考にしたとの事だ。
五茫星で良かったのでは?とも思ったが、言わないでおいた。
ともかく、俺達は四日間三属性の出力を操る術をみっちり叩き込まれた。これは中々に難しい。エリュシアさんも、ここで挫折する魔法使い見習いが多いのだそうだ。先日の魔力操作も含めてこの基礎を極めれば極めただけ無駄がこそぎ落とされ、効率が増し、発動までの時間が短縮されるのだそう。
で、それからは思い思いに魔力を操作し、発想力でもって魔力を自分なりに飼い慣らす様にと言われた。
そして一週間。遂にこの領地へ教国軍が現れた。
「ガンジュール様、偵察の報告によりますと、敵の数はおよそ五千。我等の十倍にございます」
「そうか・・・・・・」
「しかし、朗報もございます。密偵の報告によると、隣の領地に達した噂が敵の耳に入り、士気が著しく落ちているとの事」
「後何押しかで瓦解するか?」
「その様に」
「よし。一騎打ちにハジメ君を。名乗りはこちらで考えよう。その後にエリュシア、任せて良いか?」
この世界では戦の始めに一騎打ちをし、その後に軍団戦を行う取り決めがある。大抵はこの一騎打ちで士気高揚を望むためにそこそこの実力者を立てるのだが、今回は元から確実に勝利できるらしい俺が選ばれていた。ついでに、一騎打ちを始めるときに名乗りを上げるのだが、そこで神意は我等に有りと言うことを広く知らしめたいらしい。
「『やあやあ、我こそは唯一神シミュリストルの使徒、戦神、コガラシ・ハジメなり』でいいんじゃない?」
美咲が面白おかしく身振り手振りを交えながら提案すると、それがすんなり通ってしまった。
何故俺が戦神を名乗らなければならないのか。まぁ、作戦の内だから名乗らなければならないが。
戦神というのはこの領内で噂を流してその噂を隣の領内まで広がっていったものだ。曰く、シミュリストル様が戦神、武神をお遣いになりその二人がこの領に味方する兵士、騎士、果ては冒険者達をお鍛えになられている。と言うもの。
俺と美咲が戦神や武神とされ、冒険者達が宿屋の食堂や酒場などで鍛えて貰っていると言い、ここ一週間は屋敷の中庭での訓練ではなく、町の外で大々的に訓練を行っていた。それは、行商人や旅の者、冒険者に目に留まったことだろう。それは酒場や食堂などで語られた言葉の信頼性を高め、別の町へ伝っていったはずだ。それが、間接的にも士気低下と言う結果として現れていると思われる。
それで、駄目押しのこの名乗りという事だ。やらねばならぬ。
「俺が勝利したら、エリュシアさんがシミュリストルに戻って断罪すんだっけ?負けたらどうすんの?」
「一は強い!負けないよ!」
ふんす!と鼻息を荒げながら俺の予防線を否定する美咲。
「負けてもやる事は変わりませんよ。私が、本来の姿に戻ってガンジュール様が夫である事を世界に宣言するのですっ!」
こちらもふんす!と鼻息荒くやる気満々だ。それを聞いたガンジュールさんは困ったような、嬉し恥ずかしいような、複雑な表情を見せる。この二週間で自分の妻を受け入れたようだ。度量の大きな男だ。
俺と美咲の戯れが予想以上に好評だったようだ。
当初はその申し出に困ったものだが、ガンジュールさんや、ヤイガニーさんに「軽くあしらう程度で構わない」と言われたので受けることにした。
一日目、二日目は本当に軽くあしらって終わったのだが、三日目、四日目は一人一人の動きを見極め良い動きになるようにアドバイスをするようになった。付け焼き刃の内はどうにもならないから、今度の戦いで命を散らさないよう願う。
それから、兵士、騎士、冒険者と俺の武器が新しくなった。直剣の刃の部分を丸くして鉄棒にした物で、美咲曰く硬鞭(こうべん)と言う、地球の中国で古い時代に使われていた武器なのだそうだ。現代地球に置ける警棒だそうだ。
「骨折を狙う武器か?」
「頭に打ち込んでみなさいよ。打ち所悪かったら普通に死ぬわよ?」
「でこピン一つ全力で打つだけで大岩が粉砕されるんだから、全力で打ち込めば大抵の生き物は死ぬと思うが?」
「そこはほら、自衛隊用語の『適当』に力を込めてね?」
「まあ、これなら竹刀に近い使い方ができるし俺にとってはありがたいかな」
因みに、この武器を提案したのはエリュシアさんだった。一応、相手の軍の下っ端は割と普通の信徒らしい。・・・・・・上が腐るのはどこも同じだ。
で、できれば普通にしている信徒には生き残って欲しいそうで、美咲に知識を借りながら武器を選定したらしい。
「剣筋とか気にせず殴れるから、人相手にはちょうど良い」
と兵士や騎士は喜んだが、冒険者は、
「これになれたら剣が使えなくなっちまう」
と大変不評だった。
やはり対人兵器。標的が変われば評価も変わる。
さて、魔法の事だが俺と美咲は全属性に対応できるらしい。とは言っても、人一人で扱える属性は最大で四つ。男の場合は、火、金、風(または雷)の基本属性と、光。女の場合は木、土、水の基本属性と闇。男が土の魔法を使うときは一定量の魔力を全属性から出して、風属性を抜いていくのだそうだ。そうすると、土属性として行使できるらしい。
女が火属性を使うときは、木と土属性を放出するだけで良いらしい。どちらも似たような原理だが、感覚が全く違うらしい。
エリュシアさんが言うには、魔法を作るときに六茫星と光と色の三原色を参考にしたとの事だ。
五茫星で良かったのでは?とも思ったが、言わないでおいた。
ともかく、俺達は四日間三属性の出力を操る術をみっちり叩き込まれた。これは中々に難しい。エリュシアさんも、ここで挫折する魔法使い見習いが多いのだそうだ。先日の魔力操作も含めてこの基礎を極めれば極めただけ無駄がこそぎ落とされ、効率が増し、発動までの時間が短縮されるのだそう。
で、それからは思い思いに魔力を操作し、発想力でもって魔力を自分なりに飼い慣らす様にと言われた。
そして一週間。遂にこの領地へ教国軍が現れた。
「ガンジュール様、偵察の報告によりますと、敵の数はおよそ五千。我等の十倍にございます」
「そうか・・・・・・」
「しかし、朗報もございます。密偵の報告によると、隣の領地に達した噂が敵の耳に入り、士気が著しく落ちているとの事」
「後何押しかで瓦解するか?」
「その様に」
「よし。一騎打ちにハジメ君を。名乗りはこちらで考えよう。その後にエリュシア、任せて良いか?」
この世界では戦の始めに一騎打ちをし、その後に軍団戦を行う取り決めがある。大抵はこの一騎打ちで士気高揚を望むためにそこそこの実力者を立てるのだが、今回は元から確実に勝利できるらしい俺が選ばれていた。ついでに、一騎打ちを始めるときに名乗りを上げるのだが、そこで神意は我等に有りと言うことを広く知らしめたいらしい。
「『やあやあ、我こそは唯一神シミュリストルの使徒、戦神、コガラシ・ハジメなり』でいいんじゃない?」
美咲が面白おかしく身振り手振りを交えながら提案すると、それがすんなり通ってしまった。
何故俺が戦神を名乗らなければならないのか。まぁ、作戦の内だから名乗らなければならないが。
戦神というのはこの領内で噂を流してその噂を隣の領内まで広がっていったものだ。曰く、シミュリストル様が戦神、武神をお遣いになりその二人がこの領に味方する兵士、騎士、果ては冒険者達をお鍛えになられている。と言うもの。
俺と美咲が戦神や武神とされ、冒険者達が宿屋の食堂や酒場などで鍛えて貰っていると言い、ここ一週間は屋敷の中庭での訓練ではなく、町の外で大々的に訓練を行っていた。それは、行商人や旅の者、冒険者に目に留まったことだろう。それは酒場や食堂などで語られた言葉の信頼性を高め、別の町へ伝っていったはずだ。それが、間接的にも士気低下と言う結果として現れていると思われる。
それで、駄目押しのこの名乗りという事だ。やらねばならぬ。
「俺が勝利したら、エリュシアさんがシミュリストルに戻って断罪すんだっけ?負けたらどうすんの?」
「一は強い!負けないよ!」
ふんす!と鼻息を荒げながら俺の予防線を否定する美咲。
「負けてもやる事は変わりませんよ。私が、本来の姿に戻ってガンジュール様が夫である事を世界に宣言するのですっ!」
こちらもふんす!と鼻息荒くやる気満々だ。それを聞いたガンジュールさんは困ったような、嬉し恥ずかしいような、複雑な表情を見せる。この二週間で自分の妻を受け入れたようだ。度量の大きな男だ。
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