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第一篇第二章 拳術道場の女
炎の中を掻き分けて
しおりを挟む「テメェ一人残って相手ェしてくれんのか?赤髪ィ」
「こっちは手が余るくらいだ。この…下衆野郎が…」
無情にも火の手が進み、焼け焦げて行く
道場を視界に入れながらロードは唇を
強く噛み、ガスリーを睨み付ける。
一方、道場内に突入したシャーレは
崩壊を始める建物の中を奥へ奥へと
進み、マーシャルを探す。
そして、寝室の前に辿り着いたシャーレは
布団から這いずって出ようともがく
マーシャルの姿を確認した。
「マーシャルさんッ!」
「君は…何故此処に?」
駆け寄ったシャーレは膝を付いて
マーシャルを起こそうと尽力する。
どうやら、腰の痛みにより上手く
身体が機能してないようだった。
「…放火したのは、ガスリーの一派か?」
「ええ、早く出ましょう」
「済まないな。普段は慣らしながらゆっくりと起きないと此のザマでな」
「腰の怪我…ですか…」
そもそもの原因を作ったガスリー一派の
蛮行に憤りを隠せないシャーレは
気持ちを押し殺して脱出を試みる。
何とか肩を支え、縁側の方角に火の手から
逃れたシャーレとマーシャル。
だが、其処に一派の追手が現れた。
「おい…ィ…せっかく火着けてやったんだ…焼け死んどけっての…ォ…」
左目を割るように深い切り傷を持つ長身の
男が、バールの様な物で肩を叩きながら
緩り緩りと向かってくる。
「マーシャルさん。少々此処でお待ちください…」
マーシャルを縁側に座らせると、シャーレは
静かに青龍刀を構えて前に出る。
「只の殺し屋集団か」
「どうだかなあ…ァ…」
「炎の中からマーシャルさんは助け出す。だが、私の腑は煮えくりかえって治まりそうも無い。君は此処で焼け死んで置くと良い」
「…っ…はは…ッ…上等…ォ…」
思い切り一歩踏み込んで来た長身の男は
バールを下から掬い上げる様に仕掛ける。
シャーレはバックステップで其れを躱して
次の一歩で間合いを詰める。
そのまま突き出された青龍刀は
振り下ろされたバールに弾かれる。
其の儘、地面に突き刺さった青龍刀を
バールと足で抑え込み、長身の男は
シャーレの顔を覗き込み、笑みを浮かべる。
「ガスリー一派のフザだ…ァ…俺はよ…ォ…焼け死んでもいいぜ…ェ…?せっかくなら、みんなでおっ死んで見ようや…ァ…」
「逝かれてるな…貴様…」
フザの頭突きをまともに食らったシャーレは
青龍刀を離してしまい、背後に飛ばされる。
其れを見たフザが不気味な笑みを浮かべて
バールを振り被り、シャーレの脳天目掛けて
容赦無く振り下ろして来る。
が、シャーレは、横に転がり体勢を
立て直すと、続け様に襲い来るバールの
連撃を全て躱してフザの腹目掛けて
拳のラッシュを叩き込む。
「悪いが、此処で私達は死ぬ気は無い…ポアラが悲しむだろう?あの人を此処で死なせたら」
ラッシュによりよろけたフザに向けて
シャーレは渾身の蹴りを腹部に叩き込む。
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