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第六篇第三章 ジェノスハーバー攻防戦
疾風の救世主
しおりを挟む場所は変わり、ジェノスハーバー中央区域。
石畳みの桟橋の上で武を競って居たのは
革命軍幹部デュークと帝国軍中将バレット。
傷付き倒れたデュークは手と膝を無理にでも
動かそうと這いずって居たが身体が言う事を
聞かずバレットの前に為す術を持たない。
そんな折、バレットは海に漂う霧の奥から
一隻の巨船の姿を確認していた。
「やっと到着かいな。えらい遅い到着やったな…早う沈めて帰ろか?」
「ま、待て…!」
「死に損ないは黙っとき?君は後回しやわぁ…」
バレットは桟橋の上を緩やかに進んで行くと
水色の流水のギフトを纏った七支刀を高く
振り上げると巨船目掛けて斬撃を飛ばそうと
其のチカラを段々と高めて行く。
「さ、させぬぞ…バレット…!」
デュークは必死に其の身体をバレットの方に
動かし倒れ込んだまま其の手を伸ばす。
あの貨物船を沈められたらジェノスハーバー
での作戦は否応無く失敗となる。
姫に対する謁見希望者も海の藻屑と化し
此の作戦に参加したフロウやルナに対しても
顔向けする事は出来ない。
責任感の強いデュークは祈る様に其の手を
バレットの背に向けて伸ばす。
だが、其の言葉はバレットの一言に依って
絶望へと瞬時に変貌を遂げてしまう。
「さいならや…。バイバーイ…」
「ぐっ…く、クソォォォォォ!!!!」
石畳みの桟橋を強く叩き付けたデュークの
拳と連動する様にバレットの七支刀から
練られ切った高密度の水流が巨大な鮫の姿
へと形を変えて巨船を正面から襲う。
デュークは唇から血が流れる程に悔しさを
噛み締めてぎゅっと瞳を閉じる。
だが、風が変わったー。
バレットの放った高密度の鮫の姿となった
水流の斬撃は海上で吹き荒れた嵐に因って
掻き消される事となる。
其の光景には流石のバレットも其の瞳を
見開いて唖然と固まってしまう。
「デューク。良く持ち堪えてくれた…此処からは俺が引き継ごう…狼狽える事など無いさ」
其の言葉にデュークは目を見開き膝をついて
倒れ込む肩に手を触れて話す銀色の髪の青年
へと視線を向けて祈りは通じたと気付く。
そして銀色の嵐に呑まれた自身の斬撃の消失
にバレットもまた其の男へ向けて振り返る。
「後から出て来て良うもまあ…難儀なやっちゃなあ…ノア・クオンタム…!」
「随分と俺の仲間が世話になった様だな…中将バレット・ワグナー…!」
「黙っとき…此の国家反逆者風情が…」
バレットは七支刀での流水の斬撃をノアに
向けて頭上から振り下ろすと同時に飛ばして
行くがノアは其れを何と素手で横に薙ぎ払う
様に振ると銀色の風に因って斬撃もろとも
掻き消してしまったのだ。
役者が違う。
格が違う。
強者として名高いバレットすらも其れを
感じざるを得ない程ノアのチカラは洗練
された物であると心の底から理解した。
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