皇太子殿下と婚約すると思いきや、近衛騎士を任されました。

じゅうごにち

文字の大きさ
23 / 31

21.ハプニングですっ!

しおりを挟む
採寸の後は店員さんがデザイン案を紙に描き、ゼラたちに見せてくれた。
高級品である布地が惜しみなく使われるデザイン。豪華だけれど、派手ではなく気品がある。
ゼラが色々目移りし、迷っていると。

「全て買おう。いつ頃出来上がる?」
殿下のお言葉に、ゼラは目を見張った。この、セレブめ。
「あ、あの……従業員全員で取りかかっても、三ヶ月ほどかかりますが?」
店員さんが困っている。

「そんなに沢山もらっても、着れませんっ! ひとつあれば十分です!」

もともとの服と合わせれば、生活するには問題ない数になる。
このまま迷っていると面倒なことになりそうなので、思いきって一つ選んでしまおう。

「これで……、お願いします。」

水色のレース生地のデザイン案が気に入ったので、それを頼む。
「本当にそれだけでいいのか?」
殿下が不思議そうな顔をしたまま、店員さんにお金の入った袋を渡している。ゼラは半ば諦めの気持ちで、それを見守っていた。

「ありがとうございました。」
頭を下げ、お礼を言いながら店を出る。殿下が外で待っていて、ゼラたちは並んで歩きだした。

「実は姉が結婚式を開くので、一旦実家に帰ろうと思っているんです。」
「ロッターレの屋敷でか?」
「はい、もちろん。」
「ならば、俺も行こう。」

ゼラは足を止めた。
「何故ですか?」
「今度ロッターレ男爵と、土地の運用で話をする予定だからだ。それに……、男爵に話しておきたいことが他にもあるしな。」

ゼラは了承した。手紙で事前に知らせておけば、迷惑になることもないだろう。

「ところで、昼食の場所はどこにするか、決めているのか?」
「はい、新しく開業したスィーツのお店ですっ!」
「甘味が昼食……? 斬新だな。」
「最近若い女の子の間で人気なんですよ!」

下調べはしてある。ゼラはうきうきと胸を高鳴らせて、殿下のお側を歩いた。この関係性は変わらない。殿下をお守りするのが、ゼラの役目だということは。
馬の荒々しい足音が聞こえてきた。前方を見ると、馬車がこちらに向かってきている。馬車に近いのは殿下の方。ぶつかってしまったら、危険だ。

「殿下、こちらへ!」

急いで殿下を引き寄せ、道の端へ寄った。御者が一言謝り、目の前を通りすぎていく。
土埃が収まって、ゼラは息をつく。
そして気がついた。殿下と密着してしまっていることに。

「す、すみません!」

身体を離す。
殿下の真紅の瞳は、いつだって綺麗だ。その目を見つめていると、手が伸びてきてゼラの頭に触れられる。

「助かったぞ。ありがとな。」
固い表情がほぐれ、笑みを浮かべた殿下。
「……っ!?」

不意打ちに耐えかねて、ゆでダコのように真っ赤になった顔を見せないように、コクコクと頷いた。
殿下はずるい。常に一枚上手で、こちらばかり動揺しているのではないか、と思わされる。
果たしてこんなに素敵な殿下と、釣り合う自分になれるだろうか。
ゼラは不安でしかたがなかった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

新婚初夜に『白い結婚にしてほしい』と言われたので論理的に詰めたら夫が泣きました

ささい
恋愛
「愛人がいるから、白い結婚にしてほしい」 政略結婚の初夜にそう告げた夫ルーファス。 妻カレンの反応は—— 「それ、契約不履行ですよね?」 「あなたの感情論、論理的に破綻してますよ?」 泣き落としは通じない。 そして初夜の翌朝、夫は泣いていた。 逃げ道は全部塞がれ、気づけば毎日論破されていた。 これは、論破され続けた夫がなぜか幸せになる話。

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?

秋月一花
恋愛
 本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。  ……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。  彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?  もう我慢の限界というものです。 「離婚してください」 「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」  白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?  あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。 ※カクヨム様にも投稿しています。

処理中です...