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第十一篇第四章 未来へ灯す希望の光
決意の離反
しおりを挟む場面は、また一つ切り替わる。
小さな夜明けの灯火が風に揺られながら強く
次の一歩を踏み出して行こうとしていた頃に
また新たな決意の形が此処に現れる。
其の場とは、中将ヨハネと六撰将ランスとの
激突が終わりを迎えそうな場所だった。
戦いはどの角度から見ようとも中将ヨハネの
優勢は揺るがず六撰将ランスは血を流しつつ
痛みに顔を引き攣らせ片膝を着く。
其れを見下ろしながら冷たい視線を浴びせて
月下の空に舞い上がる中将ヨハネ。
しかし、其のヨハネの視線は今、ランスへと
向いてはおらず其の場に現れた一人の金髪の
男性に向けられていた。
「何をしている?」
其の言葉がヨハネから飛んでも尚、下を向き
言葉を発さない金髪の男は瞳すらも閉じた儘
自身の胸に手を当てていた。
沸き上がる感情を其の手のひらで蓋を閉める
かの様に手のひらに力が込もる。
「答えろ。何をしているのかと聞いているのだ?」
「自分にとっての正義を全うしようとしてるッス…!」
ヨハネの問い掛けに漸く答えた其の金髪の男
は力強い瞳で天を舞うヨハネを見上げる。
「ランスさん…ッスよね。ガスタさんって人から色々と話は聞かせて貰ったッス。此処は俺が食い止めるッスから…どうぞ先へ向かって下さい…!」
背中を向けたまま背後のランスへと言葉を
飛ばした其の男の背中に躍る帝国の文字。
彼が身に纏うは小紫色の帝国軍の羽織であり
ランスは其の言葉を真っ直ぐに受け止める事
は簡単には出来ずにいた。
「お前…自分が何をしとるかわかっとるのかのう?其の行為はまるで…」
「帝国軍、そして政府への反旗を翻す行為という訳だ。サーガ少将……」
ランスの言葉を割ったのはヨハネだった。
そして其のヨハネの視界に映った男こそ少将
の位を持つ帝国軍の男、サーガ。
「良く理解してるッス。でも…やっぱり俺は自分の想う正義に足を向けてる事は出来ないって悟ったンスよ…だから全てを捨ててでも此処へ来た…!」
サーガの瞳に一片の迷いは無し。
そう悟ったヨハネは静かに瞳を閉じると己の
中の感情を数秒で押し殺して行く。
「然すれば其の行為は帝国軍からの離反を意味する。此処で我が厳罰に処してやろう」
「さあ、早く行くッス。ランスさん…アンタ等は此の時代を変える為に集まったンスよね…ならこんなトコで立ち止まってる場合じゃないッスよ!!」
「済まねぇのう…!」
サーガの説得に応じたランスは此の場からの
離脱を図ると背を向けて駆け出して行く。
残されたのは二人の帝国軍の兵士だった。
「ヨハネ中将…邪魔はしないで下さいッス。彼等は此の先…此のプレジアを大きく変える存在になるッス。俺は其の未来の方が民が平和を手にしやすくなると思った…だから此処へ来たンスよ!!」
サーガの叫びが月下に舞うヨハネに向かって
力強く声となって飛ばされるのだった。
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