習作

Luckstyle

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 一週間が経った。
 その間にスールはベッドの上だけだが自分からキスをするようになってくれた。
 どうしたのかと言えば、プリムとレイラが変な所へ連れて行った次の日にスールと話し合った。あのキスとおねだりの真意は何だったのか、俺はどう感じたのか。互いの意見を互いが納得するまで訴えあい、最後には笑い合った。
 キスのおねだりはハードルが高すぎるのかもう二度としないと宣言されたが、ベッドの上限定ならスールからキスをしてくれるよう懇願して、拝み倒して了承を勝ち取った。
 ベッドの上限定なのは彼女自身が「自分からキスしに行って返り討ちされるみたいだから」と言う理由で断っていたのを、「ベッドの上ならそんな事わからないだろう」と返したのがきっかけだった。この時の俺は神にも等しい発想力を持っていたと思う。
 そんなこんなで今日は一週間ぶりの休日。明日薬草採集をする事で一致したスールと俺は住み慣れてきた宿の部屋でスールを抱き抱えてベッドに胡座をかき、スールの羞恥心に対する訓練をしている。
 昨日、試しにやったところ半刻もしない内に足腰が立たなくなっていた。これは色々とやばいだろう。
 提案したのは俺ではなくスールだった。漸く、自分の反応がおかしいと気付いたのか、射殺すような眼光で顔を紅潮させ、凄むように提案してきたときなど、何かの聞き間違いかと十度ほど再確認してしまった。話し合った後、平謝りして平伏し、土下座まで持ち出して機嫌はなおしてもらった。

「そろそろ四半刻だが、大丈夫そうか?」
「・・・・・・もう・・・・・・むりぃ~・・・・・・」
「止めるか?」
「・・・・・・やだぁ・・・・・・」
俺の問いかけに弱々しく答えるスールの姿は新鮮で、役得であるのは間違いない。けれどもこんな弱々しい姿は見ていられるモンじゃない。昨日のこともあるのでしばし休憩にしよう。
 一度休憩だと声を出してから、問答無用でスールを横にする。スールはのぼせたように全身くまなく赤く、吐息は全力疾走でもしたように荒い。・・・・・・昨日以上にダメになっていないか?
 見下ろしているのは目に毒なので、スールの隣に横になり片腕を枕にするようスールに差し出す。スールはノロノロとそれに頭を乗せてこちらに向き直った。
「昨日よりダメになっていないか?」
気になったことは聞いてみないとわからない。先週の事を思い出して俺は声が厳しい口調にならないように勤めてスールに聞いた。
 彼女は俺の問いに答えたくないかのようにあらぬ方へと視線を彷徨わせ、答えるべきかと散々喉を詰まらせ、最終的には「・・・・・・キス・・・・・・したくなりました」と、消え入るような小さい声で答えてくれた。
「キス・・・・・・したくて・・・・・・たまらなくなって・・・・・・でも、恥ずかしくて・・・・・・」
そこまでやっとの思いで吐露すると、スールは穴があったら入りたいとでも言うように、両手で顔を覆って丸くなってしまった。
「そうか。今はしたくない?」
スールの体を引き寄せ、問いかける。反応は有っても無くても構わないと思った。そのまま、あやすように背中をポンポンと弱く叩いてやる。
 スールはそのままの体制だが、微かに首を横に振った。それにつられるようにして、更に丸くなる。
 これは、両手を外してやって致せばいいのか?恥ずかしすぎて死ぬとか無いよな?
 俺は、意を決してスールの両手を取り左右に開かせた。スールは驚いたように目を見開くが、すぐにゆるゆると顔をはにかむように綻ばせる。目許など茫とし始め、それだけで彼女がどんな感情を抱いているか判別できた。
「こうやってキスするのは初めてだな」
身体に跨がる形だが彼女の体に触れて暴走するわけにはいかないので体を浮かし、そろそろと頭を寄せながら語りかけると、緊張して声が出せないのかスールは頷くだけだ。互いの吐息がかかり始めると互いに目を伏せる。
「ふちゅ・・・・・・ん・・・・・・」
唇がスールの唇に着くと、ぎゅっと絡み合わせた指に力がこもった。すぐに力は抜けていったが、啄むように重ね合わせると、弱々しい力でぷるぷると震える。
 彼女の唇の感触に夢中になり、長く押しつけていると、トントンと俺の歯をノックされる感触があった。
「あ・・・・・・んにゅう・・・・・・ふちゅ」
おずおずと差し出されるスールの舌を俺の舌で招き入れ、俺の唾液で彼女の舌を染め上げるように絡ませてやり、されるがままになって固まってしまっった彼女の舌を大切に、大切にもてなす。
 舌と舌、唇と唇の触れ合いだけではもどかしくなって手をほどき、ベッドに横になってスールを両手でかき抱いた。彼女はされるがまま。いや、彼女も両手を使い俺を抱きしめてくれた。
 カッと体が熱くなり本能が雄叫びを上げ始めるが、それを組み敷き、彼女の舌を俺の舌で磨き始める。
「ふあ・・・・・・ん・・・・・・んんぅ・・・・・・ああっ・・・・・・」
そこにどんな刺激を受けたのか、彼女の背が僅かに反れた。焦ったように彼女の舌が引っ込むが、代わりに今度は俺の舌が彼女の口にお邪魔する。
「ちゅうううう」
以前お邪魔したときは隅っこでじっとしていた舌を探索しようと蠢かせると、スールは俺の舌に吸い付いてきた。股間にダイレクトヒットするその感覚で理性が半分くらい吹き飛ばされたが、ギリギリ耐えられた。
「ぷはっ」
引きはがすように体を離す。これ以上致していたら間違いが起こる。そう思ったからだが、スールからしたら少し物足りないようだ。
「これ以上やったら理性が保てそうになかった。すまん」
スールが何か言う前に俺が謝った。その言葉を聞いてディープキスの件を思い出したのか、スールはかくかくと頷き、全身を弛緩させた。
「・・・・・・すごく、気持ちよかった」
夢でも語るように、スールは今胸の内にある思いが溢れた様な口振りで今回の感想を述べてくれた。
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