異世界探訪記

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百三十七日目。ミルボルスにて

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百三十七日目。
 今日はミルボルスの街中を散策しつつギルドに寄ったりギルビットさんに連れられて町長に挨拶したりした。
 町の形が今まで訪れた何処とも違い四角形だったのは、ここが交易街になる前は旅籠の集まりだった事の名残らしい。もう一つの名残としてこの街の四隅は空き地が四角くあり、街道の四辻を中心に発展してきた証左なんだとか。
 北を上にした地図で言えば中心の四辻で左下に冒険者ギルド、はす向かいに商売ギルド。左上に役場兼用の町長宅、そのはす向かいには王族も泊まれる高級宿があり、南北を縦断する街路は貴族向けの為か高級品が多いと感じた。
 大して東西を横断する街路は行き先が村のためか庶民向けの物が多いように見える。

 ギルドでは多数の冒険者でごった返していて、複数のパーティーが職員から何事かを訓示されていて、なんとも物々しい雰囲気だった。何でも、地上から上空へ一筋の光が観測されたため偵察に向かうのだそうだ。
 その時は「ふーん、そうなんだー」と思ってそれ以上考えなかったが、今思い出してみると一昨日のヤツなんじゃないかと不安になってきた。生憎、その時は全くその事に考えが至らなかったからいつ頃、どの方角で観測されたかを聞きそびれてしまった。後でギルビットさんに相談しておこう。
 ギルドの掲示板に張り出されている依頼書を物色してみたが、ストレイフーズの塩漬け依頼程の塩漬け依頼は無いようだった。それでもランゴバルドと肩を並べる強さの鹿、バラックルの討伐依頼が張り出されているのを見かけた。

 昼食は豪華に縦断街道の屋台で焼きたてパンを買い、隣にあったソーセージ焼きの店でパンに乗せて貰ってホットドッグ。その他に、パンにローストビーフのたれを塗って貰って玉葱風味のキャベツ(マロックと言うらしい)を乗せて貰ってからローストビーフの店に戻ってローストビーフの薄切りを三枚載せ、チーズを炙らせて貰ってからそれもオン。でもってもう一度パンを載せて屋台バーガーの出来上がり。旨かったがあっちこっちに出向いたので面倒だった。
 ギルビットさんとメヌエットさんもほぼ同じ具材を求めたが、こちらはローストビーフ抜き。肉の食えない種族も普通に往来するからか、ローストビーフの半額でタレを塗って貰っていた。

 午後は町長さんに挨拶した。今の町長さんはギルビットさんが昔、家庭教師をしたことが有ったそうだ。年の程は俺よりちょっと上かな?と思ったけど半周りも年上だった。
 そこでお茶をしながらギルビットさんと町長さんが互いの近況を教え有って・・・・・・と言うより嬉々として町長さんが饒舌にギルビットさんへ報告していた。雰囲気は祖父好きの孫が話しかけているようにしか見えない。
 その孫、俺より年上なんだよなぁ。

 町長宅を辞したら夕方だったので宿屋に戻って夕食になった。
 今日は王都から珍しい香辛料が入ったとかで昨日の野菜炒めとソテーの味が変わっていた。その香辛料はクミンだと思う。カレー臭がしたからね。
 店長兼料理長の人族、ラムルさんがギルビットさんにこの香辛料の使い道を聞いていたので唐辛子、生姜、カルダモン、コリアンダー、ウコン、ニンニクなどをすり潰して煮込むと旨いと教えておいた。
 唐突に話に割り込んだ俺に胡乱な表情を見せたが、ギルビットさんから「彼はこの旅の料理を一任されている」と言われると「もう一度最初から教えてくれ」
 と真剣な表情でラムルさんがお願いしてきた。

 唐辛子、生姜、カルダモン、コリアンダー、ウコン、ニンニク、月桂樹、後何だったかなぁ。
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