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消えないのは、火傷の痕か。それとも…
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うとうととしかかった頃。ばたばたと、忙しない、待ち望んだ足音がジャーダの耳を掠めた。それは日も傾き始めた、夕暮れ時のこと。
ばたん、と、ドアの開けられた音で、ジャーダの意識は完全に覚醒した。続いて、どさり、と、なにか、恐らくスピネルの荷物が落ちる音。ジャーダが視線を向けると、呆然と立ち尽くすスピネルが居た。彼の足元には無造作に置かれた荷物がある。やっぱり、あの音は荷物を落とした音だったんだな、ジャーダはそんな事を考えていた。
見たくなかった。スピネルの顔が歪んでいくのを。多分きっと、こいつはきっと、自分を責める。そんな気がする。悪いのはおれなのに。
「ジャーダ…」
ぽつり、と呟かれた声は彼らしくないほど頼りなくて、ジャーダは自分の耳を疑った。
「ゴメン、ゴメンな、オレが、もっと早く帰ってきてたら… いや、護衛の仕事なんて受けなかったら良かったんだ… ジャーダは早く帰って来てって言ってたのに、オレ、」
ジャーダの元まで歩み寄ったスピネルは、全身に包帯を巻かれた痛々しい姿を目の当たりにし、今にも泣き出しそうな声でゴメンと繰り返す。
いっそ、気にするな、と声に出してしまいたい。ジャーダはそんな衝動に駆られた。お前は悪くない、とも。だけど声を出そうにも体が痛くて仕方ない。いつも通り、スピネルの手のひらに言葉を綴ろうにも、彼に手を握り締められ動かせない。体の痛みが無ければ、と。取り留めもない考えばかりが、ジャーダの脳裏を過っては消える。
「すまねぇ、ジャーダ。火傷の痕、消えねぇかも、って…」
スピネルが言った。震える声で。ああ、消えねぇのか、父様や母様も悲しむのだろうか。でも、これは自業自得。仕方がないことだ。そうだ、おれが悪いんだ。あんな人気の無い場所へ一人で出歩いて行ったおれが。ずっと守られていたから忘れてた。両親の元を離れて一人になったらすぐ裏切られて殺されかけたくせに。そんなことも忘れて調子に乗ったからだ。
「ジャーダ、すまねぇ、火傷が消えなかったら… 女の子なのに、」
まだ謝罪を続けるスピネル。そういやおれのこと女だって思ってたんだ、だからこんなに、壊れた蓄音機みたいに繰り返すのか。そう気付いたジャーダは、スピネルに握られていた右手を微かに動かしてみた。
「ジャーダ?」
ジャーダの顔を覗き込むスピネルの手が、何かを感じたのか緩んだ。火傷の痕がちりちりと傷む。構わず、ジャーダはスピネルの手に痛みに震える指で言葉を綴る。
『気にしないで』
「っ、けどよぉ、オレがこの町に立ち寄らないルートを考えてりゃ、」
飽く迄も自分が悪いと言い張るスピネル。ジャーダは溜息を漏らした。
『これはスピネルの言う事を聞かないで一人で町外れまで出歩いたせいだから』
正直、長文を書くのは今のジャーダには正直辛い作業だったが、それ以上にスピネルを見ていられなかった。
『バカと言うかクソ真面目と言うか… だからこそ、おれはコイツと旅が出来るのか。』
どこか他人事のように思い巡らせる。スピネルは未だにすまねぇ、とゴメンを繰り返す。包帯塗れでベッドの住人じゃ、何を言ってもスピネルは自分が悪いと言い張るんじゃなかろうか、そう思い至ったジャーダは今はもう好きにさせる事にした。早く回復しよう。もう大丈夫だ、と言ってやれるように。
その晩、スピネルは久しぶりに一緒に寝るのではなく看病すると言いベッドサイドに寝ずに付き添った。スピネルがすぐ近くにいるのに寂しい。まどろみの中でジャーダは、数日前の浅墓な自分に毒づいていた。
夜が明けて。うつらうつらと、意識が浮遊したまま昼が過ぎた頃。ジャーダは、話し声で覚醒した。どうやら部屋の外で話し合っているらしい。スピネル、と後は医者と宿屋の主人の声だろうか。ぼそぼそと。
『おれを見捨てたりしないよ、な…』
不安になるのは、未だベッドから起き上がれないからだろう。そうして、ドアを挟んだ向こう側での会話。スピネル、ジャーダは呟きかけて、止めた。
それから数分後、ノックの後にスピネル達が部屋に入ってきた。
「旅が出来るようになるまで、後一ヶ月くらいかかるってよ…」
開口一番、スピネルが言った。ああ、その話をしていたのか。ジャーダは、ふ、と心が軽くなった。視線を泳がせたスピネルが、おずおずと続ける。
「そんでよ、ホントはオレずっと付きっ切りで看病してぇんだけど、」
言い辛そうに、一度言葉を区切る。
「一ヶ月の宿代とよ、治療費がちっと足んねぇんだ。だから… ジャーダが完治するまでギルドで稼いでおこうと思っ、て…」
ひどい顔しているな、ジャーダは思った。きっとこんな状態の自分をひとり残すのが躊躇われるのだろう。ぼんやり考える。どうしてここまで、とジャーダは不思議に思う。
「わたしもね、状況が状況だし… とも言ったんだがね、」
スピネルの後ろに居た宿屋の主人が何やら言っている。ジャーダはそんな言い訳じみた言葉には興味が湧かなかったので聞き流す事にした。どうやら子供二人で旅をしているから、仕様がねぇから格安で面倒見てやる、って恩着せがましいことでも言いたいんだろう、この宿屋の女将も医者も。と、ジャーダは勝手に結論付ける。
だけど、そんなのは今のスピネルは受け入れ難いだろうし、ジャーダ自身見ず知らずの人間に借りを作りたくなかった。そんなことを言って、大変な思いをするのはスピネルだと言うことも理解した上で、それでもジャーダは聞き流すことにした。
あの日、護衛に裏切られて殺されかけた日。あの日からもう、本当は他人なんてどうでもいいものに変わったはず、だった。もう一週間は経ったのだろうか、あの日炎の中で、やっぱり他人なんか自分には必要ないと確信したんだ。
…じゃあ、スピネルは?
心のどこかで誰かが問いかけて、ジャーダは溜息を零した。様子を窺うようにベッドサイドに立っていたスピネルの手に、
『迷惑かけてゴメン』
とたどたどしく書く。そんなことねぇ、と言いかけたスピネルに、さらに、
『仕事、がんばって。怪我はしないで』
と。追加する。
「お、おぅ…」
どこか不安げにスピネルは答えた。そうして、今日は一緒にいるからなぁ、そう呟いた。
翌日からのスピネルは慌しかった。ジャーダを気遣いながら、ギルドに顔を出す。仕事を探し、稼ぎに出る。合間を縫ってジャーダの手当て。ギルドと宿屋と依頼先、ぐるぐると走り回る。そのうち倒れちまうんじゃないか、とは、ジャーダが思ったことだったか。宿屋の主人の台詞だったか。医者の溜息だったか。もう分からない、ジャーダは考えていた。
『どうしてだ。なんでそこまでするんだ。』
起き上がれるようになって数日。巻かれた包帯も少しは減った。ベッドの上から窓の外をぼんやり眺めるジャーダの眉間には子供らしくない皺がよっていた。
スピネルに疲労が溜まっているのが、誰の目にも明らかだった。それでも、もうそれはただの意地なんじゃないか、そんな様子でスピネルは仕事をこなしていた。寂しさとは違う、違う何かがジャーダの中に生まれていた。いつかそう遠くない未来に、この馬鹿正直な折れることを知らない剣みたいな男を駄目にしてしまうんじゃないか、という結末。その結末を予感する度に襲ってくる不安。
『駄目だ。』
今更、もう良いなんて言ったところでスピネルが納得する訳無いのは知っている。だとしたら、早くネーヴェに着くしかない。早く別れるしかない。早く自分から開放してやるしかない。忌々しげに、いまだ自分をベッドに縛る包帯を、ジャーダは睨んだ。そんなことをしても気休めにさえならないと知ってはいても。
疲れた顔で笑うのを見るのが嫌だった。気遣うような、窺うような、目も。悪いのはおれだ。なのに、なんで。言えない言葉だけがジャーダの中に溜まっていく。何を言っても責めることしかないと、なんとなく分かってしまった自分が憎いとも。
ばたん、と、ドアの開けられた音で、ジャーダの意識は完全に覚醒した。続いて、どさり、と、なにか、恐らくスピネルの荷物が落ちる音。ジャーダが視線を向けると、呆然と立ち尽くすスピネルが居た。彼の足元には無造作に置かれた荷物がある。やっぱり、あの音は荷物を落とした音だったんだな、ジャーダはそんな事を考えていた。
見たくなかった。スピネルの顔が歪んでいくのを。多分きっと、こいつはきっと、自分を責める。そんな気がする。悪いのはおれなのに。
「ジャーダ…」
ぽつり、と呟かれた声は彼らしくないほど頼りなくて、ジャーダは自分の耳を疑った。
「ゴメン、ゴメンな、オレが、もっと早く帰ってきてたら… いや、護衛の仕事なんて受けなかったら良かったんだ… ジャーダは早く帰って来てって言ってたのに、オレ、」
ジャーダの元まで歩み寄ったスピネルは、全身に包帯を巻かれた痛々しい姿を目の当たりにし、今にも泣き出しそうな声でゴメンと繰り返す。
いっそ、気にするな、と声に出してしまいたい。ジャーダはそんな衝動に駆られた。お前は悪くない、とも。だけど声を出そうにも体が痛くて仕方ない。いつも通り、スピネルの手のひらに言葉を綴ろうにも、彼に手を握り締められ動かせない。体の痛みが無ければ、と。取り留めもない考えばかりが、ジャーダの脳裏を過っては消える。
「すまねぇ、ジャーダ。火傷の痕、消えねぇかも、って…」
スピネルが言った。震える声で。ああ、消えねぇのか、父様や母様も悲しむのだろうか。でも、これは自業自得。仕方がないことだ。そうだ、おれが悪いんだ。あんな人気の無い場所へ一人で出歩いて行ったおれが。ずっと守られていたから忘れてた。両親の元を離れて一人になったらすぐ裏切られて殺されかけたくせに。そんなことも忘れて調子に乗ったからだ。
「ジャーダ、すまねぇ、火傷が消えなかったら… 女の子なのに、」
まだ謝罪を続けるスピネル。そういやおれのこと女だって思ってたんだ、だからこんなに、壊れた蓄音機みたいに繰り返すのか。そう気付いたジャーダは、スピネルに握られていた右手を微かに動かしてみた。
「ジャーダ?」
ジャーダの顔を覗き込むスピネルの手が、何かを感じたのか緩んだ。火傷の痕がちりちりと傷む。構わず、ジャーダはスピネルの手に痛みに震える指で言葉を綴る。
『気にしないで』
「っ、けどよぉ、オレがこの町に立ち寄らないルートを考えてりゃ、」
飽く迄も自分が悪いと言い張るスピネル。ジャーダは溜息を漏らした。
『これはスピネルの言う事を聞かないで一人で町外れまで出歩いたせいだから』
正直、長文を書くのは今のジャーダには正直辛い作業だったが、それ以上にスピネルを見ていられなかった。
『バカと言うかクソ真面目と言うか… だからこそ、おれはコイツと旅が出来るのか。』
どこか他人事のように思い巡らせる。スピネルは未だにすまねぇ、とゴメンを繰り返す。包帯塗れでベッドの住人じゃ、何を言ってもスピネルは自分が悪いと言い張るんじゃなかろうか、そう思い至ったジャーダは今はもう好きにさせる事にした。早く回復しよう。もう大丈夫だ、と言ってやれるように。
その晩、スピネルは久しぶりに一緒に寝るのではなく看病すると言いベッドサイドに寝ずに付き添った。スピネルがすぐ近くにいるのに寂しい。まどろみの中でジャーダは、数日前の浅墓な自分に毒づいていた。
夜が明けて。うつらうつらと、意識が浮遊したまま昼が過ぎた頃。ジャーダは、話し声で覚醒した。どうやら部屋の外で話し合っているらしい。スピネル、と後は医者と宿屋の主人の声だろうか。ぼそぼそと。
『おれを見捨てたりしないよ、な…』
不安になるのは、未だベッドから起き上がれないからだろう。そうして、ドアを挟んだ向こう側での会話。スピネル、ジャーダは呟きかけて、止めた。
それから数分後、ノックの後にスピネル達が部屋に入ってきた。
「旅が出来るようになるまで、後一ヶ月くらいかかるってよ…」
開口一番、スピネルが言った。ああ、その話をしていたのか。ジャーダは、ふ、と心が軽くなった。視線を泳がせたスピネルが、おずおずと続ける。
「そんでよ、ホントはオレずっと付きっ切りで看病してぇんだけど、」
言い辛そうに、一度言葉を区切る。
「一ヶ月の宿代とよ、治療費がちっと足んねぇんだ。だから… ジャーダが完治するまでギルドで稼いでおこうと思っ、て…」
ひどい顔しているな、ジャーダは思った。きっとこんな状態の自分をひとり残すのが躊躇われるのだろう。ぼんやり考える。どうしてここまで、とジャーダは不思議に思う。
「わたしもね、状況が状況だし… とも言ったんだがね、」
スピネルの後ろに居た宿屋の主人が何やら言っている。ジャーダはそんな言い訳じみた言葉には興味が湧かなかったので聞き流す事にした。どうやら子供二人で旅をしているから、仕様がねぇから格安で面倒見てやる、って恩着せがましいことでも言いたいんだろう、この宿屋の女将も医者も。と、ジャーダは勝手に結論付ける。
だけど、そんなのは今のスピネルは受け入れ難いだろうし、ジャーダ自身見ず知らずの人間に借りを作りたくなかった。そんなことを言って、大変な思いをするのはスピネルだと言うことも理解した上で、それでもジャーダは聞き流すことにした。
あの日、護衛に裏切られて殺されかけた日。あの日からもう、本当は他人なんてどうでもいいものに変わったはず、だった。もう一週間は経ったのだろうか、あの日炎の中で、やっぱり他人なんか自分には必要ないと確信したんだ。
…じゃあ、スピネルは?
心のどこかで誰かが問いかけて、ジャーダは溜息を零した。様子を窺うようにベッドサイドに立っていたスピネルの手に、
『迷惑かけてゴメン』
とたどたどしく書く。そんなことねぇ、と言いかけたスピネルに、さらに、
『仕事、がんばって。怪我はしないで』
と。追加する。
「お、おぅ…」
どこか不安げにスピネルは答えた。そうして、今日は一緒にいるからなぁ、そう呟いた。
翌日からのスピネルは慌しかった。ジャーダを気遣いながら、ギルドに顔を出す。仕事を探し、稼ぎに出る。合間を縫ってジャーダの手当て。ギルドと宿屋と依頼先、ぐるぐると走り回る。そのうち倒れちまうんじゃないか、とは、ジャーダが思ったことだったか。宿屋の主人の台詞だったか。医者の溜息だったか。もう分からない、ジャーダは考えていた。
『どうしてだ。なんでそこまでするんだ。』
起き上がれるようになって数日。巻かれた包帯も少しは減った。ベッドの上から窓の外をぼんやり眺めるジャーダの眉間には子供らしくない皺がよっていた。
スピネルに疲労が溜まっているのが、誰の目にも明らかだった。それでも、もうそれはただの意地なんじゃないか、そんな様子でスピネルは仕事をこなしていた。寂しさとは違う、違う何かがジャーダの中に生まれていた。いつかそう遠くない未来に、この馬鹿正直な折れることを知らない剣みたいな男を駄目にしてしまうんじゃないか、という結末。その結末を予感する度に襲ってくる不安。
『駄目だ。』
今更、もう良いなんて言ったところでスピネルが納得する訳無いのは知っている。だとしたら、早くネーヴェに着くしかない。早く別れるしかない。早く自分から開放してやるしかない。忌々しげに、いまだ自分をベッドに縛る包帯を、ジャーダは睨んだ。そんなことをしても気休めにさえならないと知ってはいても。
疲れた顔で笑うのを見るのが嫌だった。気遣うような、窺うような、目も。悪いのはおれだ。なのに、なんで。言えない言葉だけがジャーダの中に溜まっていく。何を言っても責めることしかないと、なんとなく分かってしまった自分が憎いとも。
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