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マルクト:王国という名の第十の都市
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カインが目を開けると、あの強烈な光は収まっていた。
穏やかなサフラン色の光が、辺りを包んでいる。
「なんだったんだ? 今の光。」
まだ目がよく見えない、と、カインはチカチカする視界を庇いながら、リリンに尋ねる。
彼女は平気そうで、あの閃光が走る前と変わらぬ様子で祭壇の台座の側に立っている。
「転移の魔法が発動したんだよ。機械的だから、どうしてもねー。」
肩を竦めてリリンがカインに答えた。
「あれ? 台座にオーブが無い…?」
祭壇の台座には、ただぽっかりと穴が空いている。周囲を見渡すと、マルクトのオーブは元の台座にちゃっかりと収まっている。
カインは瞬きをした。
やっぱり、マルクトのオーブは祭壇ではなく元の台座にある。
「そりゃそうよ。だってもう、マルクトだもん。」
狐につままれたような顔をしているカインに、リリンは声をかけた。
「え!?」
「転移の魔法が発動したって言ったでしょ? もうここはマルクトだよ。そこにあるのはキミが操作したオーブじゃなくて、このマルクトのゲートの物だよ。」
訳が分からない、と言った様子のカインにリリンが説明する。
ああ、そう言えば。
ルシフェル様に連れられて来た時も、一瞬でダアトの森だったんだっけ。
ぼんやりとカインは思い浮かべる。
ほんの昨日まで、こんな出来事が自分の身に降りかかるだなんて思ってもみなかった。
「…大丈夫?」
ぼんやりとしているカインに心配そうにしたリリンが声をかける。
「うん、大丈夫。ただ、昨日からいろいろありすぎて、ちょっと頭の中を整理するのに時間が…」
「あぁ、それもそうだね。うーん… ここは一応安全だけど、何にも無いし、とりあえずマルクトまで行かない? 町の中なら、ゆっくり休める場所もいっぱいあるだろうしさ。」
不調の理由が事態に追い付けずにいることだと知って、リリンはカインに移動を提案する。
ここに居座る理由も無く、体調はこれと言って悪くないカインはそれに同意する。
「オレ、マルクトエリアは初めてなんだよね。」
風の噂でしか知らない土地に、カインは心が躍る。もちろん、観光で来た訳ではない。それが少し残念だった。
「アタシもー。」
「マジで!? 口ぶりから、てっきり…」
リリンの衝撃の告白に、カインは続く言葉を失った。
「ていうか、地上が。ほとんど初めて。」
「…。」
「だーいじょーぶだってば。ちゃんと調べてきてるから!」
困ったことがあったら、ママに聞いてくるしね! と、リリンはいたって暢気である。
「…オレ、頑張るよ…」
カインは力のない声で答えた。
しっかりしないと。ていうか、流されてないで色んなこと覚えないと…! 固く決心するカイン。本能が告げる危機が、そう決意させるのだった。
「? うん? そーだね、頑張って! じゃ、行こっか。」
気楽な様子でリリンがカインに。
二人はマルクトへ向かうために祭壇を離れた。
ゲートと呼ばれる空間を出て、カインは振り返った。
空間内だけでなく、外観もダアトの森の近くにあった祠と同じ造りのようだった。
「メサイアの使うゲートはほとんど彼らが造っているから、見た目は同じなのが多いみたいだよ。アタシたちが使うゲートはほとんどその辺にある木とか岩とかに転移の魔法が発動するように仕掛けてあるんだけどね。」
ダアトの森の隣にあったのと同じ祠みたいだね、と言うカインの言葉にリリンが答えた。
そうなんだ? カインはリリンの説明を聞きながら祠を注視していた。どんなに観察しても、ダアトの森の近くにあった祠と同じ造りだった。
違うところと言えば、こちらの祠は草原の中に建っているといところだ。周りの風景でしか、違いを説明できない。
隣同士で建っているわけじゃないから、同じでもいいのか。そう勝手に納得して、視線を祠から外す。
辺り一面、草原が広がっている。
整備された街道が祠から少し離れた場所にあった。その先に、壁に囲まれた都市が見える。
「あれがマルクト、かな?」
カインは都市を指さしてリリンに聞いた。
「そうそう。ケテルと違って、他の都市は近くにゲートがあるんだよね。」
「それって…?」
「ゲートは見えれば使えちゃうからね。ケテルは防衛のために少し離れたダアトの森の近くに造ったんじゃない?」
「ああ、そっか。」
言われてみれば、至極当然のことに感じられすぐに腑に落ちた。
初めての場所に、カインはさらに周りを見渡し観察してみた。
見晴らしがすごくいい。遠くにはこのマルクトエリアに属する町がいくつか見えた。
ぐるりと見渡して隠れる場所が無いな、とカインは思う。それは人間だけじゃなくて、怪物も。
自分たちが住んでいる街のある、ホドエリアと比べる。ホドエリアは緑が多い土地柄だった。
違いに驚けるくらいには、冷静さが戻ってきたようだった。
「長居すると危険だからとりあえず町に入ろ?」
リリンに声をかけられて、カインは我に返る。彼女の言葉に頷いた。
マルクトへ続く街道に出る。
目と鼻の先にマルクトの入り口が確認できる。
「ホント、近いね。」
そう言ってカインは祠の在った場所に視線を向けた。
「あれ?」
そこはただ、青々とした草が生えるだけだった。見晴らしの良い草原が続いている。
「その様子だと、ドリンクの効果がなくなっちゃったんじゃない?」
「あ、そうか。」
リリンに言われて、ドリンクの力で一時的に見えていただけだったことを思い出す。
少し不便だな、カインは感じた。普段通りに戻っただけなのに、ほんの数分の出来事が当たり前のように感じられていた。
「あ、もうマルクトに入るんだったよね。」
早く強くなろう、と再びカインは強く思った。
街道とマルクトの内部を隔てる門。
東西南北に一つずつあるのはホドと同じなんだよな、とカインは思う。かつてヨナタンから聞いた話を思い出そうと、門を潜りながら頭をひねる。ちなみにケテルとティファレト以外の都市は、平時は許可証の提示は必要なく自由に出入りできる。
他の都市の話も興味深かったけれど、あの当時、どちらかと言えば怪物討伐の話を好んで聞いてたんだった。と、カインは少し後悔する。
こんな形で外に出るなんて思いもしなかったから、他のエリアの話が役に立つことになるなんて発想自体生まれなかった。
それに何より、子供時代は討伐と冒険の話の方がワクワクしたんだよな。と、カインは懐かしく思い出す。八年前までの事だ。長かった。今は結局アベルとも離れ離れだ。
カインの感傷的な気分を、喧騒が吹き飛ばした。
商業の盛んな都市・マルクト。街を十字に分けるように走るメインストリートには商店がひしめき合っている。
カインたちは南門から町の中に入ったのだが、商人たちの呼び込みの声、住人や客たちの雑踏から発せられる声が、賑やかだった。
ふっ、と、マルクトのオーブがカインの脳裏を過った。
なんだかこの街のイメージに近いな。
街の中に足を踏み入れて、あのなんとも言えない色合いに妙に納得するのだった。
『マルクトっていう都市は、商人が勢いあってすごく賑やかなんだよな。』
町の雰囲気がヨナタンの言葉を思い出させる。
『市場も、商店街も、十大都市の中で一番賑わってる。物もたくさんあって、ほとんど何でも揃ってるんじゃないかな、マルクトは。』
あの時は全く想像できなかったけれど、実際目にしてみると圧倒的なエネルギーに満ちていた。
「アニキの言ってた通りだ。」
カインは呟いていた。
「何が?」
「あ、昔アニキからマルクトは商人に勢いのある街だって聞いてたのを思い出したんだ。その通りだなって。」
懐かしそうに、街を眺めながらカインはリリンに答えた。
「他には何か聞いてた?」
リリンが興味深そうに聞いてきた。
「マルクトは色んな物が揃ってるんじゃないかなって言ってたかな。あとは、うーん…」
「そっか、ここで装備を整えればいいね!」
「装備?」
「見たところ、キミの装備は軽装備じゃない?」
カインの頭のてっぺんから足の先まで、視線を這わせてリリンが言う。
「オレが居たとこだと、これでいっぱいいっぱいなんだけど。」
不満気にカインが頬を膨らませる。
布の服に革製のブーツ、革のベスト、護身用に大ぶりのダガーが今のカインの装備だ。
「とても怪物と立ち合えるとは思えないよね。」
バッサリとリリンが言い放つ。
「とりあえず、宿を取ろう。キミの荷物は置いて、今日は買い物かな!」
一刀両断にされて不貞腐れた様子のカインのことなどお構いなしに、リリンが目下の予定を提案する。
「買い物って… いいけど、宿で予定とか確認してからにしてくれる? 先の事がサッパリ分からなくて、不安って言うか心配って言うか…」
溜め息をついてカインはリリンに言う。
「そう? じゃ、宿を探そう!」
カインの心配を知ってか知らずか、リリンはざくざくと進み出す。
…。オレが慣れた方が良さそうだな。カインは溜め息を一つ、そのあと気持ちを切り替えてリリンの後を追った。
活気のある商店街が並ぶ。
食べ物を扱っている店が多いのかな? 足早に都市の中央を目指しながら、カインは流れるように過ぎていく左右に建ち並ぶ店を、出来るだけ観察する。
商店には、様々な商品が溢れんばかりに並べられている。
カインが凄いと思ったのは、それぞれの店に特色がありそうなところだった。目に入った限りでは、同じような商品が並んでいる店が見当たらない。
果物の店がいくつかあったが、それぞれ小ぶりな物だけ扱っているような店、黄色い果物中心に揃えられた店、赤い果物の店、のような感じだ。
肉や魚も新鮮な物が並んでいる。ゲートとか使って運ばれてるのかな? とカインは考える。
マルクトの近くには海も川も無い。新鮮な魚が豊富に揃っていることに、そう言えば、と不思議に思った。
見ていて楽しい。と、純粋にカインは思った。母親やアベルが好きそうだな、とも。
他には飲食店も多かった。喫茶店からレストランまで。こちらも様々な料理に特化した店が並んでいるようだ。
マルクトエリアだけでなく、他のエリアの料理の店もあるようだ。
あの店も行ってみたいなぁ、カインは久しぶりにワクワクした気持ちになっていた。
穏やかなサフラン色の光が、辺りを包んでいる。
「なんだったんだ? 今の光。」
まだ目がよく見えない、と、カインはチカチカする視界を庇いながら、リリンに尋ねる。
彼女は平気そうで、あの閃光が走る前と変わらぬ様子で祭壇の台座の側に立っている。
「転移の魔法が発動したんだよ。機械的だから、どうしてもねー。」
肩を竦めてリリンがカインに答えた。
「あれ? 台座にオーブが無い…?」
祭壇の台座には、ただぽっかりと穴が空いている。周囲を見渡すと、マルクトのオーブは元の台座にちゃっかりと収まっている。
カインは瞬きをした。
やっぱり、マルクトのオーブは祭壇ではなく元の台座にある。
「そりゃそうよ。だってもう、マルクトだもん。」
狐につままれたような顔をしているカインに、リリンは声をかけた。
「え!?」
「転移の魔法が発動したって言ったでしょ? もうここはマルクトだよ。そこにあるのはキミが操作したオーブじゃなくて、このマルクトのゲートの物だよ。」
訳が分からない、と言った様子のカインにリリンが説明する。
ああ、そう言えば。
ルシフェル様に連れられて来た時も、一瞬でダアトの森だったんだっけ。
ぼんやりとカインは思い浮かべる。
ほんの昨日まで、こんな出来事が自分の身に降りかかるだなんて思ってもみなかった。
「…大丈夫?」
ぼんやりとしているカインに心配そうにしたリリンが声をかける。
「うん、大丈夫。ただ、昨日からいろいろありすぎて、ちょっと頭の中を整理するのに時間が…」
「あぁ、それもそうだね。うーん… ここは一応安全だけど、何にも無いし、とりあえずマルクトまで行かない? 町の中なら、ゆっくり休める場所もいっぱいあるだろうしさ。」
不調の理由が事態に追い付けずにいることだと知って、リリンはカインに移動を提案する。
ここに居座る理由も無く、体調はこれと言って悪くないカインはそれに同意する。
「オレ、マルクトエリアは初めてなんだよね。」
風の噂でしか知らない土地に、カインは心が躍る。もちろん、観光で来た訳ではない。それが少し残念だった。
「アタシもー。」
「マジで!? 口ぶりから、てっきり…」
リリンの衝撃の告白に、カインは続く言葉を失った。
「ていうか、地上が。ほとんど初めて。」
「…。」
「だーいじょーぶだってば。ちゃんと調べてきてるから!」
困ったことがあったら、ママに聞いてくるしね! と、リリンはいたって暢気である。
「…オレ、頑張るよ…」
カインは力のない声で答えた。
しっかりしないと。ていうか、流されてないで色んなこと覚えないと…! 固く決心するカイン。本能が告げる危機が、そう決意させるのだった。
「? うん? そーだね、頑張って! じゃ、行こっか。」
気楽な様子でリリンがカインに。
二人はマルクトへ向かうために祭壇を離れた。
ゲートと呼ばれる空間を出て、カインは振り返った。
空間内だけでなく、外観もダアトの森の近くにあった祠と同じ造りのようだった。
「メサイアの使うゲートはほとんど彼らが造っているから、見た目は同じなのが多いみたいだよ。アタシたちが使うゲートはほとんどその辺にある木とか岩とかに転移の魔法が発動するように仕掛けてあるんだけどね。」
ダアトの森の隣にあったのと同じ祠みたいだね、と言うカインの言葉にリリンが答えた。
そうなんだ? カインはリリンの説明を聞きながら祠を注視していた。どんなに観察しても、ダアトの森の近くにあった祠と同じ造りだった。
違うところと言えば、こちらの祠は草原の中に建っているといところだ。周りの風景でしか、違いを説明できない。
隣同士で建っているわけじゃないから、同じでもいいのか。そう勝手に納得して、視線を祠から外す。
辺り一面、草原が広がっている。
整備された街道が祠から少し離れた場所にあった。その先に、壁に囲まれた都市が見える。
「あれがマルクト、かな?」
カインは都市を指さしてリリンに聞いた。
「そうそう。ケテルと違って、他の都市は近くにゲートがあるんだよね。」
「それって…?」
「ゲートは見えれば使えちゃうからね。ケテルは防衛のために少し離れたダアトの森の近くに造ったんじゃない?」
「ああ、そっか。」
言われてみれば、至極当然のことに感じられすぐに腑に落ちた。
初めての場所に、カインはさらに周りを見渡し観察してみた。
見晴らしがすごくいい。遠くにはこのマルクトエリアに属する町がいくつか見えた。
ぐるりと見渡して隠れる場所が無いな、とカインは思う。それは人間だけじゃなくて、怪物も。
自分たちが住んでいる街のある、ホドエリアと比べる。ホドエリアは緑が多い土地柄だった。
違いに驚けるくらいには、冷静さが戻ってきたようだった。
「長居すると危険だからとりあえず町に入ろ?」
リリンに声をかけられて、カインは我に返る。彼女の言葉に頷いた。
マルクトへ続く街道に出る。
目と鼻の先にマルクトの入り口が確認できる。
「ホント、近いね。」
そう言ってカインは祠の在った場所に視線を向けた。
「あれ?」
そこはただ、青々とした草が生えるだけだった。見晴らしの良い草原が続いている。
「その様子だと、ドリンクの効果がなくなっちゃったんじゃない?」
「あ、そうか。」
リリンに言われて、ドリンクの力で一時的に見えていただけだったことを思い出す。
少し不便だな、カインは感じた。普段通りに戻っただけなのに、ほんの数分の出来事が当たり前のように感じられていた。
「あ、もうマルクトに入るんだったよね。」
早く強くなろう、と再びカインは強く思った。
街道とマルクトの内部を隔てる門。
東西南北に一つずつあるのはホドと同じなんだよな、とカインは思う。かつてヨナタンから聞いた話を思い出そうと、門を潜りながら頭をひねる。ちなみにケテルとティファレト以外の都市は、平時は許可証の提示は必要なく自由に出入りできる。
他の都市の話も興味深かったけれど、あの当時、どちらかと言えば怪物討伐の話を好んで聞いてたんだった。と、カインは少し後悔する。
こんな形で外に出るなんて思いもしなかったから、他のエリアの話が役に立つことになるなんて発想自体生まれなかった。
それに何より、子供時代は討伐と冒険の話の方がワクワクしたんだよな。と、カインは懐かしく思い出す。八年前までの事だ。長かった。今は結局アベルとも離れ離れだ。
カインの感傷的な気分を、喧騒が吹き飛ばした。
商業の盛んな都市・マルクト。街を十字に分けるように走るメインストリートには商店がひしめき合っている。
カインたちは南門から町の中に入ったのだが、商人たちの呼び込みの声、住人や客たちの雑踏から発せられる声が、賑やかだった。
ふっ、と、マルクトのオーブがカインの脳裏を過った。
なんだかこの街のイメージに近いな。
街の中に足を踏み入れて、あのなんとも言えない色合いに妙に納得するのだった。
『マルクトっていう都市は、商人が勢いあってすごく賑やかなんだよな。』
町の雰囲気がヨナタンの言葉を思い出させる。
『市場も、商店街も、十大都市の中で一番賑わってる。物もたくさんあって、ほとんど何でも揃ってるんじゃないかな、マルクトは。』
あの時は全く想像できなかったけれど、実際目にしてみると圧倒的なエネルギーに満ちていた。
「アニキの言ってた通りだ。」
カインは呟いていた。
「何が?」
「あ、昔アニキからマルクトは商人に勢いのある街だって聞いてたのを思い出したんだ。その通りだなって。」
懐かしそうに、街を眺めながらカインはリリンに答えた。
「他には何か聞いてた?」
リリンが興味深そうに聞いてきた。
「マルクトは色んな物が揃ってるんじゃないかなって言ってたかな。あとは、うーん…」
「そっか、ここで装備を整えればいいね!」
「装備?」
「見たところ、キミの装備は軽装備じゃない?」
カインの頭のてっぺんから足の先まで、視線を這わせてリリンが言う。
「オレが居たとこだと、これでいっぱいいっぱいなんだけど。」
不満気にカインが頬を膨らませる。
布の服に革製のブーツ、革のベスト、護身用に大ぶりのダガーが今のカインの装備だ。
「とても怪物と立ち合えるとは思えないよね。」
バッサリとリリンが言い放つ。
「とりあえず、宿を取ろう。キミの荷物は置いて、今日は買い物かな!」
一刀両断にされて不貞腐れた様子のカインのことなどお構いなしに、リリンが目下の予定を提案する。
「買い物って… いいけど、宿で予定とか確認してからにしてくれる? 先の事がサッパリ分からなくて、不安って言うか心配って言うか…」
溜め息をついてカインはリリンに言う。
「そう? じゃ、宿を探そう!」
カインの心配を知ってか知らずか、リリンはざくざくと進み出す。
…。オレが慣れた方が良さそうだな。カインは溜め息を一つ、そのあと気持ちを切り替えてリリンの後を追った。
活気のある商店街が並ぶ。
食べ物を扱っている店が多いのかな? 足早に都市の中央を目指しながら、カインは流れるように過ぎていく左右に建ち並ぶ店を、出来るだけ観察する。
商店には、様々な商品が溢れんばかりに並べられている。
カインが凄いと思ったのは、それぞれの店に特色がありそうなところだった。目に入った限りでは、同じような商品が並んでいる店が見当たらない。
果物の店がいくつかあったが、それぞれ小ぶりな物だけ扱っているような店、黄色い果物中心に揃えられた店、赤い果物の店、のような感じだ。
肉や魚も新鮮な物が並んでいる。ゲートとか使って運ばれてるのかな? とカインは考える。
マルクトの近くには海も川も無い。新鮮な魚が豊富に揃っていることに、そう言えば、と不思議に思った。
見ていて楽しい。と、純粋にカインは思った。母親やアベルが好きそうだな、とも。
他には飲食店も多かった。喫茶店からレストランまで。こちらも様々な料理に特化した店が並んでいるようだ。
マルクトエリアだけでなく、他のエリアの料理の店もあるようだ。
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