異世界探訪記

六十一日目。エルフ族の集落にて

六十一日目。
　遠雷が鳴り止まなかった昨晩。道中で散発的に現れる盗賊団。それだけあれば何が起きているのか明白。
　と言うことで、即席で矢払いと迎撃の魔法陣を荷車に施して俺だけで集落へ急行した。

　昼過ぎに到着したんだが、何というか、圧倒された。
　倒れているのはほぼほぼ見覚えのない男共。基本、足をやられていた。その他には両手両腕を潰されているのがほとんどで、稀に股間から血が流れているのを見かけた。
　起きている物は逃げ惑っているのか、周囲を怯えた表情でせわしなく確認するが、時たま落ちてくる雷に真上から襲われて糸の切れた人形の様に崩れ落ちる。
　雷に襲われない奴は後方からエルフが追い、走りながら射かけられる矢に当たって倒れ込んだり、阿呆みたいな軌道で忍び寄るエルフのナイフに足の腱を切られて倒れた。殆どの負傷が足に集中しているのは呆れるばかりだ。賞賛した方が良いのだろうが。

　ナイフを操るのは、よく見ればベルデットさんと、狩り組の数人。
　弓矢を操る先頭にはバヤット君。他は狩り組のみんなで、スマートなナイフ組と比べると随分と荒々しい。ついでに、無表情で動けなくしているのと般若の形相で討ち取っていく者。そんな対比も出来た。

　ギルビットさんを探すと、物見櫓から全体の動向を俯瞰していた。好々爺としていた雰囲気は形なりを潜め、世らば斬ると言うような雰囲気を湛えていた。


　後続の商隊達がこちらに到着する頃には全てが終わっていた。
　合計すると大体この集落の住人程度ーー約五十人の盗賊団がこの集落へ襲いかかって来ていたことがわかった。割と有名な盗賊が含まれていたらしく、兵士達・・・ダッシラーさんと新規兵士の隊長さんであるミネルヴァさんが「もしかしたら、サザリーンが抜けた穴をここを壊滅させることで取り合っているのかも」と話しているのが聞こえて来た。
　そうだとしたら迷惑な話だ。