14 / 44
メサイア本部へ
しおりを挟む
夜、部屋を抜け出す。
そんな些細なことが、本当に冒険だと信じていた頃。
二人は怪しく寝静まった町中で、不思議な男に会った。
あれから、八年。
気が付けば二人は十五才になっていた。
ずっと、待ち続けていた。兄のヨナタンからの知らせを。
だが、便りの一つもないどころか、ヨナタンはその後一度も帰郷しなかった。
そして。銀色の髪をした不思議な男にも、あの後再び会うことは無かった。
分からないことばかりだった。
あの夜の出来事が、夢だったのか現だったのか分からない。
兄が、帰郷しないどころか便りの一つもない。その理由も分からない。
ヨナタンは負傷した訳でもなければ、命を落とした訳でもない。それは分かる。
メサイアからそんな連絡は無かった。メンバーに何かあれば、必ず組織は家族に報告するから間違いはない。
「兄ちゃん、どうしてるかな?」
アベルは、目の前に聳える門を見上げて呟くように言った。
ここは、かつてこの国の首都があった場所。そこに聳え立つのはメサイアの本部だ。
ついに、ここまで来た。
カインとアベルは、握る拳に力が籠った。
ヨナタンについて何度問い合わせても、故郷にあるメサイアの支部からは納得できるような回答はなかった。
『負傷したと言う知らせはない』
だとか
『討伐隊に編成されている』(そんな情報は今さらだ)
だとか。同じような回答ばかりで、ちゃんと確認してくれているのか疑わしいものだった。
両親も心配している。自分たちだってだ。
いてもたってもいられなくなった二人は、十五才になった日に、メサイアの本部を目指した。渋る両親をどうにか説得し、故郷を旅立ったのだ。
銀の髪の男から赤い果実を貰わなければメサイアの一員にはなれないが、その施設の門戸は一般にも開かれている。
怪物の出現などの情報共有はその理由の一つ。
そしてもう一つ。メサイアにはあらゆる地域のあらゆる情報が集まる。シンクタンクのようなものだ。そして、危険な情報でない限りは一般人も触れることが許されている。図書館と学校の中間のような施設としても機能していた。
カインとアベルは、ヨナタンについて最新かつ詳細な情報を聞き出すためにこの地に立った。
「討伐隊のヨナタンについて教えて下さい。僕たち、ヨナタンの弟です。」
一般用の受付に、カインはそう申し出た。
「討伐隊のヨナタン、出身はどちらですか? あと、あなた方のお名前をお伺いしても?」
もともと、一般人はここにメサイアの持つ情報を学ぶために来るのだ。人探しに来るのではない。
そのためカインの問いに、受付の担当者は一瞬怪訝そうな表情を見せた。尤もすぐにまた能面のような顔に戻ったのだが。
商業施設ではないせいか、愛想は無い。
「あ、出身はセフィラ:κで、僕はカイン、弟のアベルです。」
受付の態度など構わずカインは答えた。そんなことよりヨナタンがどうしているかの方が大事だった。
「確認しますね。あちらでお待ち下さい。」
二人は指し示されたソファーに座る。
「なあなあ、全然笑わないな、あの人。」
八年経ってさすがに空気が読めるようになったアベルが、受付を離れた後にカインに耳打ちした。
「うん? まあ、店じゃないしな。」
「そういうもんかな?」
町に駐屯していたメサイアたちを思い浮かべながら、アベルはなんだか釈然としなかった。故郷にいたメサイアたちはみんなもっとずっと友好的だった。なんなら家族みたいだったと言ってもよかったのに、とアベルは受付の方を眺めながら考えていた。
することも無く、二人はぼんやりと施設の中を行き来する人々を眺めていた。
施設内に居る人々は基本はメサイアのメンバーたちだ。
黒を基調とした隊服に身を包んだ、討伐隊。
彼らはほとんどが任務に出ているのだろう。報告で立ち寄っているのか休暇なのか、ぱらぱらと姿を見かけるくらいだ。
そして、白を基調とした隊服の後方支援部隊。
彼らは次の任地の情報を調べたり、新しい情報を登録したり、と忙しない様子だった。尤も、彼らは施設の奥の限定区域での作業がほとんどになるわけだが。
回復系の能力者も白い隊服だとヨナタンが話していたとカインは思い出していた。回復系能力者は必ず2人は任務部隊に編成するって言ってたなあ、と忙しなく動き回る隊員たちを眺めながらカインはぼんやり考えていた。
そのメサイアたちの間にちらほらと一般人が混ざっている。施設手前の、一般解放された場所で図書を借りたり、当番のメンバーから講義を受けたりしている。
そろそろ飽きてきた頃。我慢していた欠伸が二人揃って我慢できなくなった、そのタイミングで、
「お待たせしました。カイン殿とアベル殿ですね。」
声をかけられた。
「っぁあい、」
素っ頓狂な声を出すはめになったカインは、わざとこのタイミングで声をかけたんじゃなかろうかと、一人忌々しく思うのだった。
尤も、メサイアは気にする素振りも見せず続ける。
「司祭がお話をされるそうです。ご案内します。ついてきてください。」
白い隊服の、年配の彼はそう言ってくるりと向きを変え歩きだした。
顔を見合わせて、二人は慌てて後をついていく。
「なあ、こんなもんなの?」
「さすがにオレも分かんねえわ。」
マイペースなのか不親切なのか。それとも欠伸の瞬間を見て気分を害したのか。
二人を案内するメサイアの態度に、アベルもカインも首を傾げながらついていくしかなかった。
そんな些細なことが、本当に冒険だと信じていた頃。
二人は怪しく寝静まった町中で、不思議な男に会った。
あれから、八年。
気が付けば二人は十五才になっていた。
ずっと、待ち続けていた。兄のヨナタンからの知らせを。
だが、便りの一つもないどころか、ヨナタンはその後一度も帰郷しなかった。
そして。銀色の髪をした不思議な男にも、あの後再び会うことは無かった。
分からないことばかりだった。
あの夜の出来事が、夢だったのか現だったのか分からない。
兄が、帰郷しないどころか便りの一つもない。その理由も分からない。
ヨナタンは負傷した訳でもなければ、命を落とした訳でもない。それは分かる。
メサイアからそんな連絡は無かった。メンバーに何かあれば、必ず組織は家族に報告するから間違いはない。
「兄ちゃん、どうしてるかな?」
アベルは、目の前に聳える門を見上げて呟くように言った。
ここは、かつてこの国の首都があった場所。そこに聳え立つのはメサイアの本部だ。
ついに、ここまで来た。
カインとアベルは、握る拳に力が籠った。
ヨナタンについて何度問い合わせても、故郷にあるメサイアの支部からは納得できるような回答はなかった。
『負傷したと言う知らせはない』
だとか
『討伐隊に編成されている』(そんな情報は今さらだ)
だとか。同じような回答ばかりで、ちゃんと確認してくれているのか疑わしいものだった。
両親も心配している。自分たちだってだ。
いてもたってもいられなくなった二人は、十五才になった日に、メサイアの本部を目指した。渋る両親をどうにか説得し、故郷を旅立ったのだ。
銀の髪の男から赤い果実を貰わなければメサイアの一員にはなれないが、その施設の門戸は一般にも開かれている。
怪物の出現などの情報共有はその理由の一つ。
そしてもう一つ。メサイアにはあらゆる地域のあらゆる情報が集まる。シンクタンクのようなものだ。そして、危険な情報でない限りは一般人も触れることが許されている。図書館と学校の中間のような施設としても機能していた。
カインとアベルは、ヨナタンについて最新かつ詳細な情報を聞き出すためにこの地に立った。
「討伐隊のヨナタンについて教えて下さい。僕たち、ヨナタンの弟です。」
一般用の受付に、カインはそう申し出た。
「討伐隊のヨナタン、出身はどちらですか? あと、あなた方のお名前をお伺いしても?」
もともと、一般人はここにメサイアの持つ情報を学ぶために来るのだ。人探しに来るのではない。
そのためカインの問いに、受付の担当者は一瞬怪訝そうな表情を見せた。尤もすぐにまた能面のような顔に戻ったのだが。
商業施設ではないせいか、愛想は無い。
「あ、出身はセフィラ:κで、僕はカイン、弟のアベルです。」
受付の態度など構わずカインは答えた。そんなことよりヨナタンがどうしているかの方が大事だった。
「確認しますね。あちらでお待ち下さい。」
二人は指し示されたソファーに座る。
「なあなあ、全然笑わないな、あの人。」
八年経ってさすがに空気が読めるようになったアベルが、受付を離れた後にカインに耳打ちした。
「うん? まあ、店じゃないしな。」
「そういうもんかな?」
町に駐屯していたメサイアたちを思い浮かべながら、アベルはなんだか釈然としなかった。故郷にいたメサイアたちはみんなもっとずっと友好的だった。なんなら家族みたいだったと言ってもよかったのに、とアベルは受付の方を眺めながら考えていた。
することも無く、二人はぼんやりと施設の中を行き来する人々を眺めていた。
施設内に居る人々は基本はメサイアのメンバーたちだ。
黒を基調とした隊服に身を包んだ、討伐隊。
彼らはほとんどが任務に出ているのだろう。報告で立ち寄っているのか休暇なのか、ぱらぱらと姿を見かけるくらいだ。
そして、白を基調とした隊服の後方支援部隊。
彼らは次の任地の情報を調べたり、新しい情報を登録したり、と忙しない様子だった。尤も、彼らは施設の奥の限定区域での作業がほとんどになるわけだが。
回復系の能力者も白い隊服だとヨナタンが話していたとカインは思い出していた。回復系能力者は必ず2人は任務部隊に編成するって言ってたなあ、と忙しなく動き回る隊員たちを眺めながらカインはぼんやり考えていた。
そのメサイアたちの間にちらほらと一般人が混ざっている。施設手前の、一般解放された場所で図書を借りたり、当番のメンバーから講義を受けたりしている。
そろそろ飽きてきた頃。我慢していた欠伸が二人揃って我慢できなくなった、そのタイミングで、
「お待たせしました。カイン殿とアベル殿ですね。」
声をかけられた。
「っぁあい、」
素っ頓狂な声を出すはめになったカインは、わざとこのタイミングで声をかけたんじゃなかろうかと、一人忌々しく思うのだった。
尤も、メサイアは気にする素振りも見せず続ける。
「司祭がお話をされるそうです。ご案内します。ついてきてください。」
白い隊服の、年配の彼はそう言ってくるりと向きを変え歩きだした。
顔を見合わせて、二人は慌てて後をついていく。
「なあ、こんなもんなの?」
「さすがにオレも分かんねえわ。」
マイペースなのか不親切なのか。それとも欠伸の瞬間を見て気分を害したのか。
二人を案内するメサイアの態度に、アベルもカインも首を傾げながらついていくしかなかった。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ
鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。
それが約50年前。
聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。
英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。
俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。
でも…英雄は5人もいらないな。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち
半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。
最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。
本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。
第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。
どうぞ、お楽しみください。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる