皇太子殿下と婚約すると思いきや、近衛騎士を任されました。

じゅうごにち

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20.お出かけ

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仮面祭が終わってもなお賑やかな町並み。晩秋の頃、日に日に寒さが感じられる。厚着の町人も目にするようになった。

「どこに行くつもりだ?」

ゼラの側についてくる殿下。殿下に懇願し、ついに外出の許可を得たのだ。
ここまで長かった。意識を取り戻してから二週間が経っても、殿下は何かと理由を付けてゼラを外出させたがらなかったからだ。

「洋服店をいくつかまわろうかと。あと、この辺りで昼食もとりたいです!」
「そうか、案内してやろう。」

殿下がゼラの手を引いて歩きだした。最近、妙に距離が近いように感じる。

「あの、殿下。この手は?」
「手がどうかしたか?」
「あ、いえ……。何でもないです。」
「こうでもしていないと、お前はすぐどこかに行くだろう。また変なトラブルに巻き込まれたら、困るのは俺だ。」
「そ、そうですよね!」

包みこむように握られた手は、ゼラのものより大きくて、頼もしかった。ゼラはなんだか嬉しくなって、その手をぎゅっと握り返す。
すると、殿下の耳が赤くなった。

「殿下、お熱でもありますか……?」

殿下のお顔を覗き込む。身長差のせいで、自然と下から目線になった。すぐに目をそらされる。

「だ、大丈夫だ。それより行くぞ!」

怒らせてしまっただろうか。殿下は大股で歩いていき、ゼラはそれに引っ張られる形になった。
大通りを進んでいくと、高級な宝飾品や鞄を取り扱っている店が多くなってくる。出入りしている人も、豪華なドレスを着ている淑女や紳士の方々がほとんど。

「殿下、私が行きたい店は……。」

こんな高級な店とかじゃない。既製品が並んでいる店で、よかったのに。
いや、もしかして、この区画は通りすぎるだけかもしれない。きっとこの先に普通のお店が……。
ところが殿下は、迷いなくその区画の仕立屋へ入っていった。

「いらっしゃいませ、ヴァイス殿下。本日は何用のお洋服を?」
店員さんは、殿下のことを知っているようだった。行きつけのお店、とかなのだろうか。
「この子の洋服を仕立ててくれ。金はいくらかかってもかまわない。」
「かしこまりました。」

ゼラは慌てて、殿下に言う。
「こ、こんな高そうなお店、私払えませんよっ!」
「金なら俺が払う。お前は気にせず、採寸してこい。」
「そ、そんな……。」

笑顔の店員さんが、有無を言わさぬ様子でゼラを連行していく。

「お嬢様はお綺麗ですから、わたくしとしてもやりがいがありますよ!」
店員さんは完全にやる気になっている。逃れられないまま、姿見の前に立たされた。全身を巻き尺で測られていると、店員さんが言った。

「とっても細い体つきをしていらっしゃいますね。それでいながら、きちんと筋肉も付いています。何か運動をされているのですか?」
「はい、実は殿下つきの近衛兵をやっていまして。」
「まあ! だから殿下とご一緒にいらしたんですね!」

身体を鍛えていて良かった、と思う。お腹がぽよぽよだったら、きっと恥ずかしかっただろう。

「ところで、ヴァイス殿下とはどういったご関係で?」
「主人ですが……?」
「またまた~!」

店員さんは何故か嬉しそうにしている。

「ヴァイス殿下、今まで女性を連れて店に着たことはなかったのですよ。だからお嬢様のこと、お大事になさっているな、と思いまして!」
「そ、そうですか?」

やはり、主人と近衛兵の関係で口づけをしたり、手を繋いだりするのはおかしなことなのだろうか。

店員さんの態度が変わった。思ったことが、口にでていたらしい。慌てて手で口元を押さえるが、もう遅い。

「それはもう、ヴァイス殿下は、お嬢様に恋をしてらっしゃるということですよ。」
「こい……?」

「こい」と言われて、思わず池の中を泳いでいるあの魚を想像してしまう。違う、絶対にその「こい」じゃない。

「いやいやいやいや、違いますって! まさか、そんなこと!」

姿見に真っ赤になった自分の顔が映っている。それに気がついたゼラは手で顔を覆った。店員さんの微笑ましいものを見るような目線が、痛い。

「おい、まだか?」
外で殿下のお声が聞こえて、返事を返す。
「はーい! もうすぐいきます!」



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