RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十篇第二章 反乱と革命のグラツィオーソ

孤独を知るからこそ

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「…負けちゃった…っ…!」



リズにとってはティアの水撃を食らってから
背中の方向へ倒れる時間はとてつもなく緩り
とした時間に感じただろう。

本当はほんの一瞬だった筈なのに。

倒れゆく中で彼女は自身の歩んで来た人生を
振り返るかの様に“家族”の姿を思い浮かべて
居たのだが、其の“家族”は既に此の世からは
旅立ってしまっている。

幼き頃に迎えた母との別れ。

母はリズが七歳の頃に病で他界した。

其処から畳み掛ける様に募集兵士として戦争
へと踏み込んだ父と兄が順番に命を落とす。

段々と心が削られるかの様に擦り減って行く
リズからは笑顔すら無くなって行った。

其れでもリズにはまだ姉という存在が此の世
に生を持って居てくれた事が拠り所となって
いたが、其の姉も戦争の給仕を補う役を全う
する中で戦禍に呑み込まれた。

リズは此の時に孤独を知る。

こうした経緯から運命の出逢いは訪れた。



『貴女…一人ぼっちなの…?』



膝を抱き込み俯いていた少女リズに向け声を
掛けて来たのはアドリーだった。

当時の反乱軍は水面下で形を成したばかりの
組織で在り全国的には無名だった。

とある任務で訪れていたアドリーを含む初期
の反乱軍からの声掛けに当時のリズは怖さで
返答すら出来なかった事を思い出す。

実は此の時、アドリーは直ぐ様、別の任務の
為に此の場を離れなくてはならなかった。

だが、まともに食事が取れずに痩せ細るリズ
の存在はアドリーの頭から離れず組織に直訴
しての残留を懇願しリズに寄り添ったのだ。

此れは当時のアドリーの記憶から起因した事
だった様で幼き頃に孤児村ピースハウス在籍
時に声すら発せない幼少期のノアに寄り添う
エルヴィスの存在を見ていたからだ。

こうして土砂降りだったリズの心の中に降り
続いた大雨は緩やかに青空を取り戻す。

おどおどしながらもアドリーに手を引かれて
反乱軍本隊に合流を果たしたリズを反乱軍の
面々は“家族”と呼んでくれた。

勿論、血は繋がってはいない。

だが、其れは野暮だろう。

リズは孤独を知り家族を失う恐怖を知った
人間で在り新たな家族を失いたくないという
感情の執着はとてつもなく強い。

だからこそ、口を付いて溢れた。



「…アドアド…みんな…死んじゃダメだよっ…リズも…頑張る…か…らっ…」



ティアの背後でリズは気を失った。

ティアは戦いに潜む恐怖で胸を詰まらせ心の
中でリズへの謝罪を浮かべると無言のままで
手持ちの塗り薬を手にリズの応急手当てに
勤しみリズの表情を眺めると更に苦しそうな
表情を浮かべた後で決意を表に出し強く其の
足で大地を掴み、立ち上がった。

まだレアドキルナの戦いは終わらない。

何度、心を痛めれば此の時代から解放される
というのだろうか、ティアはひた走る。

革命軍副長ティアvs反乱軍幹部リズは
ティアの勝利で幕を閉じた。

反乱軍幹部リズ、戦線離脱。


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