【 宇宙人Kと少女Q 】

八御伽遊楽

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第1話:『閉まる扉に──』ご注意しながら

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 階段を上る。歩道橋を渡る。階段を下る。駅に到着。改札口を通る。階段を上る。ホームに立つ。午前7時15分。スマホを確認。『通過列車にご注意──』
 いつも思う。通過列車って怖い。警笛鳴らすし。脅しかな。

 警笛ファーンは耳に残る。耳鳴りみたいに。ファーンはファンファーレとは全然違う。足りない華やかさ。代わりの花束はホームの片隅にある。色褪せた黄色い花びら。色褪せた日常を思う。

『黄色い線の内側まで──』

 下がれない。列に並んでるから。前から4番目。前の人はスマホに夢中。わたしもメモ帳アプリに「行ってきます」のご挨拶。呟いたら振り向かれた。変な目で見られる。変な目は慣れっこです。前の人はカツラでした。

 ここから本番。車両は2番目。開いた扉に飛び乗る。『車内中ほどまで──』と言われても、わたしの定位置は扉の近く。車窓に貼られた「優先席」のシール。その座席には座らない。扉と座席の中間くらい。手すりの掴めるところ。壁を見るように車内に背を向けて小さくなる。

 開けゴマの逆。閉まってゴマ。閉まってドア。午前7時20分発の電車は、押し競まんじゅうの満員電車。わたしは目を閉じる。『閉まる扉に──』ご注意しながら。

 通学時間は1時間。押し競まんじゅうも1時間。往復2時間の学校は「常和女学院高等部」。今日の6時間目は「英語」だったかな? 地球共通語は眠たくなる。午後9時に聞けば、わたしの生活も少しは楽になるかも。
 睡眠は大切。人類は人生の3分の1を眠って過ごす。冬眠するリスみたいに。過酷な現実には必要なこと。人生3分の2の先は長い。ガタンガタンと電車の音。そのうちの1時間。今日は何を空想しよう?

 と思ったところで目に入る優先席シール。簡略化された人のイラストは「橙色だいだいいろ」。「橙」は大体、人の形。「大」「大」「大」「大」「大」。こんな感じ。「☆」「☆」「☆」「☆」「☆」。こんな感じでもあるかも? 5人の人。5つの星。思いやり5つ希望。希望の星。星に願いを。「人は人に優しくありますように」。

 杖を持った人。松葉杖を持った人。心臓にペースメーカのある人。乳幼児をお連れの人。妊娠中の人。「優先席付近では、携帯電話の電源をお切り下さい」の文字も。
 それにしては、優先席で携帯電話いじってるお年寄りもいるけど。

 最近のペースメーカーは携帯の電波に影響されないように作られてるらしいけど、そんなの関係ないよ? 怖いものは怖いから。ペースメーカある人にとっては。

 心臓どきどきしちゃうよね。
 わたしも心臓どきどき。心臓どきどき。ドキドキ。これは勘違いかな?

 満員電車だし。押し競まんじゅうも仕方ないし。
 振り向けるほどスペースないし。
 やっぱり勘違い?

 わたしのお尻。
 触られてるような……?

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