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修行:マルクトエリア編 【八日目最終日、そして次のエリアへ】
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【八日目】
朝から雨だった。正確には昨日の午後降り出した雨が、まだ止んでいなかった。
尤も、雨雲の色合いが昨日よりも白くなっている。今日中にはやむかもしれない。
「止まなかったら午前だけで今日は終わりにしよっか。」
取り敢えず、スライムは出現するし。と、二人は外出する。
さすがに昼の休憩は面倒でも街に戻ることにした。あずまやも無い草原地帯なので当然と言えば当然の流れだ。
一度宿に戻り濡れ鼠のカインが着替えてから昼食へ。外に出るのもおっくうなので宿の食堂で済ませることにした。
雨脚が次第に弱くなって、休憩も終わる頃には空に虹がかかっていた。
「…。止んだね。」
窓から外の様子を見ていたカインは、じゃあ準備してくる、そう言って部屋に戻っていった。
「うん。やっぱりマジメだよね。」
アタシまだ何も言ってなかったのに、食後のコーヒーを片手にリリンは独りごちた。
雨が止んだこともあり、草原の出現怪物がスライムからウサギ型の怪物とボブキャットに変わる。マン・イーターの動きも普段の速度に戻っていく。
「物理攻撃との相性が悪いスライムくらいだねー、怪我しちゃうの。」
ボブキャットにも慣れて、初戦の苦戦が嘘のように討伐できるようになった。
「マルクトエリアはクリアで良いかな!」
リリンのその言葉に、カインは瞬きを一つ。
「良いの?」
「魔法が使えるようにさえなれば、スライムくらいもっと楽に倒せるようになるの分かってるしね。それにスライムはね、いずれ挑戦する幻獣亜種戦の布石ですよ。核を破壊するってコトを覚えてくれたらいいよ。無傷で倒せたら、その方がベストだけど。」
幻獣亜種、カインは呟いた。
【九日目】
端切れのような雲が、ところどころ浮かんでいる。
「今日は天気は良さそうだね。旅立ちにピッタリ。」
窓を開けて、リリンが言った。
「もう出るんだ?」
着替えを終えてきたカインが、リリンに尋ねる。
「んー、朝ごはん食べてー、次のイェソドまでの携帯食料買い込んでから出発かな!」
リリンの答えを聞いて、そう言えば手持ちの食糧はほとんど残ってなかったな、とカインは自分の荷物に視線を移した。
朝食を済ませると、リリンは弁当を宿の食堂に頼んでから商店街に出かけた。
六日目の休みを爆睡して潰したカインには久しぶりの商店街である。それも活気のある食料品店街。装備一式揃えた日に、買い物はリリンに任せた方が良いと結論付けていたカインはおとなしく荷物持ちに徹することにした。
リリンはほいほいと携帯食料を見繕っては購入している。
「…なぁ、こんなに要るのか?」
ほとんどが乾物なのもあって重さは無いが、かさばりはする。両手にいっぱいになったところで、カインはリリンに声をかけた。
「わお! 自分で持たなかったから、こんなになってるとは思わなかったよ。」
もう宿に戻って整理しよっか、そう言ってリリンはくるりと向きを変える。
もっと早く声かければよかった、カインはぼそりと呟いた。
こんな大荷物、どうするつもりなんだろう。カインが疑問に思っていると、リリンは使い魔を呼び出した。
「じゃあ、コレ預かっといてね。」
リリンの言葉に、にゃあん、と一声鳴いて使い魔は荷物と一緒に姿を消した。
「!? どういうこと?」
「かさばるでしょ? あっちで預かってもらって、必要な分だけ持ってこようと思って。」
まるで当然のことと言わんばかりの調子でリリンが答える。
「…便利だね。」
「ヒトに見付からなければね。じゃ、お弁当受け取りに行くね。防具装備したら来て。外で待ってるから。」
「分かった。」
身支度の要らないリリンが先に部屋を出て行った。
カインは装備を整え、荷物をまとめる。次のエリアに行く。イェソドはどんな所なんだろう。
準備が整ったカインは、部屋を後にした。
イェソドまでは何事も無ければ徒歩で七日くらいの道程になる。
「これも修行のうちだね!」
とリリンは言って敢えて怪物を避けることなく、地図上の最短距離を進む。マルクトエリア滞在中に経験を積んでいた分、それほど障害とは感じなくなっていた。
そのことにカインは自信を持つ。家にいた時より、強くはなっている。と。
マルクトエリアの境界が近くなるとリリンが目くらましの結界を使った。出現する怪物がまだらになり、新しく出現する怪物が今のカインでは手に負えないかもしれないからだ。
「イェソドに着いてからだね。怪我を癒しても野宿じゃ完治できないから。」
と、リリンは言った。
拠点を確保してから、というのが彼女のスタンスらしい。カインはこっそり、確かに無茶なところがあるからその方がいいだろうな、などと考えていた。
道程はほぼ半分まで来た。先を急ぐように、二人は地図に従って進むのだった。
朝から雨だった。正確には昨日の午後降り出した雨が、まだ止んでいなかった。
尤も、雨雲の色合いが昨日よりも白くなっている。今日中にはやむかもしれない。
「止まなかったら午前だけで今日は終わりにしよっか。」
取り敢えず、スライムは出現するし。と、二人は外出する。
さすがに昼の休憩は面倒でも街に戻ることにした。あずまやも無い草原地帯なので当然と言えば当然の流れだ。
一度宿に戻り濡れ鼠のカインが着替えてから昼食へ。外に出るのもおっくうなので宿の食堂で済ませることにした。
雨脚が次第に弱くなって、休憩も終わる頃には空に虹がかかっていた。
「…。止んだね。」
窓から外の様子を見ていたカインは、じゃあ準備してくる、そう言って部屋に戻っていった。
「うん。やっぱりマジメだよね。」
アタシまだ何も言ってなかったのに、食後のコーヒーを片手にリリンは独りごちた。
雨が止んだこともあり、草原の出現怪物がスライムからウサギ型の怪物とボブキャットに変わる。マン・イーターの動きも普段の速度に戻っていく。
「物理攻撃との相性が悪いスライムくらいだねー、怪我しちゃうの。」
ボブキャットにも慣れて、初戦の苦戦が嘘のように討伐できるようになった。
「マルクトエリアはクリアで良いかな!」
リリンのその言葉に、カインは瞬きを一つ。
「良いの?」
「魔法が使えるようにさえなれば、スライムくらいもっと楽に倒せるようになるの分かってるしね。それにスライムはね、いずれ挑戦する幻獣亜種戦の布石ですよ。核を破壊するってコトを覚えてくれたらいいよ。無傷で倒せたら、その方がベストだけど。」
幻獣亜種、カインは呟いた。
【九日目】
端切れのような雲が、ところどころ浮かんでいる。
「今日は天気は良さそうだね。旅立ちにピッタリ。」
窓を開けて、リリンが言った。
「もう出るんだ?」
着替えを終えてきたカインが、リリンに尋ねる。
「んー、朝ごはん食べてー、次のイェソドまでの携帯食料買い込んでから出発かな!」
リリンの答えを聞いて、そう言えば手持ちの食糧はほとんど残ってなかったな、とカインは自分の荷物に視線を移した。
朝食を済ませると、リリンは弁当を宿の食堂に頼んでから商店街に出かけた。
六日目の休みを爆睡して潰したカインには久しぶりの商店街である。それも活気のある食料品店街。装備一式揃えた日に、買い物はリリンに任せた方が良いと結論付けていたカインはおとなしく荷物持ちに徹することにした。
リリンはほいほいと携帯食料を見繕っては購入している。
「…なぁ、こんなに要るのか?」
ほとんどが乾物なのもあって重さは無いが、かさばりはする。両手にいっぱいになったところで、カインはリリンに声をかけた。
「わお! 自分で持たなかったから、こんなになってるとは思わなかったよ。」
もう宿に戻って整理しよっか、そう言ってリリンはくるりと向きを変える。
もっと早く声かければよかった、カインはぼそりと呟いた。
こんな大荷物、どうするつもりなんだろう。カインが疑問に思っていると、リリンは使い魔を呼び出した。
「じゃあ、コレ預かっといてね。」
リリンの言葉に、にゃあん、と一声鳴いて使い魔は荷物と一緒に姿を消した。
「!? どういうこと?」
「かさばるでしょ? あっちで預かってもらって、必要な分だけ持ってこようと思って。」
まるで当然のことと言わんばかりの調子でリリンが答える。
「…便利だね。」
「ヒトに見付からなければね。じゃ、お弁当受け取りに行くね。防具装備したら来て。外で待ってるから。」
「分かった。」
身支度の要らないリリンが先に部屋を出て行った。
カインは装備を整え、荷物をまとめる。次のエリアに行く。イェソドはどんな所なんだろう。
準備が整ったカインは、部屋を後にした。
イェソドまでは何事も無ければ徒歩で七日くらいの道程になる。
「これも修行のうちだね!」
とリリンは言って敢えて怪物を避けることなく、地図上の最短距離を進む。マルクトエリア滞在中に経験を積んでいた分、それほど障害とは感じなくなっていた。
そのことにカインは自信を持つ。家にいた時より、強くはなっている。と。
マルクトエリアの境界が近くなるとリリンが目くらましの結界を使った。出現する怪物がまだらになり、新しく出現する怪物が今のカインでは手に負えないかもしれないからだ。
「イェソドに着いてからだね。怪我を癒しても野宿じゃ完治できないから。」
と、リリンは言った。
拠点を確保してから、というのが彼女のスタンスらしい。カインはこっそり、確かに無茶なところがあるからその方がいいだろうな、などと考えていた。
道程はほぼ半分まで来た。先を急ぐように、二人は地図に従って進むのだった。
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