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第4話:オセロのコツと満員電車に乗るコツは、角を取ること
しおりを挟むオセロのコツと満員電車に乗るコツは、角を取ること。
小さな身体は不利だし。押し競まんじゅうしたら、おまんじゅうみたいに潰される。だから角を取る。わたしだって潰され方くらい選びたい。オセロの負け方を選ぶくらいには。
電車に乗るのは嫌いじゃない。揺れる電車は好きなほう。空想してても怒られない。ぼー……っとしてても大丈夫。誰もいないからご安心。知ってる人は誰も。
痴漢かも知れない人は今日もわたしの後ろ。お尻に触れているような? 気のせいかな? 痴漢だったらすごいな。本当にいるんだ。
ノンフィクションって結局は創作作品だからフィクションと同じだよね? でも、わたし今、痴漢に遭ってるんだよ。本当だったら史実じゃなくて事実だよ。誰か信じるかな? 会ってるんじゃないよ? 遭ってるんだよ? 未知との遭遇だよ?
UFO見た気分。夜空を動く星の瞬き。でも地球周回軌道上の衛星かも知れない。挨拶されるまでわからない。宇宙人に「こんにちわ」されたら、もう信じるしかない。
「こんにちわ」されたら、地球とは「さようなら」なのかな?
ああ、やっぱり痴漢なのかな? 10日もわたしの後ろだ。わたしもいつも“角”だけど。
でも、お尻に手あたってるだけだし。このくらいじゃ、痴漢にならない? 家族には優しい悪者みたいなもの? そんな感じのわからなさ。
いつも善い子ぶるのは疲れる。いつも悪い子ぶるのも疲れる。そういうのは知ってるけど。
宇宙人に会ってみたい。神様は本当にいるのか尋いてみたい。「心の中にいる」って言ったら面白い。笑っちゃうかも知れないな。
「あ……」
これ痴漢だ。お尻にあたってるの、手の甲じゃない。手のひらだし。揉んでると思うし。やっぱり昨日のも痴漢だったんだ。
手の甲ね、引っ繰り返ったよ。オセロみたいに。警察は犯人を「黒」って言うんだっけ? 「白」って言うんだっけ? 「黒」だったと思うけど「白」だといいな。「黒」はわたしだし。「白」に挟まれたら、わたしも「白」になりそう。世の中そういうものらしいよ?
でも、わたしは角を取ってる。電車でも、教室でも、家の中でも。だからわたしは「黒」のまま。
それはいいけど、揉みすぎだと思う。おまんじゅうっていうか、わたしのお尻をお餅みたいに揉んでるよ。どうしてわたしなんだろう。こんなにいっぱい人いるのに……。
触られて、さらわれるのかな。
車に乗せられて日常から「さようなら」。山奥に連れて行かれて、コテージみたいなところで「今日からここで暮らせ。お前の家だ」だったり?
ペットくらいならできるかも。可愛がってくれるならできるかも。優しくしてもらえるのなら、えっちなこともできると思うし。
えっちなことか。
いつか誰かとするのかな。いつか誰か好きになるとか、すごい信じられない。きっと、それも「さようなら」だ。日常からの「さようなら」。
「こんにちわ」わたしの知らない世界。待っていました。日常から「さようなら」できる日を。
螺旋階段を昇るような毎日でした。同じところをくるくるくるくる。めまいみたいにくるくるくるくる。どうせならハムスターみたいにくるくるしたかったです。可愛いし、見ていて楽しいから。
日常は楽しくありませんでした。わたしは日常と相性悪いみたいです。
日常は説明をしてくれません。
どうしてわたしはわたしなのか。どうして学校に通うのか。どうしてお母さんはお父さんと離婚したのか。どうして毎日は繰り返されるのか。説明してくれないから、わたしには全然わかりません。
説明のない日常。先生もお母さんも、二言目には「わかるでしょ?」。ごめんなさい、わかりません。わたしって馬鹿だから。
学校のみんなはわかってるみたい。日常に疑問を持っていないみたい。楽しそうにしてるから。
わたしは日常を受け入れられない。楽しそうにもできない。遠い星にさらわれたい。山奥でもいいよ? 人里離れてるならね。
「こんにちわ」ペットライフ。なにをすればいいですか? えっちなこと? お尻を揉むとか? 好きなだけ揉んで下さい。そういうペットっていたっけ?
ペットは撫でられるものだよ。どうしてお尻を撫でないのかな。痴漢ってお尻を撫でるものってどこかで聞いたけど。
揉むのも撫でるのも一緒かな。痛いわけじゃないし。ちょっと気持ちいいし。
ああ、そうか。わたしはおまんじゅうだからか。善い子の皮を被った悪い子。揉まれたら悪い子になりそう。わたしの中身出ちゃいそう。
悪い子のわたし。それいいな。善い子を押しつけられるより、ずっといい。悪い子になりたい。それは本当のわたしだから。本当のわたしって悪い子だから。
って、やっぱり揉みすぎだと思うけど。本当に中身出ちゃいそう。中身出ちゃったら食べられるのかな。
食べられるってえっちだね。悪い子のわたしを出して食べるのかな。悪い子だから、えっちしてもいいよね? 食べられてもいいよね。
わたしは甘さ控えめ。甘さ控えめのえっち。
にしては、なんか気持ちいいけど。お尻って揉まれるのって、けっこう気持ちいいんだ。知らなかったな。
『次は──』次はぁー日常ぉー日常ぉー。
『お降りの際は──』お足元に気をつけて、くるくるめまいを起こして倒れないようご注意下さい。
わたしの知らない世界もここまでか。
UFOじゃなくて電車の中だけど、宇宙人じゃなくて痴漢の人だけど、でも、明日もわたしの後ろにいるよね。
いつもわたしの後ろにいるもんね。
『お出口は──』お出口は「さようなら」。知らない世界と知らない人に「さようなら」。
どんな人かな。
宇宙人っぽい人かな。
1時間もお尻揉み続ける人って、どんな人だろう。まだホームにいるかな。ちょっとだけ、見てみたいな。
『締まる扉にご注意下さい』
なんか恥ずかしい。
顔を見るのも見せるのも。
少しだけ、少しだけ見てみよう。ほんの少しだけ──振り向いてみる。
「…………っ」
わ、笑ってる。
人類に友好的な痴漢かも。
わ、わたし、この人にお尻揉まれてたのか。なんか、すごい恥ずかしい……。
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