皇太子殿下と婚約すると思いきや、近衛騎士を任されました。

じゅうごにち

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28.一安心ですね!

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目を覚ますと、あたりは静かだった。寒風が吹きすさんでいた昨晩が嘘のようだ。
ゼラは期待を胸に、カーテンを開く。

「おはようございます、殿下! 朗報ですよ、吹雪はもうやんだようです!」

窓を覗き込みはしゃぐゼラを、殿下は半眼で見つめた。そして唇を薄く開く。あくびを噛み殺しているようだ。

「殿下、よくお眠りになれなかったご様子ですね? もしかして、私の寝相が悪かったとか!」
「あ、いや……」

殿下が言いづらそうにしている。きっと寝相が悪いゼラに気を遣ってくださっているのだ。

「寝相は問題なかった。お前は熟睡していたな。はぁ、これでは俺ばかりが……。」
その時、窓の向こうの銀世界に小さな黒い点が見えた。その点は徐々に大きくなり、姿を表したのは。

「殿下、ご覧になってください! 窓の外から馬車が向かって来ています。あれはおそらくレンゾさん達の乗っている馬車でしょう!」

「そうだな。彼らが無事で何よりだ。俺たちも支度を始めるぞ」

荷物を整え、着替えは順番に部屋に入って済ませよう。
レンゾさん達を外で待たせているのだ、もたもたしていては申し訳ない。
その思いは殿下も同じだったのか、ゼラの後に着替えられた殿下は、すぐに部屋から出てこられた。

「では、行くぞ。」
「かしこまりました。」

殿下は常に油断なくお美しい。そう思い、笑みを浮かべていたゼラの表情が不意に固まる。

「…少し、失礼いたします」

ゼラは一歩近づいて、殿下の後ろ髪に触れた。それは鳥の羽毛のように柔らかく、ずっと触っていたくなる。
ゼラの手は名残惜しげに、余韻をもって離れた。

「なんだ?」
「寝癖が付いていらしたので……。ふふ、皇太子様の御髪にも寝癖は付くのですね」

ゼラはなんだか微笑ましい気持ちになって、緩む口元を抑える。

「……当たり前だろう」

殿下は冷たく言い放つと、そっぽを向かれてしまった。

「すみません、出過ぎた真似を」
「いや、構わない。ただ今度から、俺に近づく時には一言伝えてからにしてくれ。そうでないと……っ、心臓に悪い」

「心臓にご病気が……!?」
「違う。何故そうなるんだ。まあ、お前のそういった所も、可愛らしいのだがな」

今、殿下は何とおっしゃったのか。可愛らしい? ゴリラ一族の自分が? いや、自分はゴリラでは無いけれども。

ゴリラ。可愛らしい。
2つの言葉が頭の中をぐるぐると駆け巡る。
待ってください混乱してきました、ゼラは思わずそう口走りそうになった。

「レンゾも外で待っていることだろう。移動しながら教えてくれ、この先の経路は?」
「っはい! 今お伝えします!」

しっかりしなくては、自分は皇太子殿下の近衛騎士なのだから。
何故か、心の中でそう言い聞かせずにはいられなかった。

殿下にこの先の経路をお伝えする。この先はもう、山を下り平野に出ればロッターレ領だと申し上げた。
雪が積もっていたとしても、浅いところを選んで進めば大事には至らない。
ひとまず、一安心といったところか。

1階ロビーでチェックアウトを済ませたら、いよいよ出発だ。

「ああ、殿下! ご無事でしたか!」
「ゼラさーん、心配しましたヨ」

レンゾさん達は昨夜、一番麓に近い宿に泊まれたらしい。
あとから宿へ向かったゼラ達はその宿も含め、幾つかの宿で満室だと言われてほぼ山頂にあるこの宿に泊まった。

「しかしどうして、この宿にいると分かったんだ?」

「吹雪の時に旅人が困らないよう、宿同士で連絡を取り合うことになっていたのです。
その連絡網で、この宿に殿下とゼラ様が泊まられただろう、ということを把握したのでございます」

「なるほど、冬季のロッターレでは、よく吹雪や雪崩が起きますからね」

ゼラは頷く。これで謎が解けたな。
それから、レンゾさんや馬車の御者にも道順を説明した。
問題なく辿り着けること、ロッターレの地にはあたたかい部屋や食事が用意されていることを話すと、皆安心した表情を見せたのだった。





今日は広い範囲で雪が降りますね! 通勤、通学の際には足元にお気を付けください。
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