凡骨の意地情報局

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ハリス、幼女を拾う

妄言

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あれから約一週間。その間に、国中で雲を貫く光の柱が観測された。
 翌々日には元凶だろうアシュリーが、礼金と報奨金をたんまりと置いていった。
「さて。これ、どうするかな?」
現金を丁寧、丁重に仕舞い込み、金額がかかれた紙を見つめながらぼやく。
 そんな所に、サリーがやってきて
「ジェフリー・ボートマンがやってきましたがいかが致しましょうか?」
と言い出した。
「会うしかないか……。
 ……ん?男爵当主と子爵令息の立場ってどっちが上だったかな?」
取り敢えず子爵令息だしなぁ。
 と言う消極的な考えでハリスは困ったように溜息を付くが、そう言えば貴族の順位など知らないなと思い、サリーに聞き返す。
「公的には男爵当主が上です。
 その直下が公爵家嫡男、令息、侯爵家嫡男と続きます」
「侯爵家の後見人の立場は?」
「肩書きが有るだけです。
 身分は本人の身分に準じます。
 ……ですが、これは公的な物で実際には親の立場が適用されますね。
 嫡男や令息が親に相談するので」
「……取り敢えず会っとこうか。面白いのがれそうだ」
サリーの解説を聞いたハリスは歳柄もなくワクワクとした雰囲気で机の引き出しを引っ張り出してガサゴソと準備を始める。
「では呼んで参ります」
サリーはその様子を横目に見つつ、退室の礼を取ってからボートマンを呼びに行った。

「これは反逆罪だ!」
入って来るなりボートマン子爵令息のジェフリーはミリーがここに拉致されているのは調べがついている。
 賠償金三百枚と共にミリーを返せとのたまってきた。
 そこでミリーと言う人物は知らないし、知らない人物は拉致のしようもない。
 そう言うことで賠償金も支払わないと言うと、そんな叫び声がジェフリーの口から発せられた。
「反逆罪?何の事です?
 先ほども言いましたがミリーと言う人物は知りませんし、賠償金も拉致をしていない人物に対して支払う必要はないですよね?」
 とぼけて見せたが、ジェフリーはいきり立って話を聞かず、目の前にある机を蹴り飛ばした。
「私はアステヤック侯爵だぞ!
 男爵風情の貴様は私の言う事に従ってミリーと賠償金を支払えばいいのだ!
 潰されたいのか!?」
「えっと、勉強不足で申し訳有りません。
 アステヤック侯爵家は代々女性貴族で、現在当主はミスリー・アステヤック嬢と伺っておりますが?」
「ミリーは現在五才だ。
 勉強不足で何も出来ん。
 よって父親で後見人である私が現侯爵だ!」
なんだその超理論。
 と、ハリスは思うが言っても仕方がないだろうと無言で流す。
 と、ここでドアが軽くノックされた。
 位置の低さからリリーだと察するが、ハリスはタツヤに言ってリリーを離すように言う。
 多少話しただけだがハリスが嫌悪するような人物であったため、可愛いリリーは離しておくに限る。
 そんな事を考えていたハリスだったが、タツヤがドアを開けるとその横をすり抜けてリリーが入ってきてしまった。
「ミリー!ミリーじゃないか!やはり拉致して監禁していたな!」
『止めて!ハリスはリリーを助けてくれ居たの!』
そんな文言を見せながら体を張ってジェフリーを抑えようとするリリーだったが、それを払いのけて打ち倒したジェフリーは
「こんな年端もいかぬ少女に洗脳まで施しおって!見ていろ!すぐにでも裁判に掛けて極刑にしてくれる!」
と言い放ち、リリーの腕を掴み上げて連れ去るように去っていった。

「……サリー、居るか?」
「此方に」
静かになった執務室で、感情を押さえ込むように一服を入れたハリスは幾分か冷静になった頭を使い、サリーを呼び出す。
「アステム殿に全て任せていた情報収集に手を貸せ。
 情報収集が完了次第、相手より先に裁判を起こす」
彼の言葉に有る感情に背筋を凍らせながら、サリーは此方を見ずに指示を出すハリスに礼を取ってから部屋を出ていく。
「タツヤ、この記憶玉を国王陛下に見せに行ってきてくれ。
 あの国王なら奴の横暴に黙っていられない筈だ」
「わ、わかりました」
普段は優しいおじさんの雰囲気を振り撒くハリスの怒れる姿に、タツヤは慌ててハリスから記憶玉を受け取り逃げるように退室していく。
 それを横で見ていたハリスは、溜息を付いてぐしゃぐしゃと頭をかいた。
「頭に血が上るとやっぱり昔の癖がでるみたいだな。
 後で謝ろう」
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