『冒険者ギルドへようこそ(最強剣士と娘巫女) ~全ての謎を解き明かし、全てを救う物語~』

此木、大(しばいぬ)

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第2章 環刻館の後継者(かんごくかんのこうけいしゃ)

第96話 待ち伏せ

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宿の窓から見える空が明るくなってきている。
「もうすぐ夜が明けるわ…」
フミナがそわそわし始めた。
そろそろダラが帰って来る頃合いだった。
「もしダラが帰って来ない場合、考えられるのは」
ミカとフミナの前で推理を始める。
「1、何かの理由で身動きが出来ない」
そう言って親指を立てて見せる。
「2、味方勢力に捕まっている」
人差し指を立てて二人の目を見る。
「そしてあまり考えたくないけど、敵勢力に捕まっている」
中指を立てて三つ目の可能性を口にした。

窓から射し込む朝日が俺達を照らし出す。
「颯竢様! ダラ様を助けに行きましょう!」
フミナが鼻息荒くそう言った。
「もしダラが敵勢力に捕まっている場合、人と戦う事になる」
二人に殺意のある視線を投げ掛けた。
もしこれで怯むようなら実際に敵と相対した時、使い物にならないだろう。
「最悪、殺し合いになるけど、君達にその覚悟はあるかな?」
「私は一度死んだと思っています、今更怖い物はありません」
フミナはしっかりと俺の目を見返してハッキリと答えた。
話し方も普段とは違う。
「私達には颯竢様とダラ様以外に帰る場所も守るべきものもありません、だから、何も迷いはありません」
ミカもそう断言した。

はぁ。
俺はこっそりため息をついた。
ダラの方針で剣の練習もさせなかったのは間違いだったと感じていた。
「この事件が解決したら剣の扱いを教えてあげるよ」
「颯竢様?」
ミカは俺の言わんとする所を図りかねて困惑している様だ。
「だから今回は剣で戦おうなんて考えたら駄目だよ」
二人はようやく理解した様子だった。
「颯竢様! 行こ!」
フミナはそう言って頷いた。

まだ早朝だが、行き交う人は多い。
宿からベルファム邸に向かう途中、昨日フミナが拐われた市場を通った。
「何か思い出せそう?」
ミカがフミナに尋ねるが
「ピエロのお面を被った商人に声を掛けられたくらいかなぁ?」
フミナはキョロキョロと周りを見回したが、それ以外は思い出せないようだった。
「ベルファム邸に急ごう」
俺の声にミカとフミナが頷いた。

ベルファム邸の前に来ると、ガレージの扉はダラが蹴破った状態のままだった。
「ひどい… 誰がこんな事を…」
フミナは昨日気付かなかったのだろう。
ミカが苦笑いしているが、ダラの仕業だと教える気は無いらしい。
「ここからは俺の後ろを歩くようにして」
もし戦闘になった時、下手なところに立たれると俺の振った剣で傷付ける恐れもあるのだ。
「分かりました」
ミカがそう答え、二人で頷いた。

正面玄関の扉は閉まっていた。
「開けるよ」
振り向くと、二人は真剣な表情で頷いた。
「ギイイイイイイイイ」
こんなに軋んだ音を立てたっけ?
そう思う程大きな音を立てて扉が開いた。
音に敏感になっているのかも知れない。
館の中は薄暗く、どうなっているのかよく見えない。
「光よ!」
館の中に光る球体が現れ、ホールを照らし出した。
振り向くとミカが微笑んでいる。
「基本です」
そう言うミカにリンの面影が重なる。

「行くよ!」
二人にだけ聞こえる程度の声量で呟くと、ホールに飛び込んだ。
何かが待ち構えているとしたらここだろうと予測はしていた。
だからそれ程の驚きは無かった。
二階へと続く階段を埋め尽くす程のスケルトンが待ち構えていたとしても。

「中に入ったら扉と鍵を閉めて、そこで待機してて」
ミカとフミナに指示を出してバスタードソードを抜いた。
「でもスケルトンがたくさんいるよ?」
フミナが俺の指示を聞いて驚いたような声を上げるが、ミカは扉と鍵を閉めた。
「大丈夫、今日は手加減する気分じゃないから」

スケルトン達が右手に持つ武器はシミターだった。
刃が薄く、しなやかな曲刀で、肉を切る事に特化した剣と言える。
肉を持たないスケルトンにはお似合いだった。
左手にはスモールシールドを持っている。
ざっと見たところスケルトンの数は百体程度だろうか。
俺達の姿を認めると一斉に階段を降り始めた。
「颯竢様、支援魔法は?」
ミカが尋ねてくるが、
「俺だけ狙われる方が戦いやすいから出来るだけ何もしないで」

ミカとフミナから離れること十歩。
戦闘に巻き込まず、万一彼女達が狙われても充分に助けられる距離感だ。
「行くぞ!」
そう呟くと地面を蹴り、スケルトンの中に飛び込んだ。
スケルトンたちは一斉に剣を振り上げる。
こいつらのスペックに個体差は無い。
同じタイミングで攻撃態勢に入れば同じタイミングで攻撃が来る。
スケルトンの攻撃が俺に向かって振り下ろされるのは視えているが、無視してスケルトン達の頭を狙い横切りを放つ。
特に何の事も無い横薙ぎ一閃だが、一瞬で8体のスケルトンが頭蓋骨を失い床に転がった。

軽く飛び退き、一旦間合いを取る。
ここからは相手のタイミングがバラバラになる為、正攻法での戦いになる。
スケルトンの攻撃は正確だが俺の目から見れば遅い。
シミターによる攻撃は体術で回避し斬撃を叩き込んで行く。
時々来るシールドによる体当たりは剣技、雲耀でシールドごと叩き割って行く。

戦えば戦う程に相手の攻撃が視えるようになる。
今やスケルトンの攻撃は俺に取って何の脅威でも無かった。
スケルトンの振り下ろすシミターを体の重心をずらして回避し、腕の骨ごと叩き折って頭蓋骨を砕く。
体術、旋風で背後に回り込み背骨を粉砕する。
背後からの水平斬りに疾風で突進し、懐に飛び込んで剣の柄で頭蓋骨を叩き割る。

ミカとフミナは背後にいる。
残り数体のスケルトンは全て俺の正面にいる。
「行け! 剣技、真田!」
切っ先が音速を超え、破裂音と共にスケルトン達が砕け散った。

真空刃の範囲から外れていた最後の一体に疾風で間合いを詰める。
スケルトンがシミターを振り上げるスピードより速く俺の剣がスケルトンを斜め下から斬り上げた。
そのままの勢いでバスタードソードを背中に背負った鞘に納める。

「颯竢様… 凄すぎます…」
ミカが呆気にとられた様に呟く。
「す、凄い… 本当に一人で倒しちゃった…」
フミナも唖然としていた。

「やれやれ、相変わらずとんでも無い奴だな、こっちは正攻法でコソコソ隠れてやっていたのに、真正面から殴り込むとは邪道にも程があるぜ」
「その声は、ダラ様!」
フミナが叫んだ。
声のする方へと振り向くと、階段の下の陰からダラが出てきた。
「「ヒール!」」
ミカとフミナが回復魔法をかけると、ダラの傷がふさがった。
ダラが怪我をしていると気が付いた時にはもう完全に回復していた。
それは凄いセンスだと感じた。
「まぁ、結果として助かったがな、颯竢、フミナ、ミカ、サンキュな」
ダラはニヤリと笑った。
「無事そうで何よりだよ」
ダラが無事なのは気配で分かっていた。
「いや、少しミスって身動きが取れなくなってな、正直、安全なところに逃げろなんてメモ書くんじゃなかったと後悔していたところだ」
ダラはきまりが悪そうに言った。
「その様子だとまだ用事が残っているみたいだね」
「まぁな」
ダラは俺の言葉に頷いた。
振り返るとミカとフミナが微妙な表情をしている。
「言いたい事はあるだろうけど、この場を離れるまで少し待ってて貰えるかな?」
ミカがコクリと頷くと、フミナも少し遅れて頷いた。

ダラは2階へと駆け上がり、吹き抜け廊下にしゃがみこんだ。
後に続く俺達は、ダラの足元にボロ切れの塊が落ちているのを見つけた。
『それ』が何であるか理解するのに結構な時間を要した。
「ヒール!」
フミナが魔法をかけるが効果は無い。
「駄目か… 間に合わなかったんだ…」
ダラは悔しそうに言った。
生命力を失った者は回復魔法では癒せない。

「まさか… ルーヴァル?」
何故ルーヴァルがこんな事に?
「すまない、助けてやれなかった… せめて約束だけでも果たそう」
ダラはルーヴァルの前で俯いた姿勢のまま、彼の瞼を静かに閉じさせた。
「一体、何があったのですか?」
ミカが尋ねる。
「何があったか、というのは適切ではない、何故なら」

ダラがそこまで言うと、正面玄関に何かを叩きつける様な大きな衝撃音が聞こえてきた。
「扉を破壊しようとしている?」
ドンドンと何度も何かを叩きつける音がする扉を眺めていると、ミカの手が俺の袖を掴んで来た。
「長くはもたないぞ! 早くこっちに来るんだ!」
ダラは奥へ進むと螺旋階段を登る。
ミカとフミナを先に行かせ、俺も階段を駆け上がる。
ダラが飛び込んだのはコモノが消えた部屋だった。
「この鏡だけは別物でな、実は違う所に通じている。俺が先に入る、次にミカとフミナ、最後に颯竢の順番で入ってくれ」
ダラは俺達に手早く指示をした。
「分かりました、扉の鍵は締めますか?」
ミカがダラに尋ねる。
その時、正面玄関の扉が破壊された音が聞こえて来た。
「本当に時間は無さそうだね」
俺は冷や汗をかいていた。
「鍵は締めなくても大丈夫だ、行くぞ!」
そう言うとダラは鏡に飛び込んで行った。
鏡面は水の跳ねない水面の様だった。

フミナとミカもダラに続く。
館の中に大勢の足音が響いて来た。
かなり大人数で押しかけて来たようだ。
「上の階も探せ!」
男の大きな声が聞こえると、階段を駆け上がる足音が聞こえて来た。
そこまで聞き届けて、俺も鏡に飛び込んだ。
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