515 / 954
第十二篇第一章 退路無き救出作戦
見透かされた覚悟
しおりを挟む「へっ…スゲェな。閃光のギフトってヤツはよ…おし、ならレザノフさんとザックさんはそのまま外でロード達の援護を頼むぜ…!」
座り込みながらほんの少しの笑みを浮かべて
話したエルヴィスにザックが口を開く。
「許容しかねます…エルヴィス」
「何だと…?どういう了見だよ、ザックさんよ…!」
エルヴィスの視線がザックへと突き刺さって
其の場に静寂の時間が訪れた。
するとザックが溜息混じりに続ける。
「君は私達を作戦に組み込むと言いましたね」
「ああ…言ったぜ?だからこうして…」
「私達を退路に最も近く配置して置けば…最悪の事態となった場合に逃げ出し易くなると考えたんでしょう…?」
ザックの言葉にエルヴィスが返答に詰まる。
「アドリーを助け出したい…救いたいと考えているのは私も同じ…君達と共に私は監獄内へと向かいますからね…!」
「ザックさん…」
ザックの見せた笑みにエルヴィスの表情にも
変化が見られて行った。
固く研ぎ澄まされていたエルヴィスの表情の
ほんの少しの緩み、感極まったかの様な顔を
見て周りの声が飛び交う。
「私も外が片付きましたら中へと向かいますよ。エルヴィス殿」
「俺もだ…!」
「はわわわわっ…こ、こわいけど私もですっ!」
「……お前等…!」
ロード達の言葉にエルヴィスは少し額に手を
当てながら俯いた後で顔を上げた。
其の表情にはエルヴィスらしい強気な笑みが
戻って来ていたのだった。
「……おし。なら一蓮托生だ…アドリーの為に悪いがみんな…気張ってくれ…!」
エルヴィスの号令に鬨の声が上がる。
「あ、アドリーは仲間だもんっ!」
「アドアドの為なら…リズはなんだって頑張れるよっ!」
「小娘への借りが笑えるほど溜まってんかんなあ…うしっ!一つ返しに行くチャンスだな…ツイてるぜッ!!」
反乱軍とロード達の士気が上がる。
だが、其れでも成功確率はほぼゼロに近い。
此れが現実であり全員が其の事は承知の上だ
と言われればそうなのだろうが士気を下げる
様な発言は誰一人しなかった。
ネガティブさを持つヒューズでさえ、毒舌と
言われるリズでさえだ。
アドリーの存在の大きさが窺える中、政府に
追われる身となったロードもバルモアという
隣国の王族であるシェリーも其のシェリーを
危険な場所へは送る事の出来ない立場を持つ
レザノフもロードを託されたザックでさえ。
此の危険水域へ飛び込む事の恐怖を打ち払う
かの様に其の言葉を発する事は無い。
そして、此の緊急的な共同戦線を敷く彼等は
エルヴィスを先頭に落人群を後にする。
眼前に聳える大監獄プリズングァザを見据え
其の覚悟を胸に作戦決行の瞬間を待った。
大監獄プリズングァザに集った政府の戦力達
は此の状況を見据えてのモノだ。
ロード、エルヴィス達を手ぐすねを引いて
彼等は待っているのだろう。
60
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる