皇太子殿下と婚約すると思いきや、近衛騎士を任されました。

じゅうごにち

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25.夜の帳に ウイッチside

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「……で、それからどうなったんだよ?」
店主が興味津々と言った様子で問うてくる。
ジュースに入った氷が溶け、グラスの周りに水溜まりができている。どうやら、思ったよりも昔話に熱中していたらしい。
「大したことはないよ。飛ばされた先は城下町の小さな宿屋で、宿泊客の一人が転移しようとしていたらしい。」

「そこで嬢ちゃんと出会ったのか?」

「うん。気絶した子供も一緒に巻き込まれていたから、ちょっと面倒なことになってね。周りの人が兵を呼びそうになったところをミレニアが引き留めて、丸くおさめてくれたんだ。」

店主は店じまいの支度をしつつ、話に耳を傾けている。

「っていうことはつまり、嬢ちゃんに恩を売られたっていうわけだな。」

「そう。僕は売られた恩はすぐ返す主義だったから、田舎からやって来たばかりで右も左も分からなかった彼女に、ここでの暮らしかたを教えたんだ。」

「なるほどな。」

「でもまあ、復讐のことについては、とっても怒られちゃったよ。それからも定期的に、裏金稼ぎに悪い仕事をしてたから、その度にミレニアとは衝突してたね。」

「じゃあ、いつ頃好きになったんだ?」

好き、という単語を聞いて、ピクリと身動ぎした。人に言われて、想いを改めて実感した気がする。

「わ、わからない……。気がついたらミレニアのことばかり考えるようになってた。僕らしくもないと思って、好きになったことをなかなか認められなくて……。」

顔に熱が集まるのを感じた。誤魔化すように、グラスに残ったジュースを飲み干す。店主はそんなウィッチをからかう様子もなく、じっと耳を傾けてくれている。

「彼女はずっと僕の近くにいたから、これからもそうだろうって勝手に思ってたんだ。……けど、馬鹿だった。あの子は簡単に離れていった。もう全てが遅いんだ、気持ちを伝えなかったこと、何度後悔したことか……。」

不意に店主がパンッと手を打ち鳴らした。ウィッチはぎょっとして店主の表情をまじまじと見た。店主はニヤリと口角を上げる。

「お前の気持ちが定まってるっていうんなら、するべきことは単純明快だ。いいか、物事を始めるのに遅いなんていうことはない。まだ間に合う。」

ウィッチは顔をあげた。店主が何を言おうとしているか分かって、隣においてある三角帽子を掴む。

「天才魔術師様が、こんな所で油を売ってる場合じゃないだろ。さっさと行ってこい!」

店主の声援を背に、ウイッチは店を飛び出した。
その後ろ姿にもう迷いはなかった。

ミレニアの居場所に検討はついている。彼女がこの国を出た日、海岸に部下の乗った漁船を用意し、偶然を装ってミレニアに声をかけるよう指示した。上手くいっていれば、今ごろ海を挟んだ島にたどり着いているはず。

ウイッチは素早く思考を巡らせた。こういう策略はウィッチの得意分野だ。

まだ、間に合う。……その言葉を信じて。

彼の黒い装束は、あっという間に闇に溶け込んでいった。
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