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三十四日目。エルフ族の集落にて
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三十四日目。
今日は門番役を若者に任せて午前中はぶらぶらと手伝いして回った。俺の後ろに親達の手伝いも出来ないくらいの少年少女達がついて回り、さながらカルガモの行進のようになってしまった。俺がやる事に興味があるのか、藤籠を作れば少女達は俺の隣で同じ様に藤籠を作り出し、少年達は藤の蔓で打ち合っていた。
昼休憩の前に準備を始めたら少年少女共手伝うと言い出したので包丁の扱い方を教えながら手伝ってもらった。
奥様方にはその教え方が珍しかったのか後ろで感心したような声を上げたり俺の説明に頷いていたりと好評だったようだ。
後から聞いたら自分で怪我をして覚えるのがここでは一般的だったため、もう少し年が行ってからこう言う手伝いをさせるのが普通なんだとか。
逆に「助かるわぁ」と言う言葉を貰ったのでこれはこれで良かったのだろう。
午後は移動せずに集落の中心で文字に触れて貰おうと思ったのでギルビットさんに木片へ文字を刻み込んで貰った。形式は百人一首やカルタに合わせ、ギルビットさんの一言に合う文字を叩けばお菓子が貰えると言うもの。
お菓子はカーランと言うドングリに似た木の実の中身を砕いて焼いたこの集落のお菓子だ。今回はそれに酸っぱいだけの茎や甘い花びら、甘い樹液などを練り込み、甘いやつ、酸っぱいやつ、甘酸っぱいのといつもの味と幾つか種類を作って一纏めにした。
俺は横で見ていただけだが少年少女達に誘われる形で参戦。惨敗した。
少年少女達のお菓子にかける情熱には負けたよ……。
一回戦が終わる直前に笛が鳴った。少年少女達も状況を理解しているのかお菓子に後ろ髪を引かれつつも「鳴った、鳴った」とあたふたしていたのがいじらしい。
ギルビットさんの先導の元、一列に並び、歩くのに邪魔にならない程度に距離を空けてゆっくり落ち着いて避難所へ避難する姿は真剣そのもので、殿として後ろから見ていた俺には眩しく写った。
避難所に到着すると、中にはそれなりに人が居て子供達が自分の親元にかけていく姿を見て和やかだった。ベルデットさんとギルビットさんが人数を数えているとさらに人が増えたので、今居る人達に五列に整列させ、十行一欠けだったので四十九人と報告すると驚かれた。
人数が合っていたので門番役に報告しに行ったんだが、その途中で掛け算について説明を求められた。
あれ?ギルビットさん確か中央で家庭教師やってませんでしたっけ?
日記を書いている時に気になったから聞いてみたら、かけ算わり算はここではまだ生まれていないとの事。財務管理などはすべて足し算、引き算でやっているそうだ。
今日は門番役を若者に任せて午前中はぶらぶらと手伝いして回った。俺の後ろに親達の手伝いも出来ないくらいの少年少女達がついて回り、さながらカルガモの行進のようになってしまった。俺がやる事に興味があるのか、藤籠を作れば少女達は俺の隣で同じ様に藤籠を作り出し、少年達は藤の蔓で打ち合っていた。
昼休憩の前に準備を始めたら少年少女共手伝うと言い出したので包丁の扱い方を教えながら手伝ってもらった。
奥様方にはその教え方が珍しかったのか後ろで感心したような声を上げたり俺の説明に頷いていたりと好評だったようだ。
後から聞いたら自分で怪我をして覚えるのがここでは一般的だったため、もう少し年が行ってからこう言う手伝いをさせるのが普通なんだとか。
逆に「助かるわぁ」と言う言葉を貰ったのでこれはこれで良かったのだろう。
午後は移動せずに集落の中心で文字に触れて貰おうと思ったのでギルビットさんに木片へ文字を刻み込んで貰った。形式は百人一首やカルタに合わせ、ギルビットさんの一言に合う文字を叩けばお菓子が貰えると言うもの。
お菓子はカーランと言うドングリに似た木の実の中身を砕いて焼いたこの集落のお菓子だ。今回はそれに酸っぱいだけの茎や甘い花びら、甘い樹液などを練り込み、甘いやつ、酸っぱいやつ、甘酸っぱいのといつもの味と幾つか種類を作って一纏めにした。
俺は横で見ていただけだが少年少女達に誘われる形で参戦。惨敗した。
少年少女達のお菓子にかける情熱には負けたよ……。
一回戦が終わる直前に笛が鳴った。少年少女達も状況を理解しているのかお菓子に後ろ髪を引かれつつも「鳴った、鳴った」とあたふたしていたのがいじらしい。
ギルビットさんの先導の元、一列に並び、歩くのに邪魔にならない程度に距離を空けてゆっくり落ち着いて避難所へ避難する姿は真剣そのもので、殿として後ろから見ていた俺には眩しく写った。
避難所に到着すると、中にはそれなりに人が居て子供達が自分の親元にかけていく姿を見て和やかだった。ベルデットさんとギルビットさんが人数を数えているとさらに人が増えたので、今居る人達に五列に整列させ、十行一欠けだったので四十九人と報告すると驚かれた。
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