盲目だった少年は虹色の現(ゆめ)を見る

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第二章

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 あれから女性陣は編み物、縫い物、ついでに家事も美咲に従ってやるようになった。編み物は完成したらミライちゃんはマサツグ君に、美咲は俺に、ホルエスさんはイッカクさんに渡しているようだ。そんな事を続けていれば自ずと編み物のレベルも上がり、もらったセーターなどを身につけて町を散策しているとどこで手に入れた物か聞いてくる者もちらほらと現れるようになった。
 そんなある日、そろそろ冬至に至るので麹菌に犯された稲を自在倉庫から引っ張り出し、麹を一杯に増やそうという事になった。
 まずは大きめの鍋で米を炊き、少しさまして専用に作り替えた部屋で広げ、麹菌に犯された黒い固まりを砕きながら米の上に撒く。
「ここから始めるのは初めてね」
全員で同じ作業をしているから、美咲は少し気負っているのを自覚して気を解すように話しかけてくる。
「俺は今まで美咲任せだったからこの作業が初めてだよ」
「それもそっか。・・・・・・最初はほんのちょっとしか回収できないから気を落とさないようにね」
笑いながら注意してくる美咲に頷きを返し、作業を終えたそれを観察する
 旨く炊ける様になった米の上に、黒い、炭の欠片のような物がちらほらとかかっている。
 取り敢えず、最初の工程はこれで終わり。もう一台作っておいた窯を部屋に持ち込んで火を入れ、乾燥を防ぐために濡らしたシーツを米の上にかける。


 二日が経って、今日は選別作業をするのだそう。
 見ると米一粒にびっしりと綿が着いているモノがちらほらとあり、美咲が言うにはこれが麹の種なのだそう。
 手作業で麹の塊を選別していって、今度は二合ずつ炊いて少しさました米の上に麹の固まりを砕いてまぶし、全体をかき混ぜる。これは麹を増やすための作業だから同じ時間ぐらい、同じ様に放っておくそうだ。
 それを後三回繰り返し、一人一升まで増えたところで今回増やすのは打ち止めになった。来季からは最初の麹病から麹菌を取り出さずにすむように、一握りほど自在倉庫に入れておく。
 そうしたら時魔法の練習で栽培していた大豆を大量に取り出し、鍋で茹でる。隣で底の浅い鍋で小麦も炒っておく。
 茹だる前に小麦が炒り終わるから、大豆はそのままにしておいて小麦を潰し、それに麹を加えておく。これが醤油になるらしい。
 茹であがった大豆を、すりつぶして麹、塩と好く混ぜ合わせ、最終的には練り込んで耳朶くらいの柔らかさにする。後はできあがった物を樽に放り込んで紙を敷き、落とし蓋をしてから適当に石を積み上げれば味噌の仕込みは完了だ。
 醤油の方は大豆に麹を行き渡らせる必要があるようで、今日は大豆を扇で冷まし、麹を大豆と同量ふりかける。後は麹菌を繁殖させていた部屋で二日だ。途中でかき混ぜることも忘れない。
 大豆全部がボロボロになった頃、漸く仕込みに入る。大豆に塩を混ぜ合わせて樽に入れ、そこに塩水を規定量加える。満遍なく塩水が行き渡るようにかき混ぜながら加えるのがミソのようだ。後は出来上がるまで週に一度、上下を入れ替えるようにかき混ぜるだけなのだそうだ。
「今日の作業は終わりっ!ねー、一っお風呂はーいろっ!」
最近は全員が水属性、火属性の魔法を扱えるようになったため、好きな時間に好きなだけお風呂に入れるようになった。そして、俺と美咲、ミライちゃんとマサツグ君は一緒に入るのが多い。
 間違いは、今まで起こっていない。・・・・・・裸見てもなぁ。
 最初の内は恥ずかしがって可愛かったが、俺が裸で興奮しないとわかると露骨に落ち込み、次からは吹っ切れたように二人の風呂を楽しむようになった。
 ミライちゃん達の事はよくわかってない。ヤってはいないようだが、そろそろ性に関して目覚めて居るはずなのだが・・・・・・謎だ。
「あ゛、あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」
「ぶっふっ!おっさんくせえぞ!なんとか・・・・・・ならんか」
お湯につかるときについ声が出てしまったらしい美咲に突っ込み、諦めて俺も力を抜いてお湯につかる。
「あ゛、あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」
「一も変わらないじゃないっ!」
そう言って互いに笑い合う。うん。このやりとりが幸せだ。美咲を抱き締めたくなるが、そうすると互いに裸と言うことを意識してしまい不味いので、肩を引き寄せて唇を奪う。・・・・・・うん。ここまでが限界だな。
「ちゅる。・・・・・・うぅんっ、一っ!素敵っ!」
「うわっ、抱きつくなバカ!」
最近ではこういったスキンシップも珍しくない。互いのギリッギリを攻めて相手から襲わせようと言う魂胆も見え隠れしている。
 誘いには乗らないが、こちらの誘いには乗って貰う。そう言ったある種の駆け引きが、勝負の雰囲気として出来上がってしまい、引くに引けない。まぁ、互いに楽しんでいるからどうという事は無いのだが。
 その雰囲気のおかげで正面から抱き締めてキスが出来なくなった事だけが嘆かわしい。
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