【 宇宙人Ｋと少女Ｑ 】

第１3話：頭悪い子は素行も悪い子？ 「ごめんなさい」言う数増える。「ありがとう」言う数減る

　わんわん鳴きたいのです。わんわん泣きたいのです。

『先生の言うことを聞きなさい』『お母さんの言うことを聞きなさい』

　学校帰り。寄り道しないこと。スーパーは可。
　５００円玉を握り締める。今日の夕ご飯なんにしよう？　制服でスーパー通いは悪目立ち。あの娘どこの娘鴨川さん家の娘。きのこと豆腐１５０円なり。もやしとキムチ１３０円なり。豚肉１００円なり。残りはお幾ら？　１２０円なり。じゃあサラダはキャベツかな。まだ豆乳あったっけ？

　夕暮れ帰り道。鴨川さん家に到着。わたしの家は？　居場所ないならここはどこ？
　冷蔵庫は棺桶に似ている。死体の宝庫。朝ご飯の焼き魚の骨をお庭に埋めてたら怒られた。小さい頃の話。手を合わせて「早く大きくなーれ。ミニトマト」。家庭菜園に卵の殻はいいのに、お魚の骨は駄目でした。どうしてかな？

　無洗米は炊飯器。きのこは出汁代わりの豆腐の味噌汁。もやしとキムチと豚肉はフライパンでジュー。砂糖も一匙加えます。千切りキャベツはゆで卵とマヨネーズを和えて出来上がり。炊き立てご飯は残り１０分。テーブル拭いて、お皿の用意。セパゾン１㎎もプチプチする。
　転がる錠剤。転がる人生。螺旋階段を狂る狂る回れば、頭の星もくるくる回る。

「いただきます」「ごちそうさま」

　お掃除は嫌いじゃない。結果はしっかり残るものだから。勉強は？　わたしの勉強に意味はある？　お風呂上がりのパジャマはひつじ風。もこもこ風。着ぐるみ風。溜め息も「はふぅー」して宿題をする。温あったか豆乳飲みながら。
　午後９時になったら、ゾルピデム酒石酸塩５㎎とフルニトラゼパム１㎎をプチプチする。
　転がる錠剤。転がる人生。螺旋階段を狂る狂る回れば、頭の星もくるくる回る☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ＵＦＯどこ？

　お母さんは今日も帰ってこない。狂る狂る迷えるひつじのわたし。

　なぞなぞ「夢見るひつじは柵の中に入ってるのか出ているのか。どぉーっちだ？」答え──どちらでもない。

　ひつじは夢見てるだけだから。本当かな？

「おやすみなさい」『黄色い線の内側までおさがり下さい』

　駅のホームに立ってるわたし。鞄の中を調べる。
　宿題は終わってるね。時間割通りの教科書。ハンカチ鼻噛み生理用品。ん、わたし生理だっけ？
　スマホの手帳アプリには「おはよう杏。今日の朝ご飯は焼きおにぎりに茶碗蒸し。サラダは千切り大根だよ。お洗濯は大丈夫。ハラほろヒレ晴れ。夕ご飯同じもの買っちゃダメだからね？　行ってらっしゃい」

「ＰＳ：今日も痴漢かも知れない人いるかな？」の文字。うん、いつもの感じかな。

「行ってきます」

　オセロ。
「白」と「黒」。
　塗り分けられた円盤状の石。
　盤上の正方形は８×８の６４面。一人３２手のボードゲーム。挟めば勝ちよ、あっぷっぷ。

『負けたら笑えないよ？』

　偶数の６４面。
　盤上に中心はない。
　例えば自己中心的な人はいても、例えば教室の席に中心はない。

　あるのは四つの席。
　最初の一手は、そこから始まる。

　オセロと亀は似ている。引っ繰り返されたら負けだから。黒いわたしと亀は似ている。とってものろま。足の速い白兎に勝てっこない。
　眠らない白兎。努力しない亀。勝負したら負け。最初から勝負なんてしてないけど？

　１人きりの黒い亀は角を取る。教室の隅っこ。引っ繰り返されないから。何度も引っ繰り返されるのは疲れるよ？　隅っこは陰。黒い亀の隠れ場所。誰にも見つからないといいのにな。

　３１人の白兎。善い子ばっかり。頭のいい子ばっかり。お勉強っていつから競争になったの？　お勉強っていつから勝負になったの？
　１位？　２位？　３位？　どうか教えて下さい。お勉強っていつから競争になったのか。「わかるでしょ？」わかりません。わたしは馬鹿だから。
　馬鹿なわたしは３２位。３２人の最下位です。勝負した憶えはないけれど。マインドスポーツ？　情を操り教え育てる情操教育──マインドコントロールの間違いじゃ？　そんな感じの教室オセロ。

「ａ８」の石亀以外は、みんな善い子の白兎。頭悪い子は素行も悪い子？　「ごめんなさい」言う数増える。「ありがとう」言う数減る。

　口数はもっと減る。なにを言っても「言い訳しないの」どうしたらいいの？　「自分で考えなさい」自分で考えた結果の３２位。「黙りなさい」口数もっともっと減る。

　必要ないかも、お口。言葉の出口。気持ちの出口。心の出口。

　わんわん鳴きたいのです。わんわん泣きたいのです。


「わああぁぁ────────────────────────っっ！！！！」


　水平線の向こうに叫んでみる。さざ波の音にも負けないよう。

「これが……海！」

「こんにちわ」わたしの知らない世界！